ニューロフォリア かっこいい達哉はここにはいません。(達淳掌編)
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かっこいい達哉はここにはいません。(達淳掌編)

初心に戻って達淳掌編。
少女漫画かってツッコミを受けた内容とほぼ同じです。
オチを知ってても笑ってもらえたら、やったね妄太郎ちゃん!!です。
達哉はポケットに入れた手を外に出した。

「む、無理だ。今の俺には……できない……」

小さくつぶやきながら首を横に振った。
今さらカリスマだのなんだのに執着しているわけじゃない。
高らかに叫んだってかまいやしない。
だけど、それをできずにいるのは……

己の中の恐怖との戦いだった。

猛牛少女の動向が気になって仕方がない。
最大の告白であった「淳しか見えない」は
何故かギャグだという方向に理解され、スルーされてしまった。
告白された当の本人でさえ、何事も無かったかのように
次の日、笑顔で達哉を迎え入れた。
ステータス表示が変わっても、気持ちはなかなか切り替わらないもの。
それを現すのが、きっとあの「恋人」の後ろにつく「!?」なのだろう。

今日こそ「!?」を取り払う。取り払うんだ!!

しかし、達哉には今一歩勇気が足りなかった。
己の中の疑いの心が邪魔をしているのだろう。
もしも淳が達哉が思っているほど「恋人!?」関係を喜んでいなかったとしたら?

一人目を閉じ、額にしわを寄せて歯を食いしばり、悶々としていると
目の前に天使がやってきた。

「……達哉?」

目を閉じていてもわかる。胸ポケットに差した花のやわらかな香り、
何度も交渉で近づいてわかるその身長差から伝わるぬくもり。
息遣い。
でも、その淳も本当はこんなに親友という壁を
必死でぶちやぶろうとする達哉をうっとうしく思っているのかもしれない。

「悩み事、あるのかな……」

淳の思わぬ優しさにそっと目を開く。
あまり日の差さぬダンジョンにいてなお光り輝くような白い肌
カラスの濡れ羽色の髪、その漆黒の瞳は鏡のように達哉を映し出す。
淳のあまりの美しさに今にも目がつぶれそうになりながら達哉は言う。

「お、俺……変……だよな……」

伏せ目がちな表情、赤らんだほほ。
ものすごく真剣な表情でうったえられた淳は目をそらす。

「すごく大事な悩み事があるんだね……」

そして、はずかしそうに笑う。
達哉の真剣な気持ちは知っていたが、やはり男同士だし、
十年前に一ヶ月いっしょにいたとはいえ、
再会してからそれほど日も経っていないのだった。
でも、達哉はリーダーとして一人率先して戦う身。
淳もそのつらさを知っていたから、少しでいい、
親友として役に立てたらとつねづね思っていた。

「僕なんかじゃ達哉の悩み、解決できないかもしれないけど」
「解決できるさ!!おまえじゃなきゃ解決できないんだよ!!」

思わず淳の肩を掴んでしまった。
急速に縮んだ二人の距離に、だんだんとほほが熱くなって行く。

「いや、すまん……俺、淳との関係、みんなに認めて欲しくて
 必死すぎたんだ……淳が俺のこと、認めてくれてるかもわからないのに……」

それを聞いた瞬間、淳は体をすくませた。
大体そういう悩み事だとは知っていたが、
これを断れば達哉の士気がくじけてしまうだろう。
このことは淳一人の問題ではなかった。

「こ、こわいか?」
「う、ううん?」

そうはいいつつも、達哉の剣幕に少し戸惑っていた。
素直に認めればいいだけなのに、それをするにはあまりにためらわれる。
つい最近まで誤解とはいえ、淳は達哉のことを心の底から憎み、
殺そうとまでしていたのだ。

