ニューロフォリア おしろいばなとしろいほほ
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おしろいばなとしろいほほ

子達淳の雰囲気もの。
ジュブナイルなお話書きたいし、読みたい。
誰か子達淳下さい^q^*
おしろいばなとしろいほほ
   1

「いいにおいする」

 まだ空は明るいけど、そろそろお迎えがやってくる時間。
 達哉はすんすん匂いをかぐ。お菓子とはまた全然違う、なにかの甘くていい匂い。

「朝とかはきづかないんだけどな。これくらいの時間になると、いいにおいする」

 アラヤ神社の境内を駆け回る。
 今日はリサはお稽古で、栄吉はおうちのご用事でヤダヤダって泣きながら
お父さんに引きずられて帰っていった。お姉ちゃんも、今日からちょっと
早く帰らなくっちゃいけなくなったらしい。
 淳とふたりぼっちになる時間が増えてから、気になりだした甘くていい匂い。
 淳は社の階段に腰をかけていた。いろんなことを考えていたけれど、
達哉がいい匂いを探してはしゃぎだしたから、考え事を中断した。
きょとんとした顔でこくびをかしげて駆け回る達哉をじぃっとみていたが、
どこだーと叫びながら走り回っている達哉を見ていると、
なんだかその甘い匂いはなんだろうか気になってきて、
ぴょんと階段を飛び降り、淳なりのせいいっぱいで走って達哉を追いかけた。

「いいにおいするの?」
「……いいにおい!!かいでみ!ほら、このへんとか……」

 達哉は淳の手をパッとつかむと、茂みの近くに連れ出して、ふぅわり風が吹くと、
ちょっと目を閉じてふんふんと匂いをかぐ。淳もそのまねをして、くんくんと匂いをかぐ。

「……あっ!」

 今度は淳がぱっちりと目を開き、一人でガサガサ茂みの向こうに入っていった。
今度は達哉がきょとんとしながら茂みから淳が出てくるのを待つ番だ。

「あった!キレイに咲いてる……」

 淳の声が聞こえると、マテをされてた犬がヨシの声をもらったかのように
タツヤも茂みに飛び込んだ。

「……んー!!淳!!どこー?」

 着ていたシャツをあちこちにひっかけながら、四つんばいになりながら淳を探す。

「達哉!こっちこっち!!」
「っわ……」

 そのとき、さっと真っ白な淳の腕がのびてきて、達哉を横にさらっていった。
さっきまで土と草の匂いばかりだったのに、淳の誘った広い空間にきたとたんに
あの甘くていい匂いがいっぱいになった。

「オシロイバナ!」

 淳は得意げに、両腕を広げ、赤、白、黄色。手のひらより小さい花がたくさん咲いた茂みをさした。

「うわ、花がいっぱい!!これ、近所のおばちゃんちにもある花だ!!」

 生垣に咲いた小さな花。普段は全然気にしてなかったけど、
淳と一緒に見つけた花なら達哉はなんだって興味が出た。
淳は花が好きだから、花のことならいろんなことを知ってるから。

「な、な、花言葉はなに?」

 達哉は淳から花言葉を聞くのが好きだった。白い肌、つやつやの黒髪、
潤んだ黒の瞳、ほほをほんのり染めながら、うれしそうににこっと笑うと、
ゆっくりと薄桃色の唇を開く淳。

「んっとね……」

 淳は運動が苦手。おしゃべりもそれほど得意じゃない、大人しい子だったけれど、
頭はとても良くて、皆の夏休みの勉強を見てくれることもあった。
いっつも控えめだけれど、花のことや星のことになると、いつもより
ほんのちょっぴりキラキラしながらお話をする淳が達哉は好きだった。

「内気」
「で、で?」
「臆病」
「……まだあるだろ?」
「柔和」
「うん!ちょっとそれはいいなぁ……」
「病気」

 達哉の表情が固まる。

「こんないっぱいキレイな色で咲いてて、
 こんなにいい匂いするのに……がっかりな花言葉ばっかり!」
 
 後一つ、達哉が淳の口から花言葉を聞くのが好きな理由がある。

「ん、あとね……」
「うんうん」

 淳はちょっぴり照れくさそうに手を後ろに組んで、ちらっと達哉を見る。

「あなたを思う」

 普段聞けない、胸がきゅうんとするような、そんな言葉が淳の口からあふれ出るから。
達哉の胸は、淳のちょっとロマンチックな言葉に反応して、
走った時みたいなドキドキの速さに代えていく。苦しいけれど心地よくて、
体がぽかぽかするのがちょっぴり恥ずかしい。
 淳はぼぉっとする達哉を見てくすくす笑うと、赤い花をぷちっと摘んで、達哉の髪に差してみた。

