ニューロフォリア !!!TRICK or ATACK!!!
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!!!TRICK or ATACK!!!

ハロウィンちょいエロ達淳小説。

ハッピーハロウィンです!
!!!TRICK or ATACK!!!

「なんだ、手紙だ」

 切手無し、押印なし。差出人は黒須淳。
 中身は地図と、ハロウィンパーティーの案内だった。
 日付は明日、10月31日

『コスプレしてないと、参加はできません!』

「コ、コスプレねぇ?」

 パ、パーティーとかいっちゃって、本当は俺と二人っきりでコスプレして楽しもうという魂胆に違いない。きっとそうだ。エロエロな魔女っこ淳がベッドの上ではちみつでとろとろになりながら、トリックオアトリート?なんて聞いて来るんだ。だから俺は狼に変身してそんないたずらな魔女っこ淳をペロリとたいらげるんだ。
 アホなエロ妄想をして一人でたたみの上を転がりまわる。

「よし、わかったぞ淳。はりきって狼男のコスプレしてやろうじゃないの」

 衣装なんて着なくても、俺の心はすでに野獣だがな!

 地図を見てみると、知らない場所にマークしてあった。多分ここら辺は住宅街で、ラブホテルなんてなかったはずだ。地図をよーくよく見てみれば、知ってる場所のような気もするのだが、記憶がおぼろげで思い出せない。

 とりあえずまずは衣装を調達せねば。この場所にいつもの制服のまんま行ったら、淳の機嫌を損ねてしまうだろうから。俺はワクワク気分でバイクのキーを指でふりまわし、ジョークグッズで有名な店に向かうために玄関を出た。

   ☆

 目的地に着き、フルフェイスを脱ぐ。メットに押し付けられていたもこもこの耳をピンと立たせ、口にはマズルのマスクをつける、ライダーグローブをメットに詰めて、手にはプラスチックのつめのついたファー製グローブをまとう。脱げば変わらぬと思って服はいつもの赤のジャケットにお揃いのズボン。針金の入ったピンと立つもこもこしっぽだって忘れない。靴だってファーと爪をつけてカンペキなる狼男だ。ふっふっふ。これで淳は「達哉っなんてワイルドなんだ!カッコイイっ抱いて!」とトリックオアトリートの言葉を告げる前に魔女衣装を脱いで、自らトリートを選択してしまうという寸法だ。
「ふっはっはっはっは!バッドエンドに染めてやるぜっ!!」
「おおっ狼男発見!アチョー!」
 両腕を開いて悪役笑いをしている俺のわき腹を、突然のとび蹴りが襲う。
「ぬおおっ何をするかっ!」
 電柱にぶつかる寸でのところでアポロを召還し、体を支えさせる。服についた足跡をパンパン掃って突然襲い掛かった曲者と対峙する。目の前でピョンピョン飛び跳ねるのは真っ白な肌の……かわいらしいキョンシーだった。
「あははっやりすぎちゃった?情人、だいじょうぶだった?」
「だっだいじょうぶじゃない!突然襲ってくるヤツがいるかよ……」
 向こうからは棺おけを背負ったノッポのミイラ男に連れられて、魔女のコスプレをした舞耶姉がやってくる。
「もー、ほんと舞耶姉にはかなわないぜー……場所がわかりにくいから一緒にいってっていうから待ち合わせしたのに、勝手にフラフラ歩いて迷子になってるんだもんなー」
「だって子ども達がわー魔女さんだー!魔法をかけてーっていうからついつい……」
 真っ黒のマントの下には黒のボディコン、押さえきれぬ巨乳がぽいんぽいんと飛び跳ねている。ロングスカートにはスリットが入っていて、歩くたびに健康的な美脚がのぞく。
「ホアチョッ」
「っで!!」
 俺の脳天にリサキョンシーのチョップがヒットした。
「いってーなーリサっこらっ!」
「やー!狼男に食べられるー!!」
「だーれが腐ったキョンシーの肉なんか食うかっ!ガオオオオ!」
 俺らがぐるぐる追いかけっこしているうちに、栄吉ミイラと舞耶魔女が到着する。
 リサキョンシーを羽交い絞めにしてガオーとかやっているうちに舞耶魔女がキョロキョロと辺りを見回して、うーんと考え事をする。
「ねぇ、みんなも淳クンから招待状もらってここにきたんだよね?」
「ん、そうだけど……」
 答えながら暴れ疲れて大人しくなったリサキョンシーを解放し、ジャケットの内ポケットから手紙を取り出す。二人っきりのどっきりハロウィンナイト☆かと思いきや、待ち合わせ場所に来てみればそろいもそろったるいつもの面々。
「……で、ここって……」
 舞耶姉さんの指差した場所は、地図にマークしてあった建物。なんだけれど……そこは異様な雰囲気を放つ大きな洋風のお屋敷だった。場所は住宅街。少しずつ開発も進み、真新しい家々も立つ、お金持ちの人たちが住むような区画だ。なのに、ここだけ異様に古ぼけていて、少し……懐かしい気がして……。
「お化け屋敷よね?」
 舞耶魔女があごに手を当てて、言う。
「あー、聞いたことあるねぇ。屋敷はボロボロだってのに、花壇の花だけはいつまでも枯れないっていう……」
 栄吉ミイラは包帯まみれの手を額にあて、遠くを見るように目を細める。
「んで、誰もいないはずの窓から、歩く人影が見えるっていう……」
「て、典型的なお化け屋敷だな」
 鉄の門も、土地を囲む古風な鉄柵も、黒いペンキは新しく塗りなおされているらしく、錆びている様子はない。誰も住んでいない……というのはウソなんじゃないだろうか。俺がインターフォンを押そうとすると、リサが手を止める。
「や、やだ!情人!い、い、いま人影が通ったよ!!ランプ持って、すぅ~って!!」
「バーカ。この屋敷しっかり手入れされてんだろ……建物が古いだけで、人住んでるみたいだし、花壇の花が元気だって時点で気づけっつーの」
 リサの止める手も気にせずにインターフォンを押した。

