ニューロフォリア カリスマじゃなくても君が好き。
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カリスマじゃなくても君が好き。

一週間遅れましたが、
淳ちゃんお誕生日おめでとうございます!!!
今年も淳ちゃんの存在が燦然と輝いてまぶしくて、考えるだけで涙を流してしまいます!
……うう……本当に気持ち悪いほどの淳厨になっちまったぜ……

淳ちゃんは罪。さすがは-innocent JUN-。

すっごく達哉さんがアレでアレな達哉さんなので、pixivには上げませんwww
どうか広い心で読んでください^^^q^^^^;;;;
同棲を始めて一ヶ月。
十年分の距離はなかなか埋まらない。
僕はジョーカーとして珠閒瑠を混乱に陥れ、地球を滅ぼし、
こうしてのうのうとまだこの珠閒瑠で生きている。
お互い今でも緊張が解けなくて、微妙な距離。
だから、達哉から本屋さんに誘ってくれたのはなんだかうれしかった。

「バイク雑誌のバックナンバー取りに行くから、淳はこの辺で待っててくれるか?」

お互いの距離が埋まるかもしれないと、ありとあらゆることを試した。
恋人という関係を持った人間なら誰もがいつかはそうあるように、
手をつないでみたり、キスをしてみたり……
ベッドを共にしてみたり……

それでも僕たちの間はなんとなくぎこちなさが流れていた。
達哉が夜、ベッドの端に座り込んでポツリと言った言葉が忘れられない。

「……最低だよな、俺……こんな距離の縮め方、
 おかしいことくらい……知ってたはずなのにさ……」

達哉は僕が疲れて寝ていると思っているみたいで、
大きなため息をついた。

「……恋人になれば……もっと……なんかこう……」

二人の関係のおかしさは、お互いに理由があった。
無理をして生きる君と、本当の自分をいつまでもさらけ出せない僕。
わかっていても、そうすんなりとは行かないのが十年の距離。

雑誌社はかろうじて残っているものの、今月号で実質廃刊の雑誌ばかりだろう、僕は不思議な気持ちで雑誌を一冊手に取った。

「あ、これ……ネットでよくネタにされてるメンズエックス……」

この雑誌社も地球にあったろうから、もう廃刊になってしまうだろう。

「一冊買っていってもいいかも……思い出に……」

メンズエックスという雑誌があったことの思い出と、
そして、達哉が本屋さんに誘ってくれたお祝いに……。

カウンターから達哉がずんずんこちらに向かって歩いてくる。
僕と目が合うと、ニッと笑って手を振ってくれた。

「なんだ、雑誌買うのか?一冊くらいだったらおごる」
「い、いいよ……僕、自分で買うから……」
「おごらせろってば!俺、淳の恋人だろうが……あっ!こら!無視すんなよ!」

達哉の横をすり抜けてカウンターに急ぎ足で歩いていく。
あーあ……僕、またこんな最低なことしちゃった……。
レジ待ちをしている間に雑誌の表紙を眺める。

「今月号の特集、これが漢ニュースタイル!デンジャーな魅力についてこれるか?……だって……」

ふふっと思わず笑ってしまう。やっぱりこの雑誌はなんだかおもしろい。

 ◇ ◆ ◇

その夜、ベッドで寝ころびながらメンズエックスを見ていると、達哉が意外そうな顔で僕を見てきた。

「それメンエク!淳ってそんな趣味あったんだ……知らなかった……」

先端がピエロみたいにとがった靴に、皮ジャケットにスタッズ、謎の光沢が特徴的なシャツに、派手なアニマル柄。
光を反射するカウボーイハットを斜めにかぶり、見下すようにポーズをつけたモデル。

「フフっ!ねぇ、案外こういうの、達哉に似合うかもしれないね……
 達哉って濃いめの顔してるから、こういうのなんでも着こなせそうでうらやましいな……」
「……だろ?これでも一応カリスマだからな」

顔を真っ赤にしながらうれしそうに笑う達哉に抱きついた。

「ふーん?そうなんだ?今の君のトレンドは、もしかして……男と寝ることとか?」

目を細めて、少し意地悪く言ってみる。
達哉の表情にうっとりとした色が混じる。

「……何年たとうが、俺の最新トレンドはいつだって淳だっての……」
「あはは!なぁにそれ!メンズエックスのキャッチコピーみたい!」
「わ、笑ったなコラ!淳と会う前だったら女子たちがこれでキャーキャー言うんだからな!」

達哉の大きな体が、僕をベッドに押さえつける。

「……でも、童貞……だったん……だ……?」
「……う、うるさい……」

フラッシュバックするのは、終わった後で真っ赤になりながら、
これが初めてだってつぶやく達哉。
本当は痛くて悲しくて、殴りとばしてやろうかとも思ったけど……
捨てられた子犬みたいな目で見られたら……仕方ないかなって……。

その後何度もわびられた。順番がおかしいこともわかってるし、そもそも男同士で恋人強要してる時点で頭おかしいかもって思ってるって。
そのときの達哉は、最高にかっこわるいけど、僕にとっては最高に愛しい思い出。
僕は笑って答えた。君が告白してから、僕は望んで恋人を名乗るようになったんだよって。
だから、達哉さえ僕を愛してくれるなら……こういうことがあっても仕方がないよねって……。
そしたら達哉、こっちに顔見せないで肩、震わせてた。
わびるくらいなら、泣き顔見せてくれてもいいのにな……
なんて、いじわるかな……?

