ニューロフォリア 聖ジョルノ誕生祭!!!!!!!
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聖ジョルノ誕生祭!!!!!!!

おたんじょうびおめでとうジョルノッ!!!!!!
ってことでジョルブでジョルノのお誕生日を祝ってみました。
書きながら淳ちゃんといろいろかぶっちゃってごめんなさいと思った。
もっともっとあなたを理解したいですジョルノ……。
ってーかあんたAB型かよジョルノ……wwwww
知り合いのおひつじ座AB型はしっかりしてるけど苦労性だよジョルノ……。

そんなことはまぁともあれ、pixivにも同じのあげてますけど、
エロなし小説あげときますね><*

さぁーって!!6月のジョルブ本の原稿がんばろう!!フンッフンッ!!!!!!!wwwwwww
 太陽の明かりを弾く白い壁。年月を重ねて風化して、灰色の地肌をさらす壁に囲まれた住宅街、ここから先は小さな湖へと通じる、小さな公園だった。石畳が少しずつ土におおわれて、だんだんと緑の草に覆われた地面へと変わっていく。小さな湖のほとりには、数本の桜の木が植わっていたが、あたりの人々は舞散る花びらに目もくれずに。店の日陰に集まっていた。お昼時の日差しはあまりに強く、真上から照りつける太陽は体力をそいでいくからだ。
 空をおおう桜の花びらを透る真っ白な太陽の光は、放たれた無数の矢のよう。あまり感傷的にならないジョルノにしてはめずらしく、花をながめるのが目的でその場にきたので、いじのわるい太陽にじゃまされてしまうと、少しふきげんそうに目を細めた。ジョルノはそれでも手をかざし、桜の木をながめる。
 家の中ではいまごろ子どもたちが昼寝しているのだろうか。この公園には人影があまりない。
「お嬢さん、この桜の木に何か、思い出でも?」
 ジョルノの上に日陰ができた。かかげられたのは、大きな手のひら。
「……ふざけないでください。」
 相手はすぐに誰かわかった。聞きなれた笑い声。ムっとして振り返ると、おなかを抱えて肩をゆすぶっていた。
「いい!そのいかにも不機嫌そうな表情!」
 あまり表情を変えることのないジョルノから表情を引き出すたびご機嫌になるブチャラティ。
「ネアポリスに来たのは最近です。思い出も何もありませんよ……ただ、こんなところに桜が咲いているから……おどろいただけです」
 風に揺れる黒髪の下、いたずらっぽくほほえむ黒い瞳。やがて笑うのをやめ、口元に笑みを浮かべたまま、そっとジョルノが見ていた桜の木をあおいだ。
「やけに感傷的になってるな」
「……ぼくも、いちおう日本人だった……ということでしょうか……」
 ブチャラティは背筋をピンと伸ばし、いつものように凛々しい様子にもどる。やさしさのにじみ出る表情、どこか女性的な顔立ちをしているが、その体は幾たびもくりかえされた戦いに鍛えられていた。そして、その体は悪を許さぬ正義の心が動かしている。女性的、というにはあまりにも凛としているのがブチャラティだ。
 ジョルノの日本人だったというその言葉に、ブチャラティはうんとうなる。
「そういえば、そうだったらしいな……」
 太陽の光をたっぷりとはねかえすジョルノの金のみつあみをいじる。彼の持つ黄金の心の象徴のような、生命エネルギーほとばしるような美しい色をしている。彼の話によると、この髪も数ヶ月前までは、日本人らしく真っ黒だったというのだから驚きだ。
「ジョルノからその話を聞くまでは半信半疑だった」
 ふりかえるジョルノの瞳は、太陽と同じ色、同じ輝き。まるで鮮やかに実るオレンジの色。じっくりと髪に目に、肌に視線をすべらせるブチャラティに居心地悪そうにした。