「でも、その……ぼ、僕はそういうの早いと思ってたけど……」
「淳さえ、淳さえ言ってくれれば俺、勇気出せるんだ」
「……あっ……」

達哉はじっと真剣に淳を見つめる。
淳の額を一滴の汗がこぼれおちた。

「どうせ同じことなら、最大限に淳への愛をしめして、この悩みを終わらせたい」
「わ、わかった。僕も覚悟を決めるよ。
 達哉がそんなに真剣に僕のことを思ってくれていたなんて……」

でも、本当はうれしい。誰かがこんなにも自分を大事に思ってくれるだなんて。
本当に欲しかった愛は、ここにあるのかもしれない。

「罪は深いぞ……淳……」

淳は小さくうなづいた。

「だいじょうぶ。僕、君のそばはなれないよ」

淳の思わぬ言葉に驚きの表情を浮かべたが、
すぐにその言葉の意味にほほを染め、心の底からうれしそうに表情がゆるんだ。

……そして、決意に満ち溢れた表情で、達哉はうなづく。
それはあまりにも精悍で、鈍感なところのある淳の心さえ揺り動かした。
これでいいのだ、と思った。
達哉はそっとポケットに手を突っ込み、震える手で何かを掴んで表へと出した。
それは一見、小さな花柄がちりばめられた繊細なレースでできたハンカチだった。

切れ長の目を細め、額を流れ落ちる汗をそのハンカチでそっと拭う。
そんなささいな達哉の仕草さえ、誰もが目を奪われた。

今の達哉にはおそろしいほどのオーラが出ていた。
セブンスのカリスマと呼ばれた男の渾身の演技だった。
舞耶もリサも思わず振り返った。
栄吉でさえその真っ白なほほを赤らめるほどだった。

さわやかにほほえみ、パッとハンカチを広げる。
それは軽やかにひるがえり「達哉」と書かれた裏面が現れる。
その形状は明らかに……女性用の下着であった。

目の前にいた淳は、パチクリとまばたきを繰り返す。

「そ、それ、その……」

達哉のあまりにすがすがしい表情。
そのうしろでは達哉の成長を現すように
アポロがランクアップしていた。

「淳、これが俺からの気持ちだ。良かったら、使ってくれ……
 これ、淳なら似合うと思って……こ、恋人でもないのにこんなの贈るの
 ……間違ってるよな……って……」

二人は見つめあったが、明らかに淳はしどろもどろの様子だった。
真っ赤になるとしばらく笑顔でかたまったままになった。

「あ、あ、あ……ありがとう……」

小刻みに震える手で、あわててそのパンツをとりあげる。

「私のトキメキを返せぇええええええ!!」
「っていうか、汗を拭く必要はあったのかな?」

リサの雄たけびと舞耶の冷徹な声と銃声。
共に後頭部に入った衝撃。
CRITICALの赤い吹き出しが二つ飛び出し、
達哉は気絶した。

「俺の……炎が……」

淳はポケットに入れてその手で掴み、
これにどう答えていいやら悩んでいた。
達哉の悩みが、今度は淳へとうつってしまったようだ。

「た、達哉の変態……」

しかし、そのパンツを受け入れるということは、
達哉の告白を受け入れるということ。
ほんの少しだけ、あきらめの気持ち。

「し、仕方ないな……どんな形であれ、
 僕、約束したもんね……君のそばはなれないって……」

膝の上に達哉の頭をもたせかけ、反魂香をたく。

「で、でも、このパンツはくのは……ま、まだまだ先だからね……」

その日から二人のステータスは、こっそりと「恋人」に変わった。

―― END

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大幸妄太郎

Author:大幸妄太郎
ペル2(達淳)・ドリフターズ(とよいち)に
メロメロ多幸症の妄太郎です。女装・SMが好き。
ハッピーエンド主義者。
サークル名:ニューロフォリア
通販ページ:http://www.chalema.com/book/newrophoria/
メール:mohtaro_2ew6phoria★hotmail.co.jp
(★を@にかえてください!)

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