ページをめくる。どのページにも、本当の自分を押し隠してファッションを披露する、最高にカッコイイ俺を演じるモデルたち。

ちらりと達哉を見る。さっきまでニヤニヤしながらバイク雑誌見てたくせに、僕の視線を感じると、真剣な表情に変わる。

「……なんだか似てるなー……」
「……ん?どうかしたか?」
「ほら、メンエクのモデルさんと達哉」
「そうだろうそうだろう。俺はいつだって最高にかっこいいからな」

いつから君はそうなったんだろう。
童貞だって泣いて告白した、あの日の君は、どこへいったんだろう。

   ◇ ◆ ◇

2月14日

僕の誕生日は恋人たちにとって、とても大切な日。
お互いの気持ちを確認しあうのにぴったりな、すてきな日。

……とっても覚えやすいし、忘れることもめったにない日……なんだけど……
僕、今年ばかりは忘れていたかった……かも……しれない。

ツンと鼻の奥を刺激するフレグランスで目覚める。
達哉には似合わないバラの香り。
ああ、また恋人たちにとって特別な日がやってきたんだとうんざりする。

「……おはよう、淳……」

昨晩はちゃんとパジャマを着て寝たくせに、いつの間にか裸になって隣で寝ている。その首にはいつの間に買ったのやら、金のネックレス。
たぶん成金趣味のつもりじゃなくて、ワイルドを演出してるんだと思う。

まるで大理石みたいに真っ白な歯をキラッキラに輝かせて最高のカリスマスマイルを浮かべる達哉。

達哉のまぶしい笑顔に目を細め、現実と向かい合おうとしたけど、やっぱりつらすぎた。
だんだん眠気を誘われて二度寝に入ろうとする振りをして、布団の中に潜り込んでいく。

どうしよう、どうしよう。また達哉の悪い癖が出てきたぞ。

心臓がバクバク高鳴っている。
それはもちろん、達哉が大好きだからというバクバクもあるけれど、
それよりも頭をしめているのは、今回も達哉に「これ以上カッコつけなくていいんだよ」と、注意できないまま特別な日が過ぎてしまうのか、という緊張感。

記念日がやってくると、僕の胃がキシキシ痛むんだ……。

「淳……淳……?」

あわてたように達哉の裸体が迫ってくる。
どうしよう、考える時間がほしいよ……。
せめて5分は待って欲しい。
達哉が僕を大好きなのはすごく伝わってくるし、
それが達哉流の大好きの伝え方だって言うのも知っている。
確かにどんなに大げさな愛の告白でも、
ドラマの俳優やモデルみたいにカッコイイ君がするんだから、
何の問題も無いかもしれない。

でも、でもなんだ……僕の前でカリスマであろうとする君は、
目も当てられないんだ!

心の中で叫んだって、当然達哉には届いていない。
その笑顔も誰がみたってうっとりするような笑顔だし、
白いシーツからのぞいた裸体だって引き締まっててかっこいい……
でもそんなに見せつけるようにわざわざシーツをめくらなくってもいいじゃない……!
大げさに前髪をかき上げながら……
斜め下からのぞき込むように見上げなくてもいいじゃない……!

「今日は特別な日だぜ?忘れたわけじゃないだろう?
 二度寝するにはもったいないくらいの……
 スペシャル・ハッピー・デイ……
 恋人たちがはちみつのように甘い言葉を滴らせ、
 お互いの気持ちを確かめ合うセイント・バレンタインズデー……
 そして、淳、おまえというウェヌスがこの地上に降り立った……
 記念すべきナインティーンス・モーニング……」

出たよ……まるでミッシェルのような横文字交じりのセリフ……
ヴィーナスと言わずにウェヌスと言ったあたりがこだわりなんだねきっと……!

「……そ、そうだっけ……」
「この世に淳という花がほほえみ生まれ咲いた日を思うと、
 俺は祝わずにはいれないんだ……
 ありがとう……純子……ありがとう明成……
 二人が愛し合った末に生まれたこの白薔薇を……
 俺は決してしおれさせたりはしない……」

人のお父さんお母さんを呼び捨てにしだしたよ!!
な、なるほどね……だからバラの香水まいてみたんだ……
僕が目覚めた時バラの香りにつつまれて、『これはなぁに?』とか聞いて欲しかったんだ……
きっと何日も頭の中で練り続けたそのセリフを言ってみたかったんだね!!
思わず胸にこみ上げるいろんな気持ちを押さえ込みながら布団の中で丸まった。
それにしても、布団の中にまで香水のキツイ香りでいっぱいで……。
まるで空回ってる今の達哉みたい……なんて思ったらやっぱり、失礼かも。
……でも耐え切れなくて軽くせきこむ。

「寒いのか淳……!?俺に任せてくれ……
 おまえを包み込む孤独をすべて溶かしきってやるぞ
 さぁ、来てくれ氷のように冷えきったおまえの体を、
 俺のアポロがあたためてみせるから……」

腕をこちらにさしのべる。その腕に沿うようにアポロの腕が……。

「こんなことに召還使うだなんて……SPの無駄な消費だよ……」

僕がもそもそ小声で言うと、布団をやさしく引きはがしてきた。

「顔を見せてくれよ……俺の白薔薇……
 見せてくれないなら……俺からいくぜ……」

だけどなぜか、僕の顔までシーツをめくりあげる前に動きを止めて、
額に手を当てて大げさにふるえた。

「そうか……もしかして……淳!なんてこった……
 積極的だな……誕生日プレゼントには朝一番、もぎたてフレッシュな俺の体をご所望か?
 いいとも……淳さえ望むなら……!!」

さすがに達哉の頭が心配になって来ちゃったよ……!

「だっだだだ、誰もそんなこと言ってやしないよ……」

あわてて近づいてくる達哉の裸体を押しのける。
さすがに無理強いはダメだとわかっているから、一歩引いてくれた。
あまり見ないようにしてたけど、達哉ってば上半身だけじゃなくて下半身も脱いでいた。
目を閉じて耐えしのぶ。まだグイグイやってくる達哉の胸板を押しのけながら言った。

「今日はまだ寒いし……風邪引くといけないから服は着た方がいいよ……」

達哉は、僕と恋人同士になってから記念日に関して、大事にし過ぎるくらい大事にしている。
……クリスマスの時も大変だったんだ。達哉がシャンパンタワーを用意して、きらびやかなスーツに身を包んで、僕にひざまづいてこういった。
「今年は特別なクリスマスツリーを用意したよ……
 俺たちが二人きりで祝う初めてのクリスマスだからな……!
 淳、美しいだろう?今宵は酒池肉林の宴に招待するよ……」

きっとクリスマスだから気分が盛り上がって
ちょっと行きすぎた演出をしてしまっただけだと思っていたけど、
あのあたりから達哉の記念日祝いの過剰演出が始まったのだと思う。

お正月……ぼくが初日の出を楽しみにしていたけれど、
うっかり寝過ごしてしまった朝、隣でいつの間にか全裸で寝ていた達哉のバックから
彼のペルソナ、輝ける太陽神のアポロにわざわざご出張願って、
黄金の裸体with初日の出を演出してくれた。