 この男は、繊細そうな見た目の割りに、遠慮がない。断っておくが、ジョルノだって決して女性的なわけではない。お互い……そういう思いで接したことなんて一度も無かったはずだ……しかし、ジョルノはブチャラティの視線にほほが熱くなりそうなのをごまかそうとした。
「みんな、あまりこの花に興味を示さないんですね」
 風が吹くと、数枚の花びらが飛んでいく。強い風に、夜のように真っ黒な髪がブチャラティのその白いほほにかかる。軽く首をかしげながら、髪をかきあげた。
「いいや?きょうみしんしんだよ。この桜がどれだけ元気に咲くだろうかって」
 昼間で人がいないからだろうが、治安が悪いから……だとしても、この桜はあまりに立派な枝振りをしているから、日本人だったなら思わずここで食事をしてしまうことだろう。ジョルノの知る限りでは、ここで食事をしている人をみかけたことがなかった。
 ブチャラティの両手が紙袋でふさがって邪魔そうだったので、紙袋を一つ奪う。ジャンケンで決めた買い物当番が偶然この二人になってしまったのだった。この近くにナランチャがオススメのパン屋があるというので、ここまで来たというわけだ。
「花が散って、夏になると実をつけるだろう?子どもたちにとってはそれが一番大きな関心ごとだ」
「楽しみは食べる方面で、ですか……新しい考え方かも……」
「おかしいか?」
 このあたりは、貧しい家に育った子どもたちばかりだ。ジョルノだってその気持ちがよくわかる。盗みやだましが生きる為には必要なこと。だから子どもたちにとって、この誰のものでもない桜の木はきっと魅力的にうつるだろう。青々と茂った桜の木の下、摘み取ったさくらんぼをたくさんザルにつめこんで、冷たい飲み物を飲み交わし、陽気に会話する。その場で摘んだものが一番おいしいのだから、なるほど、おなかを満たす理由もあるわけだ。日本人の花見よりは理にかなっている気がする。
「いいえ?日本人の方がよほど不思議です。この桜を見るといって酒瓶ぶらさげて挙げ句の果てにはカラオケまで持ち出すものもいる……この桜を楽しみに来たのだと理由付けをしているだけで、実際はたんに騒ぎたいだけなんだ」
 ブチャラティの口の端が上がったのが見えた。
「こうして……静かに散る桜を見るのがいいのに……無駄だ。無駄が多すぎるんだ」
「なにか、いやな思いでもしたのか?」
 ジョルノが自分から過去を話していることがうれしかったのだ。知りたいと思っても知れない素性が、少し冷静さを欠いた本人の口からぽろぽろとこぼれるのが楽しかった。
 ブチャラティのその笑みに、自分が失態をしたかと少し腹立たしくもあったが、そうやってジョルノのひとつひとつを楽しむブチャラティに悪い気はしなかった。ジョルノもしかたないなとためいきをつく。この人にはかなわない。この人のそばにいると、少しだけ心を開きたくなる。
「聞きます?……くだらない、とある少年の話」
「そうだな……今日は平和そうだし、おもしろくもない話を聞くのも、いいかもな」
 ブチャラティはそういうと、桜の木の隣まで歩いていく。盛り上がった根っこの間、緑の草が茂り、小さな花びらが白いアクセントをそえた。ブチャラティはそこにハンカチを広げて置くと、紳士的に礼をした。
「どうぞお嬢さま。この花びらのような美しいくちびるからこぼれる、あなたの話なら、なんだって聞きたいな」
「……ブチャラティ、あまりおふざけがすぎると、痛い目にあいますよ?」
 目に怒りを浮かべたジョルノがにらむようにしながらブチャラティの隣まで歩く。同じように無表情のゴールド・エクスペリエンスが腰に手を当てて、ブチャラティを見下ろしていた。しかし、おとなしくハンカチの上に座る。自分でも気づかずに抱えていたこのさみしさはあまりに不自然で、彼を心配させてしまったのだろう。
「それは勘弁だな」
 笑うブチャラティといっしょに、思わずジョルノも小さく笑った。

