ニューロフォリア ディアラマ!
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ディアラマ!

2011/12/22に出した初めての淳達本です!!
もう時効だろってことで表に出します。女装エロです!!
ディアラマ!表紙


淳との意思疎通が上手くいかずに苦悩する達哉。二人の仲は最悪に、仲直りしたいならナースコスをしろと、驚きの要求をされてしまう。達哉が好きだとためらいもなく言う淳に戸惑う達哉。しだいに気づく普通ではない淳への思い、達哉は割り切れずに思い悩む。エロ重視、達哉から淳への思い、漢受を目指しました。
ディアラマ!



「おい、淳、何で来ないんだよ…皆待ってんだぜ?」
「…うるさいよ…」
携帯で電話するが、その一言で切られて終わり。達哉は悩んでいた。淳が一体何が気にくわないのかがさっぱりわからない。
確かにジョーカーとして世界を破滅に追い込んだ過去はあっても、例えそれが近い過去であろうとも、皆はそれでも前へと進もうと決意した淳を好きになったし、淳だってそんな皆に笑顔を向けて、仲間になることを決意したじゃないか…。
「…達哉クン…また淳クン来れないって?」
舞耶姉が心配そうに、携帯電話を握り締めてしかめツラをする達哉を見ていた。なんだかその視線が居たたまれなくなってくる。
「…悪い…今日も、また4人で行こう…」
携帯を乱暴にポケットに突っ込む。各々武器を手に、いつものメンバーから淳が欠けた形で廃工場へと向かっていった。
しかし、あの淳の態度は何だろう。前から連絡だってしてあるし、急な用事ができたなら出来たで
ちゃんと伝えてくれればいいじゃないか。
「ったくなんだってーんだよ!!」
ッガァン!
いつも思い悩んでばかりの淳をもっと皆にとけこませられたらという一心で、起した廃工場探索だった。レベルに合わせて場所を選べば、比較的のんびり会話もできるし、何より一緒に戦って仲間としての友好を深めるのが一番いいんじゃないかと思ったのだ。
それは達哉なりの気遣いなのだが、どうやらその気持ちは淳には届いていないらしい。なんだかそれがくやしくて、廃工場のドラム缶を蹴り上げる。その悔しさは段々とちょっと理不尽な怒りに変わっていく。いつまでもいつまでもウジウジして…自分の考えは見せず挙句の果てにはこうやって引きこもる!淳は一体何がしたいんだ!
「うわぁ~情人荒れないで~!!」
リサがギュッと達哉の背中に抱きついてくる。リサの怪力が達哉の体をガッチリ押さえる。こういうシチュエーションなら、普通は当たる胸にドキドキしたりするものなんだろうが…
リサの怪力で体の骨が折れそうでそんなスケベ心を起しているような場合ではない。
「お、おお、お…す…すまない…」
幸か不幸か、リサのお陰で気持ちのクールダウンが出来た。後からあの淳の声を思い出すほどにイライラが増してしまった。それに伴って、次第に悪魔へのあたりも強くなってしまって、その様子に皆は不安な思いをしてしまったのかもしれない。
ついつい、考えてしまうのだ、達哉はどういう経緯にしろ、今はこのパーティーのリーダーだ。悪魔やラスト・バタリオンとの戦いは、決してお遊びなんじゃないない。
常に一人欠けただけで誰かが死ぬかもしれないという怖れのある一戦一戦なのだ。淳はとても賢いし、そんなことも考えられない人間ではない、確かに何を考えているのかつかみ所の無い部分はあるが、仲間を見捨てられるほど非情なヤツでは絶対にないと達哉は知っている。それなのに、ここ最近のドタキャン率の高さにはあきれ返るばかりだった。