「淳の体をいたわらなかったばかりに申し訳ないことをした……
 お詫びに金色に輝く太陽神の肉体を捧げるよ……
 今年も俺は、淳のためになら全身全霊を捧げよう……」

その後、いかにこれからも僕を愛していくかの一年の目標を掲げられた後、ウォーミングアップとして僕は姫はじめを迎えた。

二度ともなると、三度目が来るのだろうなと予想はしていた。
今日は僕の誕生日で、バレンタインデー。
記念日に執着を持ちはじめた達哉にとって、二重の意味で大事な記念日だ。
以前の倍の過剰演出が待っているかもしれないと覚悟はしていた……。

「何かあったかいご飯つくろうか?
 ……その、体冷やしたらいけないからね……
 昨日のポタージュ、あたためようか?」

達哉にほほえみかけてベッドから出ようとしたとき、がっしりと腕を捕まれた。

「その必要はないぞ……淳……」

さわやかな笑顔に星をちりばめたようなキラキラの光を放ちながら
僕に差し出した小皿には、かわいらしく盛りつけられたクラッカーのオードブル。
少し熱したプチトマトとモッツァレラチーズに、サラミとふわふわのスクランブルエッグ。かぼちゃにクリーム……
昨日の夜、やたらキッチンでごそごそやってるなと思ったらこれだったのか……。

達哉はワイングラスをくゆらせているからなにが入っているのかと思えば、
漂う香りからローズヒップとハイビスカスの赤みのある紅茶の様子。
さすがに二十歳になるまではお酒は飲まないみたい。
ちなみにクリスマスのシャンパンは、こっそりシャンメリーだったりして。

あんまりに美味しそうなオードブルだったし、達哉がせっかくがんばって作ってくれた物なので、一つ手にして口に含む。
今回は思ったよりも常識の範囲内?と思いながら味わった。
ひんやり冷やされているから、あたたかい布団でにくるまれて
火照ってしまった体には丁度いい感じだった。

クラッカーのオードブルをいただくと、どこからともなく
達哉の飲んでいるものと同じ、ワイングラスに入った紅茶を
用意していただいたので、それもいただく。
確かにクラッカーじゃのどがかわいちゃうもんね。
朝一番、ベッドでいただくゴージャスなブレックファースト……
といったところかな?

「淳の小さくてかわいらしい口に似合う朝ご飯を用意したよ……
 なにもこんな大切な日に、その彫刻のように白く繊細な手を
 冷水でいじめることはない……
 淳の手がアカギレにでもなってみろ、俺は……自分を許せない……」

そういってうつむき、目を閉じてくちびるをかみしめる。

「このしなやかな腕に包丁を持たせて負担をかけることなんてないんだ……
 力仕事なら俺が全部やる……淳にしんどい思いなんかさせない……」

達哉はつかんでいた腕をそっと離し、僕の手の甲にうやうやしく口づけた。
……ここで僕が何よりもしんどいのは君の演出だよ、なんて言おうものなら気絶しかねないな。……どうしよう……。
ワイングラスの紅茶を飲みながら、ほぉっとため息をつく。

「……悩み事か……淳……」
「う、うん……まぁ、ね?」

達哉の目を見ちゃだめだ。達哉の目からは精神を支配するレーザービームが出ている。
うっかり目を合わせたりしたら最後、全て許してしまいたくなるから……。

ためらう僕を前にして、ついにしびれを切らした達哉が僕の体に覆い被さってきた。

「……こんな大事な日に、淳を煩わせるものはいったい何なんだ?
 ……教えてくれないか……淳……」
「や、やめてよ……達哉……こんな朝っぱらからなんて……」

いつもはこんなに聞き分けない盛りのワンコじゃないのに……。

「言えないことなら言わなくていい……俺が……忘れさせてやるから……」

近づく顔、ほほに当たる甘酸っぱい紅茶の香り……。
……そして、ついに目があってしまった。
あの細められた目蓋の下でうっすらと見える潤んだ栗色の瞳。
思わず心臓が爆発してしまいそうに高鳴った。
やっぱり達哉の目ってズルい……すごくキレイで、力強さを持っていて……。
太陽の光を浴びて、さらさらと落ちる栗色の髪がまるで……金の糸……。

「今日の淳は、プリンセスだからな……
 必要な家事はすべて俺がする。だから、ゆっくり考えるといい。
 どうしても俺が必要なら呼べ……」

顔を近づけて、そっとなめるように口を寄せ、僕の耳にそっとささやいた。
その時、ふっと気づいたのだ。それが達哉の素のやさしさなんだって。

「ぁ……た、達哉……」

ほら、こうやって僕はいつも達哉のやさしさに
あまえてしまいたくなるんだ!こんな関係よくない!
ちゃんとイヤなことはイヤって言わないと!

「どうした?淳……」

どうしていいかわからないうちに、僕は……達哉の体を突き飛ばしていた。
ショックを受けた顔で、達哉は呆然とベッドの中にいた。
僕はごまかすように立ち上がって、いそいそとスリッパをはいてクローゼットに向かって逃げる。
その途中、何かを蹴飛ばしてしまってあわてて確認した。

メンズエックス……特集、愛するプリンセスたちへ最高の一夜を……
バレンタインデー大攻略!思わずコルセットの紐がゆるんでしまう夜!
……最大の勝負の日、メンエク男子が今宵輝く!

「……も、もう……これ以上飾った達哉なんて見たくないよ……
 確かにこういうのも似合うかもね……とは言ったかもしれないけど……
 僕が……僕が好きな達哉は……」

なんだか悲しくて悔しくて、半分泣きそうなのをこらえて雑誌をつかみ、ゴミ箱に捨ててしまう。こんなの八つ当たりじゃないか……。
上手に自分の感情を表に出せないからってこんなこと……。

クローゼットの中には当然のように見たこともないきれいなドレス。
いつもの服をつかもうとしてためらう。

でも、達哉は全部僕のために用意してくれたし……
達哉は、僕のために祝おうとしてくれている……

僕が手に取ったのは、肌の色が透けて見える薄手のシュミーズ。

肌をさらけ出しあい、お互いの弱い部分にふれて
快楽をむさぼり合う行為は、何のためにするのか?
と聞かれるとすごく難しいことだと思う。
男女だったらばちゃんと生殖行為としての意味合いがある。
だけど僕たちのそれはただ快楽の為なのか……おふざけなのか?
それとも……心から相手を求めてやまないからなのか?