「これは、日本が舞台の、とある少年の話です」
 心地よい木陰。もたれかかった木の幹も地面もひんやりとしている。ブチャラティはパン屋の袋を抱えて座り、じっとジョルノを見ていた。
「その少年は俺の知っている子か?」
「それは、想像におまかせします」

 桜を見たはっきりとした記憶、それは4才のころだった。黄色い帽子に水色のスモッグ。帽子とおそろいの色のカバンをさげて、母に手を握られて見上げた、桜。
 小さな少年には、花びらが天から降り注いでくるかのように見えた。白くて、雪のようだと思った。くるくると舞い、鼻をくすぐって地面に落ちる。こんなにも美しいのに、母は興味なさそうに、立ち止まる少年の手をただ、痛いほど強く引いた。それでも少年はうれしかった。はじめての幼稚園。はじめて見る満開の桜。態度はつめたくても、あたたかい母の手。少年は笑った。周りは、親につれられた子どもたち、はやくも友人をつくって遊具にはしゃぐ子どもらもいた。園内は笑顔にあふれていた。

 少年は幼稚園が大好きだった。ここには孤独がないから。知らぬ間にただ一人暗闇で放置されることもない。一度、気分が悪くなって吐き気におそわれ、一人で教室をぬけだしてトイレにこもったとき、先生が心配して探しに来てくれた。少年はそんなあたりまえのことにさえおどろいた。
「せんせい、あのね、ぼく、ひとりでだいじょうぶだから……」
 表情も変えずに、小さな体を丸めて苦しみに耐える少年を、先生は抱きしめてくれた。少年は他人からの愛情をはじめて知った。本来なら、あたりまえのように与えられたであろう大人からの愛情に、ひさしぶりに与えられたぬくもりに、いつもかたくむすばれたくちびるもほころんだ。

「今日は、みんなでお絵かきをしましょう!」
 まっさらのスケッチブックに、まだ一度もふれたことのないクレヨン。みんなは先生から配られた道具にわぁわぁとはしゃぎだした。
「おそとにでて、好きなものを見ながらかいてね!」
 ガラス戸が開かれ、子どもたちは庭に飛び出した。女の子が友達の手を引きながらかけていく。とある男の子は、さっそく木陰のしめった場所に行き、ダンゴムシを探していた。
 少年は広い庭の真ん中で、ぽつんとひとり立っていた。あたりをぐるりと見回して、目に付いたのは桜の木だった。母の手のぬくもり、はじめてみた幼稚園。みんなの笑顔。たのしい話し声。少年の好きなものは、天から降りくる花びらだった。
 少年は桜の木の下に座り、白いクレヨンでぐりぐりと花をかきだした。ひらりひらりと散った花びらが、少年のスケッチブックのうえに舞い降りた。あまりのうつくしさに声を上げた。
 少年がかいたクレヨンの桜と花びら……少年の絵は、先生から一等賞をもらった。

 スケッチブックを抱きしめて、幼稚園バスを降りる。少年は一人、先生に手を振りながら家へと向かう。先生は少し心配そうな顔をしていた。少年にはそれがなぜかわからない。少年が一人で帰る姿が心配だという先生の気持ちがわからない。だって、いつだって一人で帰るのが少年にとっては当たり前だったから。
 家に帰ってくると、お母さんはうれしそうに化粧をしていた。鏡に向かって、クレヨンのように色鮮やかな赤い口紅を、そのくちびるにぬっている姿を、じっとながめていた。
「なによ、帰ってきたらただいまでしょう?」
「た、ただいま」
 背中しか見えなくて、表情はわからないけれど、母がうれしそうに鼻歌をうたっているのがきこえた。
「もうすぐあんたに新しいお父さんできるから」
「……え?」
 くちびるをンっと何度かとじて開いては、角度を変えながら鏡をながめている。
「引っ越すのよ。イタリアへ。あんたわかる?イタリア。遠いところよ」
 少年は母が言っていることを理解できなかったが、母がうれしそうなことがうれしかった。だから、もっとよろこんでほしくてスケッチブックを差し出した。
「ぼく、一等賞もらったよ」
 スケッチブックを受け取った母は、化粧をじゃまをされたのが気に食わなかったのか、眉をしかめてポンとテーブルの上にほうり出した。はさまっていた花びらが数枚、スケッチブックから飛び出すとテーブルの上をすべり、くるくると回った。
 少年に無関心な母は、化粧を終えると、そのまま鞄を持って家を出ていった。「いってきます」もなしに。スケッチブックは机の上に置かれたままだった。一度も開かれることがないまま、段ボール箱につめこむことになったのを、少年は覚えている。

