ニューロフォリア はなればなれのまるべりー【サンプル】
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はなればなれのまるべりー【サンプル】

ARCANA Wars新刊 D19にてお待ちしております!!

はなればなれのまるべりー
【子達淳R-18/A5/P80/700円】


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あかいうそ あおいうそ きいろいうそ
ぜんぶまぜたら どどめいろ
おめんをかぶって いつわって
はじめておぼえた まるべりーのあじ
どどめいろのやみが むかえにきたよ

はなればなれの まるべりー
淳、お留守番よろしくね?いつもひとりぼっちにさせちゃうけれど、さみしくはない?」
 ママはやさしくほほえみながら、淳のほほにくちづけた。
「ママ、ボクもう子どもじゃない!さみしくないよ!テレビのおしごとがんばってね!」
 うそつき、うそつき、本当はさみしくて仕方がないくせに……、ママ、ママ、テレビのママはボクにはほほえんでくれないでしょう?そのえがおはいつも、だれかしらない人に送られていること、ボク、知ってるんだ。

「父さんはこれから友達に会いに行かなきゃいけないんだ」
 フィールドワーク用の大きなかばん。かばんが大きければ大きいほど、パパがかえってくる時間はおそくなる。
「いってらっしゃい!ボク、本をよんでまってるよ!」
 そういえばパパがよろこぶと知ってるから。
「そうか、淳はいい子だね」
 そういえばパパがほめてくれるから。本は大好き。でもパパはもっと好き。いかないで、いかないで、いかないで……誰もいないまっくらな家はこわいよ。
「うん!はやくかえってきてね……」
 パパにだけはほんのすこしの真実。だってパパは、ボクを愛してくれるから。
「……なるべく早く帰るよ……」
 うそつき、うそつき、うそつき。パパはとってもやさしいうそつきだ。ボクを愛してるからだまそうとするんだ。
『淳へ 今日もパパは学校に行ってきます。お祭りいっしょに行けなくてごめんなさい。お金をおいておきます。友達といっしょに遊んできなさい』
「……パパひどいよ、しってるくせに……」
 ボクに友達がいないこと、知ってるくせに……。

 ボクの膝には青あざひとつ。足を引っかけられて転ばされた。
 ボクを転ばせた男子は先生にうそをつく。
「オレやってませーん。橿原がかってにころびましたー!」

 うそがいっぱい。うそがいっぱい。
 いろんな色のうそが混ざりあって どどめ色。
 どこか黒になりきれない、血の赤。
 うその色はなんだか不気味で気持ち悪い。

 まるべりー まるべりー
 ボクといっしょに死んでください。
 ティスベを追って死んだピュラモスのように。
 うそまみれのボクを命がけで愛してくれる人、
 今もずっと探してる。

 ◇ ◆ ◇

「……キミは弱い人をたすけたりするの?」
 淳はほんの少しだけ胸をときめかせながら言う。きっとこの子の周囲はいつも笑顔であふれているんだろう。かやの外でいつもうらやましいなと横目で見ていた、クラスの人気者のように。
「おう!オレ、ヒーローだからな!」
 そして、爆発を背景にポーズを決めるレッドを想像しながらポーズを決めた。
「弱いものいじめはゆるさん!」
 その答えを期待していたはずなのに、そう即答したレッドになぜか、少し複雑な気持ちになった。
「ほんもののレッドイーグルみたいに、たくさんたくさん?」
「おう!全員たすける!」
 レッドの目は、キラキラ輝く。テレビで見たフェザーマンの活躍を思い出したのだ。
「……遠くの人でも?」
「おう!」
 淳は小さな声で、うそつき……とつぶやいた。
 その瞬間、自分がなにを悲しいと思っているのか全てつながった。レッドはこうは言うけれど、今まで淳を助けてくれる人は誰もいなかったから。このレッドは、いつも寂しい思いをしていた淳に今日という日まで気づかなかったから……。
「……ヒーローなんていないよ……」
 淳は小さくつぶやいた。
 学校が別で遠く離れているから仕方がない?今日初めて会ったのだから仕方ない?本当に弱くて困ってて、誰も味方がいなくて……いつも悲しい思いでいっぱいの淳にどうしてヒーローは気づいてくれないのだろう。このお祭りの時間が終わったら、彼はもう淳のことを忘れてしまうだろう。遠く離れたところにいる人を助けるなんてそんなこと、誰にもできやしないもの。
「ね、じゃあ……」
 そこまで言って、いじわるな気持ちに気づいて口をつむぐ。
『じゃあ、このお祭りがおわっても、ボクをたすけてくれるの?』
 でもその言葉の裏には淳の純粋な『助けて』がこめられていた。
助けてくれるの?なんて聞くだけ無駄なのに、なにをバカなことを考えてしまったんだろう。このレッドは、今日だけの友達なのに。
でもきっと、不可能だとわかっていても、この元気なレッドイーグルは『おう!』とこたえてくれるんだろう。
 そう思うと、その元気な『おう!』がききたくなったのだ。
 ……それは、一時のなぐさめにしかならない、小さなうそ。
 すぐどどめ色の闇にかき消えてしまう小さな弱い光。