でも、淳のことだから、きっと何かあるに違いない…とは思う…。人知れず悩みを抱えるやつだから…。いつもその黒い瞳には寂しさを浮かべている。…そんなヤツだから…。
でもそれならばそれで、俺に相談してくれてもいいはずだ。だって俺たちは親友なんだから。まさか、淳は俺を信用していないんだろうか?考えれば考えるほど、不安になる。
「あのね、私、淳のこと心配だけど…その…ドタキャンのこと、嫌な風には思ってないから…
だから情人も、怒らないで!ね?」
少し落ち込みだした達哉の様子を見て心配したのか、リサは体を離しながら、にこっと笑う。いつも元気なリサの表情を曇らせてしまった。
「あぁ…その…なんだ…俺って淳にとってどういう存在なのかって思ったら不安になってきちまって…」
達哉は気まずそうに頭を掻く。未だに淳との距離感が掴めないことが気がかりで仕方が無いのに、それを模索しようとすると、向こうから距離をおいてくる有様で…知るに知れず、まるでいたちごっこだった。
「何言ってんのよー!情人と淳はずーっと昔からの
親友でしょ?ね?私たちの誰よりも二人は仲良かったじゃない…こ、こんなこというの超くやしいんだよ?」
リサはぷんぷん怒りながら達哉の胸をポカポカ叩いた。達哉は笑いながらそれを止めた。
「タッちゃん…焦るのもわかるさ…。
不安にもならぁな…俺も淳がたまに何考えてんのかわかんなくなるよ。でも俺たちが淳を信じないでどうすんの!俺たちと淳は…昔とは大分事情が違ってきてんだからよ。昔どおりにゃあなかなか戻らねぇよ!
気張りすぎずゆっくりいこうぜ。」
ドラム缶の上に座りながら、栄吉がニカっと笑う。なんだかんだで栄吉もカス高の番長をはっていただけはあるなと見直した。達哉は淳を内心、心配するリサと栄吉の顔を見ると、なぜか無性に申し訳なくなった…淳のことなのに…。まるで自分が心配を欠けているような気持ちになるのだ。
8才の頃、たった1ヶ月だけの出会いだったのに、それがまるで何年も前からずっと一緒だったかのように当たり前のようにお互いが大事な大事な親友になった。
だからこそなのか、淳と自分の間に責任の境目がなくなることがあった。ここ最近のドタキャン騒ぎで、いつも頭の中は淳のことばかりで支配されていた。心配で、会いたくても会えない今の状況、俺にできることは何があるというのだろう…。リーダーのくせに、考えても考えても答えの出せない自分に腹が立った。
「達哉クンは責任感が強いのね。大丈夫よ、そうやって皆が心配してくれる気持ち、きっと淳クンに
伝わるわよ…ねっ?ほらほら笑って!
レッツポジティブシンキ~ング!」
「舞耶姉…」
そう、こういう時、いつも皆に道を開くのは舞耶姉だ。一気に場が和み、皆は自然と笑顔になる。
「そこで、お姉さんから提案があるの!達哉クン、
淳クンのおうち知ってる?」
「あ、あぁ…」


ピンポーン…
達哉のような庶民が、そこに居ることもはばかられるような高級マンションのインターフォンを恐る恐る押す。
(俺のボロアパートと違いすぎるだろ…)
場所は前から知っていたものの、直接淳の家を訪れ、こうしてインターフォンを押すのは初めてだった、ただ親友…の家に来ただけのはずなのに極度に緊張していた。肩に力が篭っている。