 リンゴーン……リンゴーン……リンゴーン……

「うっ……」
 思ったより物々しいチャイムの音に一歩退く。俺の背中をぎゅっと握っていたリサの手がこわばる。
「しらねーぞタッちゃん。呪われっちまうぞー!」
 栄吉が腕を組んでヘラヘラと笑う。本気でお化け屋敷だなんだと信じてるのは、どうやらリサだけのようだ。
「リサ、だいじょうぶよ、きっとその人影、淳くんだから」
「あ、あー……う、うん。そうよね!淳が私たち招待したんだもんね!」
 リサが落ち着いたころ、インターフォンから声が聞こえた。
『ようこそっ!のろいのやかたへ!』
 突然甲高くってかわいらしい子どものような声が響き渡った。
「……はぁ?」
 てっきり淳が応えてくれるのかと思ったら、まったく思いもしなかった相手から返事があって思わずびっくりする。
『ち、ちがうだろマヌケ!すごんで言わなきゃだめだっていわれたろ!!』
 子どもたちがマイクの前で騒いでいる。謎の反応に呆れていると、ふっと子どもたちの声が止み、コフゥ…コフゥ……と謎の息遣いが聞こえてきた。
『ようこそ呪われし館へ……当館の主に招かれしお客人がた……どうぞ奥へと……』
 今度聞こえてきたその声は、低く、禍々しく、地響きのようだった。
「なんだこの茶番は……」
 俺が文句を言おうとしたとき、突然鉄の扉が、きしんだ音を立ててゆっくりと開いていく。ヒュゥウウと風が吹きすさび、背筋がゾクっと震えた。アポロが唸る。
「……悪魔がいるな」
 俺が言うと、皆がコクリと頷いた。もしかすると淳は、ハロウィンパーティーの準備をしている間に悪魔達に囚われてしまったのかもしれない。
 ……なんてシリアスな雰囲気を出してみたけど、俺はひそかに目の端に捉えていた。小さな体でいっしょうけんめい門を開いて疲れ果てたピクシーたちを。