クローゼットのドアにシュミーズのかかったハンガーをかけて、
ちらりと後ろを振り返る。
ただ、達哉のどこか悲しげな視線が言う。
僕の体が抱きたくてこんなことしているわけじゃないって。
パジャマのボタンをはずして、肩をから脱いでいく。
達哉の目が釘付けになっているのが少し恥ずかしいけれど……。

冷たい空気が肌に触れて胸のあたりの肌がキュウっと縮まる。
触れられてもいないのに、ちょっぴりこそばゆい。
ズボンを脱いで、下着も脱いだあと、胸に手を当てて、少し体を達哉の方に傾けてほほえんでみせる。
達哉の口がポカーンとあいている。
夢中な視線が肌をなめるよう。

僕だって知っている。達哉はものすごく不器用なこと……。
だから僕を喜ばせようとして、こんなに空回りしちゃうこと……。

着替えている間も、達哉の視線を感じたけれど無視した。
今日は、今日こそは達哉に何とか言わないと……
もう、仮面を被った君を見るのがイヤなんだって……
でも、そんなことを言ったりしたら、達哉がショックを受けてしまうんじゃないかって……
だって、達哉は仮面をかぶった姿を僕が好きだと思っているから。

三年間、セブンスのカリスマとして生きてきた達哉はきっと、
こういう生き方しかできなくなっているんだろう。
それは噂のこわさから来るものかもしれない……

達哉は知らない間に噂に流されて、
よくわからないままにカリスマを演じるようになったのかもしれない。
カリスマという役割から外れることを無意識に恐怖して生きてきたのかも……
この珠閒瑠を支配するルール、それが達哉をがんじがらめに……しているのかも。

だとしたら、それは……全部、僕のせいだ。
僕が……ニャルラトホテプの手なんか握っちゃったから……。

達哉を苦しめているのは僕なんだ。

シュミーズの上に黒い革製のコルセットをつける。
どこで購入したのか、けっこういいものみたい。
革がやわらかいから体にフィットするし、締めてもあまり疲れないかもしれない。
僕が喜ぶとでも思ったのかな……
……こんないい服用意されちゃったら喜ばないわけ……ないだろう?

その時、引き出したセーターの向こうにちらりと見えたのは懐かしい箱。
確かこの中には……
蓋を開けると中に入っていたのはレッドイーグルのお面と、
その下で眠るブラックファルコンのお面だった。

「ブラックファルコン……」

薄いプラスチックのとても軽いお面。目の部分はプツプツと小さな穴がいくつも開いていた。

ブラックファルコン、彼みたいに強くなりたい。ずっとずっと、そう思っていた。
この仮面をつけたら、まるで自分がブラックファルコンになったような気がして……うれしくて……
そんな時に達哉に声をかけられたのだ……。
僕がこわくて、思わずブラックファルコンだって名乗っても、
達哉はほほえみの声で言うんだ。俺、レッドイーグルって。
僕の悲しい妄想を笑いもせずに……受け止めてくれた。

「そうだ、とっても視界が狭くてさ、これを被ったまま遊ぶのって、大変だったよね」

そっと仮面を被ってみる。
とっても狭い視野。周りの暗闇がちょっぴり孤独。
でも、今でも感じる、心に炎がともったような、そんな感覚。

「……あ……」

小さく声を出しただけでビリビリと反響して震える薄いプラスチック。
あんまりに懐かしくて、なんだかうれしくて仮面の中でほほえんだ。
クローゼットの扉についている姿見に映った姿にびっくりする。
そこにはなんの感情も無くて、僕がいくら笑っても、その表情にはなんの変化が無い。
仮面だから当たり前なのだけど……。
あのころの自分たちはこの仮面の向こうの相手の感情を、
よく読みとれていたな……と思ったんだ。

達哉がじっと鏡越しに僕を見ている。

「久しぶりに見るな、そのお面」
「……う、うん……」

ちょっぴりうれしそうな顔。

達哉の表情が和らいでいた。
さっきまでみたいな気取った笑顔じゃなくって。
いそいそとパンツをはいて歩いてくる。
昔この仮面をかぶっていた時は、達哉と僕は同じ身長だった。
だけど十年たったら体格もずいぶん変わってしまって……。
後ろに立たれると、僕の頭の上から目がぞく。
もたれかかってみると、達哉は肩を両手で受け止めてくれた。

シュミーズのさわり心地が気になっちゃうのか、僕の肩に直接触れるとあわてて離れ、手を下げて腰のあたりを撫でてしまうと、あわてたように手がさまよった後……おそるおそる僕の体を抱きしめる。

「なんだよ。さっきとずいぶん様子が違うな」
「……達哉だって……」

そう言うと、達哉の顔が見る見る赤くなる。
……自覚は……あったのかな?自分がカッコつけてる自覚。
達哉の体に身を持たせて、前に組んで僕に触れないようにしている手をそっと両手で包み込んだ。

「ややや、やめろって!」
「なにが?どうして?これ、君が僕に着せたかった服でしょう?」

そっとシュミーズをめくって胸を露出させると、達哉が暴れる。

「……っていうか、そのお面だよ……そこにしまってあったのか?」

箱を開けてレッドイーグルのお面を取り出し、達哉も同じようにかぶった。

「しかし……これかぶると……落ち着くよな……なんか……」

しばらく沈黙したまま、僕と達哉はきっと仮面越し、鏡に映った二人の姿を見ている。

「……ねぇ、でも、思ったより息苦しくてさ、視界も狭いね」
「……まぁな……」

まるで十年前の記憶とそのまま同じ。
一番大切で、一番しあわせだった思い出だけど、
そもそもの発端だったと思うと、責任で息苦しくなる。

そういえば仮面を被る時はいつも、背伸びしていたことを思い出す。
ブラックファルコンのお面をかぶっていたとき、
僕はみんなより幸せで、パパからもママからも愛される僕を演じていた。

パパに買ってもらったんだ、と天体望遠鏡を自慢して、
パパが教えてくれたんだ、と得意げに星の観察をみんなに教えて。
たくさんパパがカッコイイ姿を空想して自慢して……。

