ジョジョが面白かったので思わず3部の
承太郎と花京院の雰囲気小説書いちゃった……。
射 程 距 離 内
本を読んでいた。ふっと寂しさを覚えて顔を上げる。
船の中、承太郎の姿が見えない。
「いいんですか?探さなくても……ジョースターさん……」
アブドゥルさんとポルナレフさんと一緒にトランプで盛り上がっているところ、
申し訳ないと思いながらも声を掛ける。
「あぁあぁ、いいんじゃよ。孫は元からああやって一人になる時間を欲しがるやつじゃから」
ポーカーでもやっているのだろうか、アブドゥルさんとポルナレフさんの顔色が悪い気がする。ジョセフさんの様子からすると、勝負はどうみてもあきらか。
「で、でも、もし一人で別行動して敵に出くわしでもしたら……」
「そうなれば、ワシにはすぐにわかるよ」
ジョースターさんは笑顔で言う。
なるほど、ジョースター家の血筋……というやつか。
この旅をしていて、正直、心休まる時間がない。
それは、人一倍敏感になってしまう僕のスタンドの特質が関係しているのかもしれないが。
一人で家出も同然のエジプト旅をするくらいには孤独には慣れているのだが、
こうも一人の時間ばかりではつまらない。この本も何度読み返したろう。
そろそろ新しい本が欲しいが、次の港に着くまでどのくらい時間があるだろう。
「ハハハ!どうだ、花京院君も一緒に遊ぶかい?」
ジョセフさんの手元のカードがちらりと見えた。
「……い、いえ、遠慮しておきます」
……おこづかいは大事にとっておきたい……。
◇
また同じページを繰る。
暇だ。
この本は内容はいいが、いくらなんでもこう何回も同じものを読んでいると……
いたずら心がむくりと起きる。
ハイエロファント・グリーン。
僕はスタンドを呼び出し、命令をする。
下半身の触手が、まるでアメーバーのように広がり、船全体を探るようにうごめく。
彼は一体、何をしているのだろう。
彼の表情は常に変わらない。何を考えているのか、理解できない。
だからこそ彼の戦闘や策略はとんでもなくて面白い。
なんとなく気づいたのだが、ジョセフさんはいつもおどけて見えるが、
ああ見えて結構なクセモノのようだ。今日もポーカーで二人から巻き上げている。
毎日毎日飽きないなと思う。いや、もう飽きているのだろう。
彼らの手元には賭ける物は無くなっている。
ジョセフさんが自分を貶めて油断させるタイプだとしたら、
承太郎は徹頭徹尾表情を崩さない、ポーカーフェイスだろう。
もし、ジョースター家の血筋とやらがそんなに強い特徴を持つものならば、
彼もまた、食わせ者だということだろうか。少し、興味がある。
「……いた」
本をおろし、彼のいる方向に目を向ける。
ただ、彼は海を見ていた。
何が楽しいと言うのだろう。
1時間……2時間……
彼は微動だにしない。
「……死んでいたりして」
思わず笑ってしまう。
『なんの用だ』
彼の突然の語りかけにびくっと反応してしまう。
バレている。
……まぁ当たり前だろう。同じスタンド使い同士なんだし、微動だにせず、
1時間も2時間も張り付いていたのは僕も同じだったのだから。
『いや、君が心配だったんだ』
『同じ船の中だ。何かあったらすぐにわかるだろう?』
彼も暇だったのだろうか。思いのほかすぐに返事が返ってくる。
『なんで海を見ているの?』
彼は沈黙する。
「ハーッハハハ!また勝った!」
ジョセフさんの笑い声。
『じじいがうるさいから、そばにいたくないだけだ』
『……なるほど』
確かにジョセフさんと承太郎は相性があまりよくなさそうに見える。
お互い信頼し合っているだろうし、仲が悪くないのも見て取れる。
ジョセフさんは、承太郎の世話をすぐに焼きたがる。
アメリカ式のスキンシップもとりたがる。
ホリィさんと接していた態度とあまり変わらない。
承太郎はあきらかにそれが苦手の様子だった。
まぁ、気持ちは分かる。僕もどちらかと言えば、
あんなスキンシップは遠慮したい。
結局、間があきつつも、思ったより彼と話し込んでしまった。
時間は……あっという間に過ぎた。
◇
「花京院君、承太郎と仲良くできそうかね?」
その後も、なんとなく彼のことを考えながらずっと甲板のベンチに寝転んで
空を眺めていたらいたら。にこやかにジョセフさんが話しかけてきた。
新聞紙を切って作ったお札を繰っている。
「……彼、面白いですね」
僕がそういうと、ジョセフさんは笑う。
「よかったよかった。こりゃあホリィに手紙を書かないとな!
承太郎に友達ができました……とな」
◇
これじゃあ、糸電話だよな。
「丸聞こえだ。じじい」
潮風を感じながら、じぃっと波の様子を見つめる。
スター・プラチナの手には、ハイエロファント・グリーンの触手が握られていた。
「あのアマに余計な手紙を書いたら許さん」
『こりゃ!承太郎!あれだけお母さんをアマなんて呼ぶなと言ったろうが!』
隣に並ぶスタープラチナの表情は、うれしそうだった。
「くそ……暇がつぶせて……よかったと思っているだけだ……」
誰も聞いていないのに、スター・プラチナに愚痴る。
E N D