 綺麗に整えられた庭を通り過ぎ、玄関へとやってくる。年季の入ったオーク材の重厚な扉、メッキのはがれた鉄製のドアノブをひねろうとするが、ビクともしない。俺がンーンー唸りながらがんばっていると、栄吉がハンっと笑いながら俺のそばに寄ってくる。
「フンっこういうときこそSTR型の真価が発揮されるんだねぇ」
「わるぅございましたね!STR低くて!」
しかし、栄吉も普段真っ白な顔を赤くしながらフンフン回そうとしても、ドアノブは回る様子がない。
「へーん!情人をバカにしたわりに結局自分もできないんじゃないの!」
「なぁにをぉ!?」
 ミイラとキョンシーがケンカをはじめる。
「ねぇ、ノックしてみようよ?」
舞耶魔女の言うとおり、鉄の輪のノッカーをコンコンと鳴らしてみる。
『おお、これは失礼いたしました……どうぞお客様……』
 例の地鳴りのような声が聞こえたあと、カチリと小さく音がする。鍵を開けてくれたのだろう。ドアノブをひねると、簡単に開く。ふぅっとため息をついて館の中をのぞこうとすると……ボトリと何かが落ちた。
「ッギャアアアアアアアアアアア!」
 それを見てまず悲鳴を上げたのは栄吉、そして栄吉に抱きつきながらリサがわんわん泣き出した。何だ?と思って床を見てみると、そこに落ちていたのは、引きちぎられた人間の……しかもしわも深く筋っぽい老人の手首だった。その切断面は生々しく……赤黒く……
「コレ、ゴム製」
 持ち上げてポンポンと放り上げながら二人の前で老人の手首をもてあそぶ。
「……へ?」
「パーティーグッズ!」
 なんかおかしいおかしいと思ったら、これはきっと淳のお遊びなのだ。真っ暗な館の中から、子どもたちのクスクス笑う声がする。
「ハロウィンパーティーはじまってるってよ」
 俺がフンっと鼻を鳴らしながら言うと、抱き合った栄吉とリサがうんうんと頷いた。
「イヤー!私お化け屋敷にがてー!!」
「さんざん悪魔を素手で殴り飛ばしてきたおまえがいうな……」
 リサキョンシーのチャイナ服の襟をぐいっとつかんで中へと入っていく。その後ろを栄吉ミイラと舞耶魔女がついてくる。中に入った瞬間……

ギィイイ……バタン……

 入り口の扉が重々しい音を立てて閉まった。
「ふふふっ!これ……どーぞ……」
 ろうそくをもった子どもの手だけが闇にぽっかりと浮かぶ。俺がそれを受け取ると、子どもはトテトテと駆けて行った。
「お客さま、本日は当館にお越しいただき、ありがとうございます。ディナーができあがるまで、ほんの少しこの館を探検してお楽しみくださいませ……」
「淳はどこにいる?」
 俺はろうそくを振って、あたりを照らしながら声のする先を照らす。
「主でございますか。まだお休みなさっております。ぜひともお客様の手で起こしてさしあげてください……」
「ふーん。そっか……えらくこったテーマパークだな。なぁ!えいき……」
 後ろを振り返ると、そこには誰もいなかった。