でも、みんな、本当は僕が愛されていない子だってわかっていたのかも。
ままごとをするとき僕は、いつも一人ぼっちだった。
甘えん坊の赤ちゃん。
彼らには僕がそう見えていたのかもしれない。

赤ちゃん役の僕は動けない。誰かがそばにいてほしくても泣き声しかあげられない。
でも、泣き声をあげるなんて7歳の僕には当然そんな恥ずかしいことできない。

でも、赤ちゃんは甘えないと、パパからも……
ママからも愛されない……

僕は、おままごとが嫌いだった。

パパとママ、ご近所のお兄ちゃんお姉ちゃん、みんなが自由に動いているのを見てるだけ。
ぼくは本当は誰からも愛されてやしない。
暗い目でみんなの演技を見ているだけ。

仮面の下で仲間はずれにされた気持ちでいっぱいになって泣きそうになったころ、
達哉がやってきて僕を抱きしめてくれたんだ。

『おーよしよし、ミルクの時間でちゅかー?』

リサに怒られちゃうから、恥ずかしいけど僕は言う。

『バ……バブゥ……』

仮面の向こうで達哉がブッと噴出した。

『いいんだぜ?むりして赤ちゃんしなくたって……』

達哉の体はあったかい。
達哉は、こうして自然に僕を守ってくれる。
レッドイーグルの仮面がとてもよく似合う……ヒーローだ。

『ほんとうはイヤか?』

達哉は、僕の意志を尊重してくれる。

『……う、うん……』

小さな声で息苦しい仮面の下、そっと達哉に助けを求める。

『わかった!』

小さく答える達哉。
僕はなぜか、そのときの達哉の笑顔が見えた気がしたんだ。

『なぁ、お母さん!みろよ!ジュンがたったぞー!』
『えっ本当?』

リサがあわてて駆け寄った。
みんなが集まってきた。
僕を寂しさから救ってくれたのは……

いつも達哉だった。

フラッシュバックする過去。
ジョーカーとしてかたくなになっていた僕を、その刀で切り捨ててくれた……達哉……。
達哉はいつだって僕のヒーローなんだ。

仮面の暗闇の下、そんな過去の幻を見たような気がして。

「……淳、もしかしてさ」

達哉は黙って、後ろから抱きしめた。
遠慮はもう消えて、ただしっかりと僕の体を抱きしめてくれた。

「今、泣いてたりする?」
「……え?」
「そういやちっちゃいころから得意だったもんな、バレないように泣くこと」

僕は達哉の腕の中でそっと向きを変えて、達哉の首に腕を伸ばす。

「ごまかそうとすんなって……俺にはバレバレだから……」

フスッと自慢げな鼻息が仮面の向こうから聞こえてくる。
達哉の努力がうれしくないわけが無いし、一生懸命な達哉が好きだ。
だけど、僕はやっぱり……

「達哉、僕ね、仮面をつけてる達哉より、素顔の君が好きだな……」
「そっか……だからか……」

達哉はいつだって素顔だった。
仮面の向こうでも泣いたり怒ったり笑ったり、そんな気持ちが伝わってきた。
それはレッドイーグルの仮面を被っていたって、それが達哉だったからなんだ。

「俺さ、十年間でめちゃくちゃ不器用になったかもしれない」

仮面の向こうからでも伝わる、熱い視線。

「前みたいにすんなり淳のこと好きって言えなくてさ……
 淳にカッコイイって思ってもらうことのほうが大事になってたかも」

初めて達哉に僕が女装もすることを告白して見せたとき、達哉ってばしどろもどろになって、とってもかわいかった。

「だってさ、俺、どうすりゃ淳に喜んでもらえるのか……
 ずっとそばにいるって……いつまで言ってもらえるのか不安になってさ……」

でもすごく喜んでいたから、また女装しようか?ってたずねると、なぜか首を横に振って、もういいって言う。

「なんか、淳って本当にきれいでさ……
 ふつうの俺なんかじゃつりあわないんじゃないかって怖くなるんだ」
「だから、精一杯、セブンスの誰もが噂するカリスマ、周防達哉の姿で僕に接しようとした?」
「……そういう賢いとことかも全部さ」

なんて自信がないんだろう。仮面を脱ぎ捨てた達哉は。

「前よりわかんないんだ。淳のことが……」

声が震えている。口づけをしたくても、その目を見たくても、今は仮面が邪魔してる。
でもきっと、仮面を脱がしたら達哉、素直に泣けなくなるから……。

プラスチックの仮面のくちびるが触れあう。

「勇気出してみたんだ、今日こそはって……」

恋人という言葉が達哉を縛り付けるんだ。その関係はある意味、友人よりも難しい。

同棲をはじめてから、ずっとずっといっしょだし、無言の時間だって必要で……。
相手の機嫌はいつだって良いとも限らないし、
ちょっとのことでケンカをすることだってあるだろうし。

器用なところも不器用なところもなにもかもさらけ出して、
そんな姿にいつかは呆れられてしまうんじゃないか。

十年経った達哉は、心に大きな傷を負った達哉。
あの頃のキラキラは失われて、他人の目を気にしてばかりで……
どうすればカッコよくあれるかも自分ではわかんなくて……
せっかくの魅力が全て麻痺していて。

「……かわいいよ……達哉……」

触れ合う胸、通じあう鼓動。

「僕、やっぱり達哉が好き」

カリスマでもなくて、戦闘で強さを振るう君でもなくて……。

「恋人にしてくれて、ありがとう……」

達哉の体が震えてる。

「……僕が君から離れるわけないよ……
 だって達哉、こんなに魅力的だもの……」

達哉が甘えるように僕の首筋に頭を寄せた。

「僕、全部見てきた。君が弱いところも、強いところも……
 でも、一度だって君から離れようなんて思ったことなかったもの……」

達哉の手が、そっと腰に回り、お尻にそうように手を乗せる。

「二人きりの時、いっぱい弱い姿、見せても良いよ……
 そのかわり、外ではたくさんカッコイイ達哉を見せて?」

君が望む答え。それは僕の望むことでもある。

「……わかった。淳の前では、全部さらけだせるようになる」

達哉は自分で気づいてないんだ。飾らない達哉の方が数百倍かっこいいことに。
周りの評価に振り回されてばかりの達哉はなんだか虚ろで滑稽で……
本人が気づいてないなんてまるで裸の王様みたいで悲しい。