出来立ての建物の匂いがしていた。デザインもしっかりしていて、シンプルでオシャレ。こういう清廉なイメージが淳らしいというかなんというか…しかし、ほぼ同じ年齢だというのにこの差は一体なんだというのだ…。達哉もそこそこ良い所の子どもだったりするものの、自分から家出して一人暮らししている身、自分のバイトのお金で生活している今ではすっかりボロアパートと貧乏暮らしに馴染んでしまっている。
「…達哉か…」
向こうからはカメラで見えるのか、インターフォンから淳の眠そうな声が聞こえてくる。若干不機嫌…かな?達哉は淳の声音から判断すると、ちょっと嫌そうな顔をした。
「んっ!ほらっケーキ買ってきた…」
そういって、ようやく見つけたインターフォンのカメラにケーキの箱を突きつけた。舞耶姉とリサのオススメのおいしいケーキのお店だが、淳に反応はあるだろうか。鍵が開くと、パジャマ姿の淳が現れた。
「…まさか、ずっと寝てたんじゃないだろうな…」
「そうだけど?」
そうだけどじゃないだろう…廃工場でのレベル上げ、アイテム集めにタロット集め、武器調達のための資金稼ぎ…それがどれだけ大変な作業だったか…。
淳が一人欠けるだけで戦略だって大きく変わって
きてしまうのだ。それなのにまた平気でドタキャンを食らわせて、挙句の果てには寝てただって?あんまりの淳の態度に達哉はブチキレ寸前になる。
「お前な!お前がぐうたら寝てる間に俺たちは…!」
淳の手がグッと達哉の腕を掴むと、玄関の中に引っ張り込まれる。
「わっ!おい!」
重い鉄製の扉が閉められた。薄暗い室内で、淳の瞳はまっすぐと達哉を捕らえている。すごく顔の距離が近い。淳の瞳は見透かす瞳、直撃を受ければまともな思考ができなくなる…。
身長差があるのが救いだった…。だけれど、美しい淳の上目遣いは、それはそれで、いつみても…破壊力がある…。すっかり怒りをそがれてしまった。
「達哉の声、大きくて近所迷惑」
不機嫌そうに淳が言う。せっかくそがれた怒りもぶり返すというものだ。
「…すぅ…はぁ…」
でも達哉は怒るまいと慌てて大きく深呼吸をした。
「すまん。怒るつもりで来た訳じゃないんだ…」
「…どうせドタキャンしたことを怒るつもりで来たんでしょ?君は単純だからね…」
ついつい手が淳のパジャマの襟元を掴みそうに
なったが必死でこらえる。
「そうじゃないなら…何しに来たの?」
「お、お前と仲直りがしたい…」
一瞬淳は何かにハッとした顔をしたが、すぐに目をそらすと、達哉を無視して奥の部屋に入っていった。扉の向こうはリビングだろうか。半開きの扉の向こうから玄関に向かって、フローリングの床に白く陽光が差している。その上に影を落とすのはパジャマ姿の淳だった。
「まぁいいや、入りなよ…お茶くらい入れるよ…」
(…入れてくれたのは結果的には良かったものの、あのつっけんどんな態度…ありゃひどいだろ…)
舞耶姉の提案で「淳クンとおなかパックリお話大作戦」を決行しにやってきたわけなのだが、序盤から暗雲が立ち込めているというか…。相手は一枚も二枚も上手の淳だし、何より心を理解できない相手に達哉は何処まで対処できるのだろうか…。今こそリーダーとしての力量を試されているのかもしれない。
それにしても、皆の命がかかっているこの一大事に、ここまでいい加減な態度を見せられると、さすがにちょっと腹が立つ。淳ってそういうやつだったっけ?そんな、冷たい奴だっけ?俺が考えすぎているだけなのか?