 誰もいない館を歩く。いや、誰かはいるのだ。何かの気配があたりを行き来しては俺をのぞいてくすくす笑う。たまに足を引っ掛けられてはころびそうになる。
「……なんか、予想以上にめんどくさいことになってんな……」
 本当なら俺と淳は二人きりでハロウィンナイト☆を楽しむ予定だったのだが、淳の凝り性がそうはさせてはくれないみたいで……
 闇の廊下の向こうから、カタカタカタ……と木の床を小刻みに叩きながらやってくる何かがやってきた。ろうそくを目の前に差出し、奥を照らそうとする。ちらちらと揺れる明かりの中やってきた小さな来訪者は、五本の指を器用に動かして歩く、ちぎられた手首だった。
「……どっかで見たようなのが来たぞ?」
 俺のつま先に当ると、コテンと転んで指を猛烈な早さでワシャワシャワシャっと大げさに暴れだした。持ち上げてみると、どうやらネジ巻き式のおもちゃらしい。手首についたリボンを解くと、なにやら文章が書いてあった。
「こどもべやにて おまちしています じゅん」
 全部ひらがなで、子どもの書いた稚拙な字でそう書いてあった。
「ヒント、これだけ?」
 そう言うと、闇に潜む子どもたちがくすくす笑い出す。
「んー。子ども部屋、ね?」
 暗くてよくわからないけれど、この館はやはり自分が知っている場所のような気がする。自然と廊下を真っ直ぐ歩き、ドアを無視して自然に歩いてこれたのもきっと、そのなんらかの記憶に導かれてのことだろう。ろうそくが少しずつ短くなってきているのを見て、まずいなと思った。きっと予備は用意されていないだろう。きっとこのろうそくは、子ども部屋へとたどり着くまでしかもたないに違いない。
 なんてぼぉっと考えていると、ぬるりと俺の首筋を誰かがなめた。
「ギャアアアアアア!わ、わ、わかったよ!歩くよ歩く!!」
 確かこの辺に二階へ渡る階段があるはずなのだ。そう思いながら壁伝いに歩いていると、木の柵へと感触が変わる。これだこれだ。なんとなく懐かしく思いながら、指を木の柵にはじかせながら歩いていく。そう、小さいころもこうやって、歩いてた。もっと低い位置からだけど。柵が途切れたのを確認し、ろうそくの明かりを階段の上へと掲げる。
 黒のスラックス、革靴を履いた男の足が見えた。男は慌てたように二階へと駆け上る。直感的に淳だと思い、急いで駆け上ろうとすると、後ろからジャケットを掴まれる。無数の子どもの手が俺のジャケットを掴み、掴もうとして空を切っていた。
「ちっくしょう!ふざけすぎだぞ!」
 さすがに不気味になってきて、アポロを呼び出そうとしたが……反応が無かった。
「なんだよ、くそぉ!」
 小さな子どもの手を振り払い、勢いよく階段を駆け上る。右に曲がって突き当たり、そこが子ども部屋のはずだ。廊下の行き止まりには窓があって、煌々と照らす月の明かりが廊下にすぅっと伸びている。ろうそくを置いてジャケットを羽織りなおし、マズルのマスクをのけて、ふぅっとため息をつく。さて、子ども部屋へと向かおうと思っていた矢先……
 ガタンっと勢いよく扉が開き、俺の進路をふさぐ、飛びのくと、部屋の向こうからめちゃくちゃに枕、布団がとんできて、次から次にランプやら本やら香水の瓶やらがしっちゃかめっちゃかに飛び出しては俺を狙ってきた。
「俺の脚なめんなって!」
 なんとかかんとか潜り抜け、部屋をのぞくと最後の一個!というようにいくつもの枝にわかれた小さな植物が顔にぶち当たる。
「にゃおん……」
 小さく猫の声が聞こえ、暗闇の中に大きく光る二つの瞳が浮かぶ。からかわれている気がして、ムっとしながら俺が部屋に入ろうとすると、くるりと回転し、闇に溶け込んで巨大な猫は消えていった。
「ヤドリギの花言葉……私にキスして……」
 子どもが耳元でささやいた。立ち上がるが、もうすでに子どもはいない……。もうすっかりチビになってしまったろうそくを見てつぶやく。
「……遊びすぎだぞ淳、会ったらたっぷりおしおきしてやる」
 キィっと奥の部屋の扉が小さく開き、暖かな橙色の光が漏れた。むこうから、くすくすっと……淳の笑い声が聞こえた。いてもたってもいられなくて、駆け出していく。途中で誰かに足を引っ掛けられ、見事にズベっと転んでしまう。小さなろうそくをつけた燭台はくるくると周り、ちびたろうそくはその弱々しい炎を消した。
「ってーな。おまえらも誰か知らないけど、覚えとけよクソー……」
 くしゃくしゃに縮んだマズルをなでさすり、打った鼻の痛みに耐える。