「そ、肩肘はってばかりじゃ、しんどいだろ?」
「ま、まぁな。皆のあこがれセブンスのカリスマで
 いつづけるってのは、アポロを召還するより精神削るよ……」

その言葉を聞いて僕は思わず笑ってしまった。

「ふふふっ……わ、笑って……ゴメン……。
 でも皆どうしてそんなカリスマ像にしがみつくのかな……」

皆が本当に見ていたカリスマ達哉は子どもの頃の達哉そのものだったんだろうけど、
いつの間にか皆のあこがれ像がごちゃ混ぜになって
得体の知れないカリスマになっていたのかもしれない。

……そう、たとえば……
メンズエックスを見ている達哉を本屋さんで目撃したから……とか。

「そ、そんなにマズかったのか?俺の演出……」

達哉はレッドイーグルの面をはずす。

「マズいもマズい。激マズだったよ!」

僕も仮面をはずす。
笑ってはいけないとわかっていても、
ショックを受けた達哉を見ると、かわいらしくて愛おしくて……。

「あのね、僕は男じゃないか。
 だからあんな雑誌に載ってるような方法じゃ喜ばないよ」

達哉の表情が固まった。

「あと、達哉って雑誌選びのセンスが悪いよね」
「……っぐ……メンズエックスはだめか……」
「ダメかどうかって……聞かれたら……ねぇ?
 アレは……おもしろ雑誌だろ……?」

あの雑誌は確かに役に立つんだけど、
大げさすぎるキャッチフレーズがネタとして有名で、
ちょっとふつうのファッション誌とは違う楽しみ方をする雑誌だし。

「……この間ほら、淳が……メンズエックス買ってただろ?
 淳の好みってこんな感じなのかなー……と思って」
「あはは!で、わざわざ記念日にだけメンズエックスっぽく振る舞ってたの?」

どうすれば僕が喜ぶかわからないから……
ささいな仕草からみつけようとしてくれたんだ……

「じゅ、淳にしてはえらく攻めたファッション誌見てるなーとか思ってたからさ……」
「確かに僕の趣味じゃないね」

ふふっと笑うと、達哉の表情も和らいだけれど、少しだけ不安そう。

「この後、達哉はどういうプラン組んでたの?」
「プレゼント……渡したかった」

恥ずかしそうにまだ起きたばかりでクセが残る頭をポリポリかきながら言う。

「もう思い出すのも恥ずかしいくらい?」

僕の意地悪に、達哉の顔がみるみる赤くなっていく。

「ああ……だが、おまえの誕生日を祝わないわけがないだろう!」

拳を握りしめて、僕の体をゆうゆうと持ち上げてみせる。

「わっあ……!!」

向かう場所は思った通りのベッド。
最初から最後まで僕にプリンセスでいてもらうための計画だったみたいだからね……。

「ぼ、僕まだドレス着てないよ!」
「俺も着飾らなくったって淳が好きなんだ!
 ……でも、ま、たまにはその……着飾ってくれるとうれしいけど……」

ちらちらと体が揺れるたびに見える乳首に視線が釘付けだった。

「……スケベ……」
「こ、こんな格好してる淳みたら誰だってスケベになるさ!」

ベッドにおろされると、シュミーズの生地から透けて見える肌色に見入るように、体を愛撫される。

「これ選んでよかった……」

愛しげに、シュミーズで着飾った僕ごと愛してくれる。
冷たい生地越しに、達哉の体温の高い手を感じる。

「……っふふ……欲望むき出しの達哉も……悪くないよ?」
「か、からかうな!」
「人が女装するようにし向けといて何をいまさら?」
「……もっもう平気だと思ってたんだよ!!
 女装した淳見ると俺……き、キレイすぎて……気が引けるからさ……」

珍しいな、今日は僕の方がよっぽど余裕があって、自分が考えてた計画に真っ赤になってる達哉を見ている。

「あ、あんまり笑うなよ……」

シュミーズの裾をめくりあげ、あらわになった太股、
そして、僕の敏感になった性器を見ると、達哉ののどぼとけが上下した。
目が合うと、真剣な目を細めていく。
少し貪欲な感じの……僕の好きな……達哉の目。
すごく、セクシーだと思う。

「……僕の裸なんて……毎日見てるのに、飽きないの?」
「……飽きるかよ……芸術品ってのはな、
 何度見たって新しい発見をくれるもんなんだよ……」
「ふふっ……絵、ヘタクソなくせに……」

僕がころころ笑うと達哉は顔を真っ赤にして反撃した。

「あ、アリが描ける!」
「あっははは!僕だってアリくらい描けるよ」
「……じゃ、じゃあ今度勝負しようぜ……」
「……ふふっ……いいよ……僕、勝つ自信あるけど……」

達哉の顔がすごく赤い。湯気がでてきそうなくらい。
もぞもぞしながら達哉はまた僕の下半身に夢中になっていく。
熱い視線に下半身が思わずキュンっとしてしまう。
達哉は僕の何もかもが好きだと言ってくれる。

学校の体育で走っていると心配されるほど細い足だって、
達哉から見れば大理石のようになめらかなお姫様の足なんだって。
内股にツッと舌をはわされて、突然走る快楽にビクンっと反応してしまう。

「すごい……淳……やらしいにおいしてる……」
「……はー……はー……」

だって、達哉があんまり見つめたり、さすったり……かわいい反応したりするから……
恥ずかしいけど、はやく欲しくて……そっと脚を開く。
股間を指でスゥっとなぞり、すぼみの入り口に人差し指でツンツンと触れられた。

「ふあぁ……やっ……」
「すごくひくついてるし、さっきからガマン汁とまんないぞ……淳?」

そっと手をくちびるに寄せて、指の側面をくわえた。
恥ずかしくて頭がボーっとする……指の先でツツっといたずらになぞられたら……体中がピリピリしびれる……。

「いっぱい、気持ちよくするからな?」

達哉の大きな体が僕の体を覆う。
シュミーズの肩紐を外されて、僕の流した汁でとろとろになった指で乳首をキュッとつまんだ。

「……あはっ……はぁ……っ……き、君の体がプレゼント……
 だなんて……気に食わないけど」

そう言ってくすっとほほえむと、達哉は首を横に振る。

「そんな訳ないだろう?淳が好きなもの、ちゃんと用意してるからさ……」
「……わかってるよ……楽しみにしてるから……」

ベッドサイドに置いてあった小さな箱を開けて、
一口サイズのハート型のチョコレートを咥えて達哉が迫ってきた。
少し恥ずかしそうに目を細めて……。

やってきた達哉の首に腕を回して、
ぼくの口にチョコを運びやすいように首を傾けて親鳥を迎え入れる。
甘くてすべすべのチョコレートが、コロンっと口の中に入る。

あっと言う間にまろやかに口の中に溶けていくミルクチョコレート。
甘さはそのまろやかさに溶けこんで、決して甘すぎない。
おいしくてほっぺたが落ちてしまいそう。
うれしそうに達哉がほほえんでる。
僕ってもしかして今、最高に幸せそうな顔……してたりして?