心を落ち着かせるために手が自然とポケットに伸び、淳との思い出の宿るジッポーをカチンと鳴らす。淳と俺は昔、お互い誰よりも親友…だった。今は…もうわからない…。
淳が苦しんできたことも全部知っているし、こちらは受け止め体勢が万全だ、何故淳は心を開こうとしないのだ。今でも親友だったのなら…もっと打ち解けてくれてもいいじゃないか…。
「はい、君、紅茶なんて飲んだっけ?」
輪郭が美しい線を描く白地のティーカップに、湯気を立てた紅茶がいい匂いを放っている。甘い香りに少し気分が落ち着く。しかしいちいち言葉にトゲがあるのが気になる…。一体俺が何をしたというのか。
「…出されれば飲むさ…ほら、ケーキ。皆から…」
「わっ…かわいい箱…」
淳の表情がほころび、箱に淳の細くて白い手が伸びる。黒いケーキ屋の箱からシンプルにデコレーションされた小さな円柱状のチョコレートケーキが取り出される。 
なんとなく淳の手の白とケーキの黒のコントラストに目を奪われた…。喜ぶ淳の頬にはほんのり赤…。悔しいが淳は美しい。ついついうっとり見とれてしまう…。
「ねぇ、これ、君も選んだの?」
「あ、あぁ…」
でも本当は嘘だった。達哉はケーキを見もしなかった。甘いものは苦手だし、淳の好みなんてわからない。リサや舞耶姉に選べと言われたが断った。達哉と淳の趣味は正反対だし、そんなセンスじゃ淳を喜ばすことなんてできないだろうと思ったから。
「ふぅん?皆にありがとうって言っておいてね…」
淳の表情が少し寂しそうになった。そんな淳の表情をどう推し量ったものやらわからず、達哉は紅茶を啜る。苦い味と甘い香りがが口の中いっぱいに広がる。
そんな紅茶がまるで淳のようだと思った。甘い香りで、さも自分は甘いもののように思わせるくせに、実際口に含んでみると渋みが強い。チラと淳の顔を見る。そんなことを達哉が思っているなんて知らず、淳はうれしそうにケーキを食べている。
「美味しいか?」
「甘いもの苦手な君にはわからないだろうけどね」
相変わらずのトゲのある言葉、しばしの沈黙…。
達哉は紅茶が冷めてしまう前にゴクリと飲み干す。
「仲直りしに来たのに…君からは仲直りの品も、言葉も無いんだね?」
「…淳が…それを言わそうとしてねぇんだろ…」
カチャンと音を立ててティーカップをソーサーに置く。淳の黒い目がじっと達哉を見つめる。達哉の背筋がゾクリとした。しまった、ケンカをしにきているわけじゃないのに…やってしまった!そうは思ったものの、達哉の口は止まらない。
「…仲直りの品ならあるだろ?そ、そのケーキだよ…」
「違うよ。これは皆から僕への贈り物だもの」
「お、俺だって金を出したぞ!」
「そういう問題じゃないだろう?このケーキに君の思いが詰まっていないことが問題なんだ」
その言葉に達哉のほうが詰まってしまった。
「ずっと思ってた…君は僕の事をどう思っているの?」
「な…仲間だ…」
達哉の即答に淳は少し悲しそうな顔をした。
「そうだよね、君はずっと僕に、リーダーとしての顔しかみせない…ここに来たのも、皆に申し訳が立たないとかそういうのだよね?」
最後のケーキの一口を頬張ると、少し間を空けて、ゆっくりと紅茶を飲む…。静かな静かな時間。紅茶の反射した光が黒い瞳に寂しげに揺らいでいる。
「それが…そんな君の態度が…寂しいんだ…」
その表情は鋭いナイフのように達哉の心を抉った。
「な、なら…自分からは本当の気持ちを言わないお前を、どう扱えばいいんだ?」
「扱う…だなんてひどいな…逆に君にきくよ、君は僕にどうして欲しいの?」
ただ真っ直ぐに見据える瞳。
達哉はなぜかそれが怖いと思った。
「…これからも、一緒に戦って欲しい」
「それは僕が戦力だから…だよね?」
達哉の心の怒りは氷が水になるみたいに、徐々に解けていく。怒るべきなのは淳で、達哉の怒りこそが理不尽なのだと淳は態度で、瞳で、そう告げているのだ。
実は…思い当たる節がある。少しずつ淳と親友という関係に自信がなくなってきていることだった。淳は自分が思っていた以上に達哉のことを見ている。きっとそんな心に気づいた淳は達哉のそんな心に失望しているんだろう。淳を悲しませ、距離を置いていたのは俺の方なのか…?そして、何で俺は、そんな淳と自然と距離を置こうとするんだろう?