 ランプの明かりに照らされた子ども部屋。小さな部屋を占有するのは、真ん中に置かれた大きな棺。そのまわりには小さなピクシーや、まるっとしたかわいらしいゴースト、くぼんだ目をして小さな手足を動かして何かを説明しているポルターガイストがいた。
 その棺の中で、くすくす笑っているのは……
「こぉら淳。痛かったぞ……最後の最後ですっころばせやがって……!」
 悪魔たちの間に俺が割って入ると棺の中にいた淳はもうすでに目を閉じていた。吸血鬼のつもりだろうか、真っ黒なマントにフリルの白のブラウス。黒のスラックスに革靴……やはりあの時階段で見たのは淳の脚だったのだ。でもまだほっぺたのところがぴくぴく引きつっている。よっぽど楽しいおしゃべりをしていたんだろうな。内容も大体想像できる。俺や皆をからかって遊んでいた内容だろう。
 ……頬に手を触れてゾクっとした。体が異常に冷えているのだ。淳は低血圧みたいだし、病がちだし、元から色の白い方だけど肌に青みまでかかっている。ゾッとしてそっと首の脈に触れようとしたとき……ガバっと抱きしめられる。
「うっ……こらっ……いたっ……!!」
 俺の体を強く抱きしめた淳が首筋に鋭い牙を突き立てた。
「イテテテっほ、ほ、本気で噛むなっ!ノリノリにもほどがあるだろうが……!!」
 ドンっと体を突き放すと、棺桶に敷き詰められたベルベット地のクッションの上に淳の体が軽くバウンドする。口の端から血をしたたらせて、フリルの付いた真っ白な袖で口の端をぬぐう。その淳の目は……血のように真っ赤だった。
「う、う、うわぁあああああっ!」
 俺は悲鳴を上げて後ずさりする。