「かわいい」

 そういって淳がちょっぴり微笑む。
 ドキドキがもっと早くなる。淳は少し、突拍子も無いところがある。

「そ、そういうのはやめろよ……」

 だから達哉も白い花をぷちっと摘んで、淳の髪にさす。

「こういうのは……淳のが似合う……」

 自分でやったのはいいものの、つやつやの黒髪にぽつんと咲いた白い花は
思ったよりもきれいに見えて、淳のかわいらしさにそれこそ華を添えて見せた。
下を向いて、土をける。

「そうかな?」

 赤い花、白い花、黄色い花、真っ白な淳と真っ赤な達哉。
 ぼんやりと染まる橙色が、もう帰る時間だと告げる。

   2

「夕化粧、フォー・オクロック……」

 皆が帰ったアラヤ神社。淳がそっと口を開く。

「どうして達哉がこの時間になるといい匂いがするって言うのかわかったんだ」
「なんでだ?」

 社の階段で二人並んで、足をプラプラさせながら、身を寄せ合う。
 秋が近づいて、涼しい風が吹く。
 半そでじゃ少し寒く感じる頃、お互いの体温が心地よい。

「オシロイバナってね、夕方に咲くんだって」
「へんなの」
「みんながおうちに帰っちゃう頃に咲くなんて、ちょっぴりもったいないよね」
「見に行く?」
「うん!」

 達哉はトオっとジャンプして、ストンっと階段を飛び降りる。
淳もぴょんっと飛び越えるけど、今日はちょっと失敗して石畳につまづいて少しよろける。
達哉がしっかり抱きとめると、二人して照れくさそうに笑う。
 風に乗ってやってきた、甘くていいにおいをふんふんかぐと、
 淳もそっと風の方に顔を向けてくんくん匂いをかぐ。
 達哉が突然駆け出すと、淳もあわてておいかける。今日は迷わず茂みに飛び込み、
ガサガサ無理やり掻き分けて、目的のオシロイバナの群生地を探す。

「咲いてる!」

 達哉が振り向くと、四つんばいになって、髪の毛に葉っぱを付けた淳が、
うれしそうに微笑む。達哉が花を好きになってくれるのがうれしかった。
 だって、皆は花言葉を当てる淳をからかうから。
 星が大好きで、どこが好きかお話をすると、皆はふぅんと言ってそっぽを向くから。
 こうやって興味一杯に淳が好きなものの話を聞いてくれると、
淳は胸がすぅっとするのだ。こんなお話が出来るのは、パパとママと、
お姉ちゃんと、リサと栄吉、それに、達哉だけだった。

「今日はね、いいものもってきたよ」

 ちょっとだけすりむいちゃったひざこぞう。
半ズボンのポケットから、カメラのフィルムケースを取り出す。
プラスチック製の透明の、どこにでもあるあのフィルムケース。
その中にはコロコロとした黒いものがたくさん入っていた。

「ダンゴムシじゃないな」

 淳からフィルムケースを受け取ると、達哉はカラカラ振ってみせる。

「そんなことしたらかわいそうじゃない!」
「ウサギのふん?」
「もー……やだなー達哉ってば!!」

 達哉の冗談に淳が笑うと、達哉もほっぺたを赤く染めて笑う。

「おしろいばなの種だよ!」
「種?」

 フィルムケースをカラカラ鳴らして遊ぶのを止めると、ぱこっと蓋をはずして
手のひらにいくつか取り出した。真っ黒で丸くてコロコロで。

「お化粧できるんだよ」

 淳はそっと種を前歯で咥えて軽く噛み潰すと、手のひらの上で半分に割って見せた。
黒い殻の中には、真っ白な丸いものが入っている。白くて細い指が
そっとその丸いものを転がすと、砕けて粉になった。
 指に付けたそれを、そっと達哉の頬に塗る。

「ほら、お化粧」
「どれどれ?」

 淳の真っ白な手のひらの、真っ白な粉を、そっと指に取ると、淳の白いほほにすぅっと塗る。

「淳、白いからわからないな」
「……そう?」

 顔の距離が少しずつ近くなる。
よぉくよぉく淳が見たくって。そしたら、淳のほほが赤くなった。
なんだか急に体がむずむずして、心臓が爆発しそうで、ぎゅっと淳を抱きしめる。

「わっ」

 フィルムケースが下に落ちて、ころころの種が転がっていく。

「……いいにおい」
「……うん……」

 何でこんなことしたんだろう?何でこんなことされたんだろう?

 二人は胸をドキドキさせながら考えるけどわからない。
 今日も夕暮れがみんな赤く染めていく。早く帰れとカラスが鳴く。

 夕方四時
 オシロイバナとシロイホホ。
 夕日に染まる、白い君。


 おわり

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大幸妄太郎

Author:大幸妄太郎
ペル2(達淳)・ドリフターズ(とよいち)に
メロメロ多幸症の妄太郎です。女装・SMが好き。
ハッピーエンド主義者。
サークル名:ニューロフォリア
通販ページ:http://www.chalema.com/book/newrophoria/
メール:mohtaro_2ew6phoria★hotmail.co.jp
(★を@にかえてください!)

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