ニューロフォリア

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１．ちゅーぺっと

淳のおうちはほとんど家族がいません。
子どものころは自分でおやつを買いに行くのが主でした。

「チューペットあるから食べよう」
　淳は頬をなぜかほんのり赤らめて聞き返してきます。
「ちゅう、ぺっと？」
「へ？淳、知らないのか？」
　どうやらちょっぴりエッチな妄想をしてしまったようです。

兄弟も両親も常に一緒の周防家なので、
夏になると冷凍庫にはチューペットがいつも入っていて、
達哉にとっては当たり前どころか、家族で食べるものという
感覚ですらあったので、チューペットを知らない淳に驚きました。

「まー、おまえんちブルジョワジーだしな」
「ブ、ブルジョワジーとか言わないでよ…で…チューペットってなに？」
「ん！」

そう言って達哉が取り出したのは何やらほそながーい奇妙な形のものでした。

「持ってみ」
「うわっ冷たい……でもこれ、どうやって食べるの？」

淳はチューペットをいろんな角度から見てみますが食べ方がわかりません。
達哉はちょっとしたイタズラを思いつきます。

「…こうやって食べるんだよ…」

達哉はフフフと笑いながら、両端の突起を
パチンパチンとはさみで切ってしまいました。
中からじわじわと冷たいシャーベット状のものがあふれ出てきます。

「ほら、いそいで咥えてみな……俺はこっちから食べるから、淳はそっち……」
「う、うん……」


淳は思いました。

絶対に嘘だよね？この食べ方……


2.たまごあいす

「面白いものを買ってきたぞ、淳！」

そういって達哉が取り出したのはビニール袋に入った何やら丸いもの。

「……？ありがとう……たまごアイス？」

やっぱり淳は知らないな？と達哉はニヤニヤしています。

「こ、これどうやって食べるの？」

ビニール袋をピリっと開けて中を見てみたものの、
中に入っているのはまんまるに膨らんだ風船でした。
ご丁寧に口を結んであります。
風船はパンパンに膨らんでいるのではなくて、
あまった先端がとがってて……なんだかちょっと……
おっぱいみたいでした。

淳が戸惑っていると、達哉が自分の分の先端をはさみで
チョンっと切って風船のゴムの先端を咥えてちゅうちゅうと食べ始めました。

あ、なるほど、チューペットと同じ要領なんだなと思ったものの、
形にちょっと戸惑いを覚えます。

咥えて吸い出すと、ほんのり甘くて素朴な味。

これは美味しいなぁと思って食べていると、
達哉が妙に無口になって、チラチラとこちらを見ているのが気になります。

な、なにかやらかす気なのかな…。

でも、たまごアイスは思っていたよりおいしくて、
溶け出してふにふにと柔らかくなってくると、自分から中身が出てきます。

わ、面白い……

こうやって次から次に口の中に入ってくるなら、
なるほど達哉も無口になるのがわかります。
淳はにこっと笑うとコクコク頷いて、これおいしいね？の気持ちを伝えます。
達哉もコクコク頷き返してくれました。

でも、なんだかたまごアイスの様子がおかしくなってきました。
ぶにゅぶにゅ中身の出てくる速度が速くなってくるのです。
達哉はもう食べ終わったみたいで、ちゅうちゅう残りを味わっています。
淳はだんだんたまごアイスの勢いに不安になりだして、
達哉に助けを求めようと思いました。

「ね、達哉っ……あぁああっ！！」

口を開いた瞬間びゅるるるるるっと勢いよくたまごアイスが飛び出して、
淳の黒い髪に、白い肌に、春日山の青い制服にまでねっとりとかかってしまいました。

「うわぁあ……」

淳は心底がっかりな表情をしながら惨状を眺めました。
達哉はそんな淳の様子を顔を真っ赤にしながら見ていました。

「やると思ってたけど……」
「し、知ってるなら教えてよぉ！！」

達哉がニヤっと笑って淳のほっぺたにかかったたまごアイスをペロリとなめます。
淳はゾクッとして身を縮めました。

「淳のちょっとドジなとこ……見たかったから……」
「……っ！」