 淳がとびかかってきた。淳は悪魔たちに何かされて、本当に吸血鬼にでもなってしまったのだろうか?……んーなわけはない。すぐに冷静な気持になる。

 現にとびかかる淳はうれしそうに笑ってる。淳が俺の体を床に押し倒し、そっと口づけてきた。
「トリック・オア・トリート!」
 淳は俺を押し倒したままきゃっきゃと笑う。周囲にお子ちゃま悪魔たちが集まって、頬を染めて俺たちを見ている。
「なっ!バカ!オールトリックだろうがよ!!ってかおまえらは見るんじゃない。コラ!」
 俺が腕を一振りすると、悪魔たちがきゃーきゃー散っていく。レベルが違いすぎるので気にするほどではないのだが……。コンタクトでもないのそんなにじっくりと……みられるのは嫌すぎる。というかなんでこんな低レベルの悪魔たちばかり……
「ちがうよ、ちゃぁーんとみんなを歓待したじゃない。こんなにたくさん準備してさ!十分なほどトリートだと思うけど?ね!みんな!」
 淳がうれしそうに言うと、子ども悪魔たちは声を揃えて言う。
「うん!トリートだよ!」
 トリート!トリート!くすくすっ……
 子ども悪魔たちのザワザワの中、そっと淳に耳打ちをする。
「で、こいつらはなんなんだ?」
「……ちょっとわけありの子たちなんだよ……でも、僕の事慕ってくれてるから、危ない子たちじゃないよ?」
 目を動かして面々を見る。
「淳、サマナーの才能あるんじゃね?」
「んー……そっかな?」
 淳が少しずつ俺の体に覆いかぶさり、色っぽい空気に変わっていくと、子どもたちがキャワキャワ騒ぎ出す。
「どうしたのかな?どうしたのかな?お兄ちゃんたちどうしたのかな?顔が真っ赤だよ?くすくすくすっ……」
「……おい、こいつらどっかに行かしてからにしようぜ……」
「ねぇ、僕たちこれから大事なお話があるんだ……その……だめかな?先に下の食堂でほかのお友達とパーティーしてきてよ」
 子どもたちは集まってごしょごしょ相談を始める。淳の目が少し座っている。手にはどこから取り出したのだろうか……美しい……花が……。
「ねーえ!おいしいパンプキンパイ、なくなっちゃうよ?」
 淳が少しむきになって言うと子どもたちは動きを止めて、少し考えた後でキャーっと騒いで壁の向こうに消えていったり、床にそのまま溶け込んでいった。
「いそいで食べなきゃっ!おいしいパンプキンパイっ!キャー!」
 部屋に誰もいなくなったことを確認すると、手に持った花をそっと俺の髪に挿す。
「ねっ達哉。あそぼ?」
 俺のマズルマスクをはずして、そっと唇に指がおかれ、すぅっとなぞられる。淳の伏せられた瞳、長いまつ毛に見え隠れする赤にゾクっと震えた。
「……さんざん人で遊んだくせによ……まだ遊ぶのか?俺で……」
「ね、これが本番でしょ?狼さん……」
 淳が口の中から、ちゅぽっと偽の牙を取り出す。先端に赤いものがついているのは俺の血か。床におこうとするその手を止めて、淳の手に握られた牙に口づける。
「悪趣味……」
「どっちが……」
 スラックスを膝までずらし、良く見えるように足を持ち上げて挑発してくる。真っ白な太ももにてをやり、なでると淳が甘い声を上げる。外側から足の下に手をやり、そっとズボンのファスナーを開ける。淳がぺろりと唇を舐めながらちゅくちゅくとまだ半勃ち状態の俺のものをしごいてくれた。
「……んにしても……な、なんで吸血鬼……なんだよ……魔女とかじゃ……ないのかよ……」
 俺は手をふとももから内側にてを滑らせて、しっとり湿り気を帯びたうちももを撫で、動くたびに震える淳のものをしごく。伏し目がちに俺を見る潤んだ赤い瞳。
「おんなじパターンばっかりやってどうするの……?それに舞耶姉さんが教えてくれたんだよ……今年は魔女するって……」
 スラックスの黒からのぞく白い肌に夢中になる。フリルのシャツを下から順番にボタンをはずし、ちらっと乳首をのぞかせる。
「ああぁも、もう押し倒していいですか淳さん……」
「女装じゃないと嫌だーって顔してたの……誰でしょう」
「ごめんなさいごめんなさい……わがまま言わないですから……挿れさせてください……」
 お尻でじらすように扱かれて、もう我慢の限界だった。手についた我慢汁をちゅっと舐めとると、淳は脚を上げる。ぐっと体重が俺のものの上に乗って痛みと快楽がやってくる。
「あぁあ……淳……なにするっ……」
 俺の目の前で上げられた脚、するするとスラックスが脱がれていくとふくらはぎ辺りに黒い革製のベルトが止まっていて、そこからT字型にのびた小さなベルトがソックスを引き上げていた。小さなガーターベルト、といった感じだろうか……。
「な、な、なにこれ……このフェチっぽいのなんですか……」
 淳はその細い指をそっと這わせ、俺のものを押しつぶす尻の間、ものほしげにひくんと震える穴にそっと指を入れる。細い脚が震える、ぷっくりとした白いふくらはぎ、ソックスを履いたつま先がピンっと伸びて俺の狼耳をつつく。
「んっ……紳士の装備、ソックスガーター……だから……別にいやらしいことないんだからね?……あっ……ど、どうせ男の姿の僕なんて……魅力……ないっ……」
 下腹部にとろりと淳の流した蜜がしたたり落ちる頃、ぷつんと俺の理性が途切れる。
「もっもう……ガマンならねぇ!」
 淳のふくらはぎから太ももへと撫で上げ、ぐっと押し倒す。
「わ、わぁっ……」
 棺桶の中に押し倒され、淳が悲鳴を上げる。淳に押しつぶされた俺のものが解放されてビンっと伸びあがる。腰全体を持ち上げるようにして突き入れる。
「んっ……」
 重力で下がったフリルのシャツの下から乳首がちらちらと現れ、揺れるたびに滴り落ちる淳の精液で汚されていく。
「ずっ……ずいぶん……ワイルドだね……狼……さんっ……」
 脚を持ち上げ、ソックスに口づける。まだ新しい革のベルトのにおいがした。
「だ、誰が……狼に変えたと……思ってるぅっ……!」
「もっと……もっと突いて……っおおっかみ……さんっ……!!」
「あぁあっ……淳の中……へへっ……んぁっ……」
 ぐちゅぐちゅとまとわりつき、搾り取ろうとする淳の中。体がこれ以上動かないようにと棺桶の縁をもって抵抗する淳。涙目をうっすらと開けて口を開いて喘ぐさまをみながら、ぐっと最後まで突き入れ、注ぎ込む。
「っぐ……っ……はぁ……はぁ……」
「あっ……達哉のぉっ……奥へ……はいって……あぁあっ……」
 淳のものからも勢いよく精液がとびだし、胸のフリルに、その夜の闇くらい真っ黒な前前髪に飛び、染み込んだ。