 話終えると、ジョルノはブチャラティの悲しげな目を見て、思わず口の端が上がってしまった。涙をこらえている様子だった。この話の少年は、己が孤独であることに対して疑問を持っていなかった。一切さみしいと思ったことがないのだ。何もかもが当たり前だったから。
 母に振り返ってもらうことができなかったことも、誰かに愛されることがなかったことも。何もかもが当たり前で普通。少年にとってはなんでもないことだったから。
 でも、少年は、そんなブチャラティの表情を見ると、心に明かりが灯ったような思いがした。
「その後、少年はイタリアへと渡った。ちっとも理解していなかったけど、その日から母といっしょに見知らぬ男と暮らすことになった。そして、いつのまにかその少年はイタリア人ということになったらしい……」
 隣に座ってじぃっとしているブチャラティの上にのしかかるようにしながら、ジョルノは腰を上げ、ブチャラティの頭をはさむように、両手を幹に当てて体を支えた。座っていた主がいなくなり、軽くなったブチャラティのハンカチは風に吹かれて、緑色の草の上で揺れた。抱えたパン屋の袋からは、香ばしいにおいがただよった。
 ジョルノはその少年の話を聞いた他人が、どういう表情をするのかが知りたかった。特に、この……ブチャラティという青年の表情を……。
「少年は日本人だったはずだけど、漢字よりも先にイタリア語を覚えた……イタリア語を理解しなければ、父からの理不尽な仕打ちは、さらに理不尽さを増すからだ」
 知らぬ間に身動きができないような体勢に追いやられても、ブチャラティは何もいわなかった。ただ顔をふせ、長いまつげの向こうの黒い瞳が涙で揺れていた。ギャングらしくない無防備さ。それくらいまでに感情移入してくれているのだ。
「……ベルトで毎日のように折檻をうけましたね。何かするたびに……」
 ジョルノは、このギャングらしからぬやさしさを愛している。ブチャラティのチームがまとまりのないように見えて、深い信頼関係が根付いているのは、このやさしさがそうさせるのだ。ブチャラティの望むことなら叶えてやりたいと誰もが思っているからだろう。
「イタリア語を覚えても……父の折檻の理不尽さは変わらなかった。最初はなかなか覚えないからと言っていたが、覚えたら覚えたで、今度は口答えするようになったと殴られた……」
 満開の桜の花の間からこぼれくる太陽の真っ白な光は、ブチャラティの黒髪を艶やかにすべりおちる。もうすぐ、涙も、きっと、こぼれおちてしまうだろう。
「……ひどいときには……俺を見る目つきが気に食わないと、目が合うだけでなぐられた……」
 そして、本当にこぼれそうになるころ、ジョルノはそれをそっと目蓋に口づけてすすった。この涙はきっと、自分が流すはずだった涙なのだ。
「どうしたんです?なぜ泣くんです?」
「……泣くに決まっているだろう!こんな……」
 目の周りを赤くしながら、恥ずかしそうにブチャラティは叱った。
「……ふふっ……いいじゃないですか。不幸な少年は過去の存在ですから」
 ふわりと舞散る花びらが、ブチャラティの肩に降りたものを一枚、ゆびさきでつまむ。
「イタリアの桜は、日本の桜よりも色が濃いかもしれない」
 花びらの色は先生に教えられたとおり、素直にももいろのクレヨンで描くのをためらうほど純粋な白だったのを覚えている。スケッチブックから浮かぶのは、盛り上がったクレヨンの影。そして、ビロードのようにやわらかな花びら……。やわらかな太陽の光の下で、見上げた桜の木の美しさ。
「枝ぶりも、なんだかたくましいように思います」
 風にゆられ、太陽の光をこぼすその姿はまるで、桃色の炎。そして、香り高い。日本よりも強い日差し、太陽から与えられる生命エネルギーがあふれ出しているからかもしれない。日本ではあれほど儚げだった桜も、この地域ではなかなか立派な姿をしている。
「子どもたちが登るからかもしれないな……」
 ジョルノと同じように、ブチャラティも桜を見上げる。
「日本では、町に咲いている桜の実は食べたりしません……おいしいんですか?」
 さくらんぼは、ちゃんとした農家の作物だ。先生に聞いたことがある。さくらんぼはいつできるの?って……そしたら先生は、笑いながら、ここにある桜の実は、とても渋くて食べられたものじゃないよと笑っていた。
「あぁ。おいしいぞ。子どもたちがこぞって実を採ってな、ザルいっぱいのチェリーをこのパン屋のマダムに差し出すんだ」