 ◇ ◆ ◇

 今にもワアッと泣き出しそうな顔をする達哉を無視して、淳はトリュフを咥えると、そのままふわりと達哉を抱きしめて顔を近づけ、その口にくわえたトリュフを達哉の口に押し込んだ。
 ココアパウダーの苦い味。軽く咥えたはずなのに、すぐに溶けてだんだんと歯が食い込んでいく。唾液に流れ落ちたココアパウダーの下からはとろりととける甘いチョコ。泣きそうになっていた達哉も、よくわからないながらも片側から少しずつ舌でチョコをなめとっていく。お酒の匂いが、二人の思考をとろけさせた。
「ん……っふぅ……ん……ちゅ……」
 もう達哉が震えているのか、淳が震えているのかわからなかった。目の前で目を閉じて、体を寄せ合い、トリュフを溶かして、より近くに行こうと必死になった。頭に血が上って、なんだか目の前が真っ白で……ふわふわしている。
「あぅ……んむ……」
 淳は少しずつチョコに穴をうがっていく。達哉の舌の先端とふれあうと、達哉がビクっとふるえた。なんだかこわくなってきて、少しだけ体を下げようとしても、淳はギュっと達哉の手を握って放してくれない。
 とろけるチョコの甘さか、それともお互いの唾液の甘さなのか。それを確かめるように舌をからませ、うるんだ目で見つめあう。
「んまっ……う……じゅっ……」
「はぁ……っ……ちゅ……んっ……」
酸素が頭に回らない。視界がぼやけて苦しくて、死んでしまいそう。ついにおそるおそる、くちびるをどちらからともなく放す。
 そして、ほぼ同時に我慢していた呼吸をときはなった。
「けほっ……こほっ……」
「……こほっ」
 淳の開いたままのくちびるからトロトロとチョコまじりの唾液が垂れ落ちて、白いふとももを点々と汚した。達哉のほんのすこし日焼けしたふとももにも、点々とチョコが落ちる……。
 お互いになにをしたのかよく分からない様子でみつめあった。
「……チョコ、達哉と……たべる……」
 顔を真っ赤にして、ようやく瞳に正常な光を宿し、震えながら淳はそう言う。驚くほど、目の光は力強かった。
「……う、うん……オレ……も……淳と、食べたい……」
 もう一個トリュフを取り出して、遠慮がちに二人で歯で半分こに割ってみたけど、さっきの刺激がほしくて、次のトリュフもまたくわえたまま、ふたりの舌で溶かしていく。