 俺の前の前にはペタンと座り込んだかわいらしい吸血鬼。黒いマントを身に着けて不機嫌そうに前髪にかかった精液をぬぐったり、フリルを真っ白なハンカチで拭いている。お姉さん座りをした足の間にちらちら除くのはしぼんだ淳のもの。ソックスガーターなるものに支えられたひし形模様の靴下。
 芸術品を見るようにそんな淳の様子を眺めていた。
「もう、そんなじろじろ見ないでよ……」
 俺の視線に気づいて淳は恥ずかしそうに下半身をマントで隠す。
「いいぜ、かわいいぜ……淳……」
 そんなことをやっていると、慌てたポルターガイストが手足をジタバタさせながら空中を泳いでやって来る。
「淳!たったいへんだよー、みんな寝ちゃった!起きなくなっちゃったぁ!」
「は、はぁ?」
「ま、まさか!!」
 淳が慌てて立ち上がって下にかけていく。
「ま、待て待て淳!ズボンはこうな!?」
 俺は慌てて下着とスラックスを持って淳を追いかけた。

 長いテーブルの上、真っ白なテーブルクロスはどろどろに汚れていた。パンプキンパイの明るいオレンジ、色とりどりのジュースのシミ。テーブルの上でワイングラスを持ったまま寝てる舞耶魔女や、椅子から滑り落ちながら奇妙な体制で寝ている栄吉ミイラ、ゴーストをまくらにして寝ているリサキョンシーがいた。あちこちには真っ赤になって眠る子ども悪魔たちがゴロゴロ転がっていた。
「……だ、誰が飲み物担当だっけ!?」
 ちゃんとスラックスを履いた淳が怒って叫ぶ。
「ヒ、ヒーホー……ボ、ボ、ボクだホー?」
 でも、ぶるぶる震えながら手を上げて出てきたジャックフロストを見ると、淳はふぅっと溜め息をついた。まぁあんなにかわいい悪魔が申し訳なさそうに出てきたらちょっとためらうよな。
「もう……あれだけアルコール表示には注意してねって言ったのに……」
「ももとかぶどうとか……おいしそうなの買ってきたホ……本当はちゃんとアルコール表記見たホ……」
「じゃ、じゃあどうしてお酒なんて買ってきたの?」
 きっと栄吉もリサも酔っ払った舞耶姉にたっぷり飲まされてしまったのだろう。ゆきのさんから舞耶姉は少し酒癖が悪いときいてはいたが……。
「だ、だってホー?ちょっとくらいイタズラしてもいいかなって思ったんだホー?ジュースだと思って飲んだのがお酒でーお酒だと思って飲んだのがジュースだったら面白いホ?」
 転がっている缶を見ると、なるほど、アルコール表記が塗りつぶされたり削られたりしていた。この子どもたちの用意周到ないたずらだったらしい。淳はうーんと唸りながらジャックフロストを抱きかかえる。
「だめだよ、ほら、皆このままじゃ風邪ひいちゃうじゃない?これはよくないイタズラだったよ?」
 ジャックフロストの鼻のあるだろう位置をツンっとつつく。
「でも、淳もイタズラしてきたホ?そこの狼さんがうおんうおん言ってたの聞こえてたホ?」
 みるみる淳の顔が真っ赤になり、ぶるぶる震えだす。
「そ、そ、それはだな。遠吠えだ」
 淳が怒りださないようにフォローを入れる。このジャックフロスト、相当怖いもの知らずのようだ。
「ふんふん、遠吠えホー?淳もだから遠吠えに応えてたホ?」
「そうだよ!そう!遠吠え!遠吠えなんだよ?」
 淳が無理に笑顔をつくって言う。
「でも、でも、淳、吸血鬼は遠吠えしないホ?」
「吸血鬼だってほら、け、獣に変身したりするじゃない?」
「ホホホー!なるホーだホー!!吸血鬼も狼になるやついるホ!」
 俺は、将来小学校教師を目指す淳の子どもの疑問をさらりと流し、話題を反らしていくテクニックに感嘆しながら子ども悪魔を拾って一か所にかためる。
 本当に熟睡していた。
「なぁ、淳。布団、淳のパパとママの部屋から持ってきて良いよな?」
 いつの間にか、ジャックフロストも淳の腕の中で眠っていた。多分、あの子もお酒を飲んでしまったのだろう。自分のいたずらに自分でひっかかるなんて、まだまだお子さまだ。
「……き、気づいてた……?ここ、昔の僕の家だって……」
「来たばっかりの頃は忘れてたけどな……」
 ジャックフロストをぎゅっと抱きしめながら淳はうれしそうにほほえむ。