 そういって紙袋にかかれたパン屋の店名を指さす。
「……そのまま食べないんですか?」
「そんなことをしてみろ……戦争が起こる!」
 ブチャラティが険しい顔をして言う。
「……なんてな」
 そういってまた、くすくすと笑う。ジョルノが驚いて表情をくずしたのが楽しかったらしい。
「でも実際、子どもたちがケンカ騒ぎ起こすから、この桜の木に近いパン屋のマダムさ……あそこのマダムがおいしいチェリーパイを焼いてくれるんだ……こうすればみんなおなかいっぱい食べられるでしょう?……って」
「すばらしい采配ですね」
「だろう?」
「ナランチャがこのパン屋が好きなのも納得だ……よほどおいしいんでしょうね……食べるのが楽しみだ……」
 ブチャラティのやさしげな表情に、ジョルノは思わず両手でほほをはさんだ。びっくりして丸く見開かれた黒い瞳は、うるんでいる。
「ジョ、ジョルノ……」
「僕もたいがい無粋だな……笑うあなたの方が、桜よりも美しいと思ってしまった……」
 町を思い、子を思い、やさしいマダムを思う、そのほほえみが。何も素性を知らない十五の少年の思い出話にさえ涙するあなたが。
「戦っている時の凛としているブチャラティもすてきですが、リラックスしているブチャラティもすてきだ……」
 そっとそのくちびるにキスを落とす。
「……っあ……」
 まばゆい金の輝きがブチャラティの目を支配する。ゆっくりと離れるジョルノは逆光で輝いていた。
 ……二人の間を舞い落ちる桃色の花びら。
「……何をするんだ……」
 顔が熱くて仕方がない。こんな不意打ち、あるだろうか。
「僕も、そのチェリーパイ食べにいってもいいんでしょうか?」
 ジョルノは何事もなかったかのようにほほえみ、すっとパン屋のある方向を眺める。
「なにをとつぜん」
「……いえ、ただ、なんとなく……」
 ブチャラティは神々しいその中に、どこか隠しきれぬ幼さがのこるジョルノが好きだった。完全に緊張の糸がとけている。思わずその背中に腕を回して抱きしめた。そして、肩にあごを乗せる。
「もちろんいいに決まっている。家族がパイを分けあって食べるのはあたりまえだろう?」
「……家族……ですか?」
 意外そうなジョルノの声……。長年の孤独がそうさせた不感症……それが治るほどに、愛で満たしてやりたくなる
「そうだ。ファミリーだ。それに、大人の俺がチェリーパイを食べに子どもたちに混ざったら、そりゃあ追い出されるだろうが、ジョルノならまだいけるだろう……」
 ジョルノの背中がこわばる。子ども扱いをされるのが嫌いなのだ。
「そうだな、ジョルノは年に似合わず精悍だから、信じてもらえないときのことを考えて、学生証を持っていかないと!」
「またそうやって……ふざける……」
 ジョルノは顔をこちらには向けなかったが、おとなしくブチャラティに身を預けた。
「……人の気持ちも……知らずに……」
 こうやってブチャラティに抱きしめられていると、不思議な思いが沸いてくる。心臓が破裂してしまいそうなほど鼓動して、もっと触れられたいと願い……触れたいと願う……。
 どうしてブチャラティはこうも普通に自分と接するのだろう?本当はこうしている間にも、胸がうずいてブチャラティが笑っていられなくなるようなことをしたい……という思いを抱いているのに……。
「おい、スネてるのか?」
 ブチャラティは笑う。
「今日が……何の日か知っていますか……」
「……ジョルノの誕生日……」
 ぎゅうっとブチャラティの体を抱きしめる力が強くなる。ブチャラティは当てずっぽうだったのだが、その力の強さから正解だったか……と空を見上げた。
 この少年も16で、なかなか変わった性格をしているし、いったい何を上げれば喜ぶのだろうとぼんやりと考えていた。
 ブチャラティの胸に、ジョルノのあたたかい涙がしみこんだ。ここで、実はあてずっぽうでした……なんて言えるわけがないな……と思いながら、やわらかくて太陽の光がたっぷりとしみこんだ、あたたかなその黄金の髪をなでつける。
「チェリーパイは……まだ先だけど、マダムの店で何かおいしいパイを買おうか……。切り分けた後はどれを食べるかは、まずジョルノが選べ、主役だからな……遠慮しなくていいんだぞ、一番大きいやつを選べ……今日はおまえの誕生日なんだって説明したら、ナランチャだってわかってくれるさ!わからなかったらそのときはアバッキオと二人で押さえ込むから!」