 ◇ ◆ ◇


「オレ、淳の友達だろ?今、見てるのオレだけだろ?淳の顔知ってるのだって……だから……お面……とろうよ」
 達哉の体は少しのしかかってくるように重い。でも、その重さが淳のかたくなにこわばった体をゆるめていく。
「……ひっ……ひっ……」
 泣くのをこらえていたのに、達哉のやさしさのせいで涙が止まらなくなっていく。
「……お面、とるぞ?」
 そのブラックファルコンのお面の下からあらわれたのは、目を閉じて歯を食いしばり、汗と涙でぐしょぐしょにぬれた顔だった。達哉はその顔を見た時、はじめてみた泣き顔みたいに、綺麗だとは思わなかった。でもその顔は、とてもかっこいいと思った。
 達哉は顔を真っ赤にしながら、はずかしそうにポケットに手をつっこみ、ハンカチを取り出して淳の顔を拭いてくれた。
「淳がさ、いっつもハンカチちゃんと持ってきてるのスゲーなって思って……マネしてみたんだ!」
 イヒヒヒヒッと達哉が笑う。
「オレ、淳がすごいのいっぱい知ってる。ものしりだし、オレとちがってずーっと大人だし……」
「……ぼ、ボク……かけっこおそいもん!達哉みたいにケンカ
強くないもん!」
 ンーッとうなりながら達哉を押し退けようとしてもほら、力じゃぜんぜんかなわない。
「なぁ、オレも知りたい。淳がどうして悲しそうなのか……オレも淳を助けたい……いっしょに戦うんじゃだめか?せっかく
……おんなじフェザーマンなのに……」
 淳の手からブラックファルコンのお面がカラン……と音を立てて落ちた。
「……淳な、ウソついてるってバレてるぞ」
 淳の体がまたこわばった。
「それでいいってオレ、決めた。知られたくないことってあるもんな……オレだってある。リサだって栄吉だって……だからこわくてお面……とれないんだよな……」
 達哉は、淳の体にすりつくようにして抱きしめる力を強くする。
「二人のときはな、淳がしたくない話、しないってちかうよ。だから、淳がいやな顔したらわかるようにお面をとって」

 ◇ ◆ ◇

「……そんなことない!達哉のこと大事じゃなかったら……毎日おむかえにきてくれたりしないし、こんな立派な時計をくれたりしないよ?」
 そういって淳は愛おしそうに腕時計に手を添えた。達哉は少しだけ悲しそうな顔をする。
「……まだ淳にも言ってなかったよなー。兄ちゃん超賢いんだ!お菓子だってつくれるし、女子からモテモテだし……オレなんかよりよっぽどヒーローなんだ……」
 こっそりと淳に耳打ちをする。本当は兄ちゃんほめるのいやなんだ、と。淳は思わず笑ってしまった。
「オレな、家にいなくても兄ちゃんがきっと、オレの分も父ちゃんの分も、母ちゃん守ってくれるから、いなくてもいいんだ」
 そして達哉はニッと笑う。
「でも、淳を守れるのってオレだけだろ?」
「……たつやっ!」
 思わず涙がぽろぽろこぼれた。
「わ……や……」
 訳もわからず声を漏らしながらいくらぐしぐしこすっても涙が止まらない。しゃくりあげるけれど声はこらえて泣いた。両手はまた涙でぐしょぬれになってしまった。
「よーしよし」
 達哉はぎゅっと淳の肩を抱いた。
「なぁ、淳、淳はおうち、好き?」
 淳は声をこらえて首を横に振った。
「……だぁ……おうち……おうぢがえるの……やだあぁ……」
 そして、達哉がほっぺにかるくキスをしたのを合図に、わぁーっと声を上げて泣き出した。
「もう、もうひとりぼっぢはやだよぉおおお!!うええええ!!」
 達哉はただ、淳を強く抱きしめて、涙がおさまるのを待った。
「うん、うん……だからオレ、淳といっしょにくらすって決めた。二人で旅しよう?なっ!したら帰らなくていいぞ!」
「た、たび?」
 達哉は力強く何度もうなずいた。
「うん、そう。あのな、学校はな、淳がかわりにオレに勉強教えてくれよ、したらオレはな、淳のためにはたらくし、ごはんもいっぱいよういする」


――これは、達哉と淳の十年前の物語。
  たくわえられてまとまった、あまずっぱい実の一粒。

――ちいさなちいさな冒険のお話。

  はなればなれのまるべりー またあえたね、まるべりー。

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大幸妄太郎

Author:大幸妄太郎
ペル2(達淳)・ドリフターズ(とよいち)に
メロメロ多幸症の妄太郎です。女装・SMが好き。
ハッピーエンド主義者。
サークル名:ニューロフォリア
通販ページ:http://www.chalema.com/book/newrophoria/
メール:mohtaro_2ew6phoria★hotmail.co.jp
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