 みんなを寝かした後、二人でぐちゃぐちゃのテーブルに椅子を寄せて二人で座る。ちゃんとアルコール分を確認できるジュースを手元において、ぐぅぐぅ眠る皆を見ながら二人でパンプキンパイを食べた。
「一度ね、僕のおうちに友達を呼んでパーティーってしてみたくって……」
「……そか……」
 ようやくいろんな意味で一段落ついて、二人でお茶をはじめたのだ。
「この家、庭までは入れたんだけど、中に入ろうとすると昔の事、いろいろ思い出しちゃってね……なんだか怖くてなかなか入れなかったんだけど……勇気を出して中に入ってみたんだ……」
 くっとジュースを飲む。
「そしたらね、この子たちがもうすでに住んでてさ……なんだか、小っちゃい子ばっかりで……かわいそうだろう?追い出すわけにもいかなくて……」
 くぅくぅと寝息を立てる子どもの悪魔たちを見てため息をつく。
「なんか孤児院みたいになってんだな……」
「うん……みんな気弱な子ばかりだよ。怖くて逃げ回ってたら、誰もいない家を見つけて住むようになったんだって。なんだか昔の僕たちみたいだよね……」
 コンプレックスを抱えて仮面かぶって遊んでた……俺たち仮面党。でもまぁ、こいつらは悪魔だし、あんだけ積極的に俺達にいたずらを仕掛けられていたところを見ると、悪魔基準での気弱なんだろうと思う。
「そうか、だから皆で遊びたいなと思って腕を振るっちゃったわけだ」
「そうそう!あんまり楽しかったから、達哉たちをびっくりさせて遊ぼうよって……」
「オイこら、淳の提案かそれ!わかってても結構ブキミだったぞ!お化け屋敷ごっこ!」
 調子に乗って笑う淳のおでこにデコピンを食らわせる。
「った!」
「まぁ、最初っから全部トリックだと思ってたけどな……」
「僕たちからしてみれば最高のトリートのつもりだったけどね?」
 淳がうれしそうに笑う。しばらく笑いながら体を揺らしていたが、ちょっとずつテーブルの方に体が倒れていく。
「……んっ……」
 そしてトロンっとした表情に変わる。もしやと思ってジュースの缶を見ると……削った上に上手に字をまねてノンアルコールと書いてあるのが見えた……。
「やるな……あのジャックフロスト……」
 シャツが汚れたら悲しむだろうと淳の体を抱き寄せる。淳はうとうとして……そのまま……眠ってしまう。
「……なんだよ。やっぱり最初っから最後までトリックじゃないか」
 パンプキンパイを平らげる。淳が寝冷えしたりしないように……しっかりマントに包んで抱きしめる。

――まぁ、俺にとっては淳と一緒に居られれば、どっちだってかまいやしないのだが。


 悪魔とおくる、ハロウィンパーティー。
 しっちゃかめっちゃかな幕は下りる。

E N D 

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大幸妄太郎

Author:大幸妄太郎
ペル2(達淳)・ドリフターズ(とよいち)に
メロメロ多幸症の妄太郎です。女装・SMが好き。
ハッピーエンド主義者。
サークル名:ニューロフォリア
通販ページ:http://www.chalema.com/book/newrophoria/
メール:mohtaro_2ew6phoria★hotmail.co.jp
(★を@にかえてください!)

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