 ブチャラティの胸が、ゆかいそうにクックと音を立てて揺れる。
「ミスタを呼ぶのは最後にしようか……4がからむとあいつはうるさいからな……一番小さなパイ残しとこうぜ!」
 ジョルノは首を横に振った。
「パイなんていりません……」
 まだ涙の残る声に、ブチャラティは苦笑した。
「そうだな。パイなんて子どもっぽいもの、いらないよなぁ。何がほしいんだ?せっかくの誕生日だ、多少の無理もきくぞ」
 ジョルノが顔を上げると、いつもの美しい仏頂面。
「ブチャラティをください」
「……は?」
「誕生日プレゼント。ブチャラティをください」
 さっきまで泣いていた子はどこへやら……。
「こら、今度はおまえがふざける番か?」
 しかし、ブチャラティが体を起こそうとしても、ジョルノにがっしりと捕まれて動くことができなかった。
「……っく……動けない……」
「ブチャラティをくれるまで離しません……」
 突然のだだっ子に戸惑ってしまう。本当にジョルノは大人びているんだかなんなのだか……。
 でも、ジョルノもジョルノで戸惑っていた。ブチャラティは自分のことを子ども扱いするし、かといってあまえるのもしゃくだ。なんとしても大人として自分を見てもらいたい。でも、そんな子ども扱いするブチャラティのやさしさは……ジョルノを弱らせる。
「わかった!からかってすまなかった。降参だ」
 そういって、やさしく頭をなでられたとき、ジョルノはそのあたたかく、大きな手のひらがふわりとなでつけるたびに、心地よくて目をふせた。
 ブチャラティだって、無理やり口付けられたり、やたら触れようとしてきたり、こちらをじぃっとながめている視線によくあたったり……ジョルノの気持ちに気づいていないわけではない。
「……わかりました……ブチャラティの時間を、少しください……」
 そうやって、少しだけ子どもっぽい表情を見せながら譲歩したジョルノを、今度は笑いも、からかいもしなかった。ただ、少し悲しそうに、でも冷静に、そこにいるジョルノに不思議な感情を抱いていた。ジョルノには夢があるし、未来もある。ここでそれを摘むような行為をしてはならない。それにもし、思いを預けあうことでこれからの戦いに支障が出るようなことがあれば……ブチャラティは己を一生許せない。
「もう少し……こうさせていてください……」
「……わかった……」
 少し暑いくらいの日差し。人々は、桜の木に目もくれない。この町にはほかに、色鮮やかな花が咲くから。舞散る桜は、あまりにも悲しげで感傷的で……少しこの太陽の町にはあわないのかもしれない。
 だけど、今はこの桜の木が誰にも見向きされないものだからこそ……ありがたいと思った。ジョルノの寝息が聞こえてくると、思わずブチャラティは悲しげにほほえんだ。
「……すまないな……本当にほしいもの……与えてやれなくて……」
 でも、ジョルノに一番与えるべきものがなんなのか、ブチャラティにはわかる気がした。それはきっと、平穏な時間なのだ。毎日のように誰かの殺意に備えるしかないこの生活を……終わらせねばならない……。その結末はこの少年が握っているに違いない。それをブチャラティは一つも疑っていない。
「ギャング・スターになるまで、見守っていてやるからな……」
 ジョルノの寝顔は、年相応にやすらいだ、愛らしい表情を浮かべていた。ブチャラティはそっと、ジョルノの体をなでる。

 今は、誕生日のこの数分だけでも……

 空を見上げる。何も知らない空は青く、小さな花びらは、愛する人の体温を感じながら寝息をたてるジョルノのほほを……そっと撫でた……。

END

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大幸妄太郎

Author:大幸妄太郎
ペル2(達淳)・ドリフターズ(とよいち)に
メロメロ多幸症の妄太郎です。女装・SMが好き。
ハッピーエンド主義者。
サークル名:ニューロフォリア
通販ページ:http://www.chalema.com/book/newrophoria/
メール:mohtaro_2ew6phoria★hotmail.co.jp
(★を@にかえてください!)

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