やだな……僕、この程度で満足するくらい安い人間じゃないからね……

「ハッピーバースデー淳。そして、ハッピーバレンタイン」
「ありがとう、達哉……愛してる」

僕の方から先制攻撃。達哉の首を抱きしめて、口づけ。
困惑した表情で口の周りについたチョコをなめとった。

「……君、甘いもの苦手だったんだっけ?」
「……もしかして、知っててやったな?」

達哉は片手で自分の下着を脱ぎながら、僕の体に覆い被さる。
ねだるように口を開けると、達哉はベッドサイドからまた一つ、
一口サイズのチョコを指で持ち、わざわざ口に咥えてから僕に与えてくれた。

「……媚薬入り……とかじゃないよね?」

達哉の体温、口の中で転がり溶けていくチョコレート。
僕が口づけると、少しイヤそうな顔をしながら人差し指で口を拭い、
僕に指を吸わせた。

「……っちゅ……んっ……」

ぼやけた視界の向こうで、むくむくと達哉の性器が持ち上がっていくのが見えた。

「達哉って本当にエッチなんだ……
 こんな指をちゅってされるだけで……こんなになって……」
「……淳だってそうだろう?俺の指、いつまでしゃぶってんだよ……」

ちゅぽんっ……
唾液の水滴が宙を舞う。

「あっ……ぅっ……」

達哉の体が覆いかぶさってきて、お互いの勃起したものをこすり合わせた。
思わず気持ちいいやら、少しムキになってごまかそうとしている
達哉がかわいくて、頭がぼぉっとしている状態だけどほほえんだ。
達哉を見つめながら、乳首をいじって、人差し指と中指の腹で広げてじっと見つめた。

「……っは……あはっ……ほら、達哉の大好きな僕のおっぱい……」
「なっ……こら……さ、先にイかす気……だな……?」
「……ぁあっ……かたくなってドクドク……してる……」

僕なりに精一杯、色っぽい声を出すと、達哉の性器はいちいち反応してくれるから、かわいい。
夢中で弾力ある性器をこすりあっていくうちに……
ねちっこい音を立てはじめた。

「すごい……音……たつっや……もらし……すぎだよぉ……」
「これ、淳から出てる……からな……?」
「ひっあ……違うよ……達哉がこんな……濡らしてるんで……しょ?」

目の前がかすんでいく。気持ちよくてゆるんだ口の中にまた、チョコレートを放り込まれてしまう。

「んっ……もっ……こんな時に……チョコ……だめ……!!」

達哉が指についた溶けたチョコレートをくるりと乳首に塗り付ける。

「ふぅぁっ……あっ……!」

恋人になってからいっぱいいじられてしまって、
今ではすっかり敏感になってしまった乳首にぴりぴりと甘い快楽が走る。
達哉の舌が力強く乳輪をなぞるようになめとった。

「ふ、ふだん……チョコなんて……食べないくせにっ!」
「今日は特別な……日だから……な……?
 淳の好きなもの……いっしょに……味わう……から……」

体がしびれていて、もう言うことを聞かない。
反射的に背をのけぞらせ、性器の裏筋を激しく突き上げられて……
ベッドで激しく動くたび、コルセットを締めあげていた紐もゆるんでしまい、シュミーズも激しく乱れて……
親指の腹で乳首……こねられて……
達哉、僕のこと……すごく、うっとりと……見つめてて……

「そんな……っあ……ズルいよ……達哉ばっかり……いじってぇ……!」
「……今日……はっ……淳が、先に……気持ち……っよく……なんなきゃ……」

悔しいけれど、達哉の筋肉質なおなかに精液をかけてしまう。

「うぅあ………あぁああああっ!」
「そんな……気持ちよかった……?」

そっとほほを拭われる。

「大好きなチョコ……味わえないくらい……」

達哉が意地悪くほほえんでる……

「もったいない……このチョコ高かったんだぞ?
 しっかり味わってくれよ……」
「……バカ……僕ばっかり……恥ずかしいだけじゃない……」

チョコレートで塗れた手で僕の胸に触れ、乳首をこね、きゅうっと持ち上げる。

「ひど……胸……ばっかで……ぅうう……」

脚で達哉の体を退けようとしても上手にふさがれて、
達哉の熱を持った舌が胸をなめるのを制止できない。

「いっぱいもんでたら……大きくなるかな……?」
「僕……女の子じゃないってばぁ!!」

そう言って押し退けると潤んだ目をして、
手に着いたチョコレートをうっとりなめている達哉と目が合ってしまった。

「知ってる……女にはこんなの……ついてないし……」

達哉の大きな手が、僕のものをつかむと、上下にしごきだした。
さっきイっちゃったばかりで敏感になっている僕の体を
下半身からビリビリ上ってくる快楽が責め立てる。

「ひっ……うぁ……!!やめっ!!」

いっぱい二人の精液でぬれた性器がくっちゅくっちゅといやらしい音を立てる。

「ひぃん……ひっ……っ……!!」

達哉の手と僕の性器の間に、どんどん精液が流れ込み、
ひどい音が大きくなっていく。
二度目の射精で、ものすごい体のだるさと情けなさと恥ずかしさがやってくる。

「や……だぁ……もっ……たつや……ひどすぎ……」

達哉はすっかり乱れて泣き出した僕を見て、顔を真っ赤にした。
あわててまた視線を下半身にうつす。

「これだけ濡れたら……大丈夫かな……」

広げた人差し指と中指の間に、ねっとりとした白濁が糸を引いた。
恥ずかしくて頭がおかしくなっちゃいそう……。

「……ご、ごめん……淳がかわいくて……夢中になっちゃった……」
「……ばかぁ……きょ……ぼくの……たんじょ……びなの……にっ……」

達哉は恥ずかしがる僕にとどめを刺すように、
ねちょねちょになった指を後ろの穴に挿入した。

「はっあ……あ……」

でも、ようやく待っていた通りの快楽がやってきて少し気持ちがおちついた。
広げられると、外のひんやりした空気が入って恥ずかしくなる。

「淳……すごい……ここ……パクパクしてるぜ……
 ごめん、よっぽど待たせちまったんだな……」
「バカァ!達哉の……バカァ……」

しかし、ゆっくりと熱くてしっかりと僕の体を埋めていく、
それでも体の中に押し入る達哉の性器を感じると、
頭がしあわせでいっぱいになる。
このおなかの痛みも……体を広げる異物感も……
全部全部……達哉が確かに与えてくれる感触……。

「……ふあ……あっ……」

あんまりの気持ちよさに開いたままの口から、
とろとろとチョコレートまじりの唾液が流れていく。
まるで子どもみたい……
でも、体が達哉でいっぱいで……言うこと聞かなくて……

「……ヘンタ……イ……」

僕の悪態をものともせずに、達哉は僕の口の端からこぼれ落ちる
チョコレートをすすり、大きく口を開けてふさいできた。
なめとるようにくちびるを動かし、わざとジュルジュルすすってみたり、
くちびるのてっぺんで、ちゅぽんっと音を立てた。

「んひっ……やっ……ひどい……よ……」

やっていること全部が普段よりエロティックで……

「じゅ……ん……じゅん……ぜんぶ……ぜんぶすき……だ……」

達哉ももう頭がまわってないな……
軽く腰を持ち上げて、ひたすらに腰をふりはじめる。
目は少しうつろ。もう僕を感じるだけで精一杯……。
僕の口周りをなめながら。
夢中になりすぎて抜けたりしないように、僕も達哉の腰に脚を回してしがみつく。
僕のお尻の間を通って精液がこぼれ落ちていく。

「……うん……わかって……るよ……たつや……ふぅっ……!!」

のしかかってくる達哉の体重。仕方ないな、と抱きしめる。

   ◇ ◆ ◇

すっかり僕がかき乱した栗色の髪はゴワゴワで、
口の周りはまだチョコがまだ、少しだけついてる。
まだ余韻が残っているのか、視線も虚ろで、ぼんやりした表情。
お互い精液でベトベトのままの体で抱きしめ合う。

「……俺……やっぱりカッコ悪いよな……」
「……うん……カッコ悪いね……」

不安そうに達哉がため息をつく。

「やっぱり……雑誌通りにはいかないよな……」

やさしく手の甲で汗で張り付いた髪を払ってくれた。
達哉の肩にはよく見たら、僕が爪を立てた痕。
夢中すぎてよくわかんなかったけど……、
相当ひどいことしちゃったかも……。

「むしろ、その……セ、セックスの時はさ……むきだしになっちゃうよ……ね……?」

まだ、達哉にいじられた乳首がジンジンしてる。
そっと指で触れただけで、ピリッとしびれたみたい。

「はぁ……僕だってその……かっこわるいところ見せてる……し……」

僕、復讐が終われば、ふつうに女の子を好きになって、
ふつうに学生として生活していくつもりだったのに、
今こうしてそばにいるのは……雨に濡れた野良犬みたいに
情けない顔してクンクン泣いてる、恋人……。

「……ね、達哉……僕、かっこわるい……かな?」

達哉は首を横に振る。
胸が気になって触る手を、そっと握られる。

「それどころか、最高にかわいい」

そう断言して僕をぎゅうっと力強く抱きしめた。

「うん……僕も今、達哉が最高にかわいいよ……」

きっとすごく顔を真っ赤にしてるんだ……。
僕みたいな小さな胸に顔を埋めちゃってさ……。
達哉だったらきっと、女の子選びたい放題なのにね……。

「よしよし……よくがんばったね……僕、たっぷり満足したよ……」
「……そりゃよかった……これくらいしか俺にはできないからな……」

グチャグチャにしてしまった彼の頭を撫でて直す。

「そんなことないよ、君がそばにいてくれるだけで僕、どれだけうれしいか……」
「それは俺のセリフだな……」
「あ、こら、セリフ泥棒!」

二人でじゃれあい、こそばしあったりして笑い転げる。
その時、サイドテーブルに置いていた達哉の携帯がバイブした。

「っは!」

達哉は顔を上げて携帯をつかんで時間を確認する。

「やばい!皆を待たせすぎた!!」
「っへ?」
「か、貸し切りにしたんだよ……がってん寿司……
 淳、落ち着けるかなって……」

あわてて時計を見上げる。

「ど、どれくらい遅刻してる!?」
「さ、三十分くらい……かな……」

達哉は真っ青な顔をしながら飛び起きた。
僕もあわてていっしょにベッドから飛び起きる。

「と、とりあえず風呂に入ろう」

あわてた達哉が僕をお姫様だっこしたまま風呂場へと向かう。

「お、落ち着いて達哉……僕、歩けるから……!!」

僕といっしょになってから、
カリスマと言われた周防達哉はすっかりなりを潜めた気がします。

「げ、現実逃避してお風呂で第二ラウンドはだめだよ……たつ……やぁ……」

でも、それと同じくらい……
ジョーカーとして君を憎んでいた僕は、どこかに消えてしまった気がします。

「も、もういい……淳……好きだ……カッコ悪い俺を全部受け止めてくれ……!!」
「バカァ……もう……ぼくの……たんじょうび……なのにぃ……」
「淳……じゅん……じゅんぅうう……」

でも、仮面を脱ぎ捨てた今がしあわせ。
こうして……達哉といっしょにいられる一年がまた、始まるんだ。

END

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大幸妄太郎

Author:大幸妄太郎
ペル2(達淳)・ドリフターズ(とよいち)に
メロメロ多幸症の妄太郎です。女装・SMが好き。
ハッピーエンド主義者。
サークル名:ニューロフォリア
通販ページ:http://www.chalema.com/book/newrophoria/
メール:mohtaro_2ew6phoria★hotmail.co.jp
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