「なぁ、外でゆっくり話がしたい…どっかいこうぜ?」
なんとなく、息が詰まってしまいそうなこんな部屋の中で、パジャマ姿のお前とじゃなしに…舞耶姉の「淳クンとおなかパックリお話大作戦」…でもなくて、本当に真剣に、じっくり話しあいたいと心から思った。
淳に謝りたいと思った。そして、距離を置きあうような関係じゃなくって、昔のように素直に親友だと言える仲に戻りたいんだ…と言いたい。
「そう?うれしいよ…僕も行きたいと思う…けど…
でも今の君じゃダメなんだ」
確かに自分には傲慢な部分があり、それが淳を傷つけていたということを知った今、達哉に向かってそう言うのも解る、なので強くもいえない…。淳の心をトゲトゲにしているのはだれでもない、達哉なのだ。
「俺はお前に謝るために、どうすれば…いい?」
「なんでも僕の言うことをきいてくれるっていうのなら…いいかな?」
紅茶のカップがソーサーに置かれる瞬間、淳の口元に妖しい笑みが浮かんだ。それがとても美しく見えて、達哉の頬が赤らんだ。
だんだん滲んでくる風景に我を忘れそうになるから、慌てて目をそらして、しぶしぶ言う。
「言うことをきくよ…」
どうせ何かおごれとかそういうのだろう。それくらいならお安い御用と言うものだ。あんな寂しげな顔されるのなら…今度は俺のセンスでもよければちゃんと淳のために選ぼう。
「本当に?」
淳の顔に優しい笑みが浮かんだ…細められた黒い瞳、ほんのり赤い唇の口角が上がる…。
「ほ、本当だ…漢に二言は無い」

淳は鼻歌を歌いながら、メモパッドにペンで何かを書き付けていた。多少気が楽になった達哉はそれを寝転んで待っていた。メモの中身をチラっとでも見るなと言われたし、淳もいつまでたってもメモに夢中で話しかけてはこないし、すごく暇になったのだ。でもテレビを勝手につけたりするわけにもいかない。よって、こうしてゴロゴロしているのだ。
「できた!ほら、これが条件」
「ん?」
達哉が起き上がると、淳の白い手にスッと押された紙が達哉の前にやってくる。
「…はぁ?」
「これが、僕との仲直りの方法」
「…ナ、ナ、ナースぅ?」
メモを繰り返し見れば見るほど、達哉の頭の中をどれだけ探ってもエロ本で見た…くらいしかない単語に、妙な妄想が浮かび、顔がいっぺんに赤くなる。
それをあの淳が、俺にそれをしろという。口があんぐり開かれた。
「ふ、ふ、ふざけんなよ!こっちは真剣なんだぞ!?
お前と仲直りしたいって気持ち、本気なんだぞ!?」
思わず淳に詰め寄った。そのふざけた条件とは、指定日に達哉がナースの格好をこの部屋ですること…だった。
しかもそこには細かいグッズの指定が書き込まれている。ナース服は薄いピンクのみ、下着は白、ガーターベルトとストッキング着用…とのこと。ご丁寧である。実にご丁寧な指示である。
「なんで?僕がふざけると思うの?」
クスっと淳が笑う。淳の笑顔は卑怯だと思う。淳は自分がどれだけ美しい顔をしているのか理解しているのだろうか?弄ばれたような感覚に陥り、達哉の顔が真っ赤になる。
「だってこれ、お、俺に着ろっていうんだろ?
ありえねぇって!」
「そうだよ、達哉に着て欲しい」
「リサや舞耶姉…ならまだわかるけど俺って!」
「君じゃなきゃ嫌だ」
達哉は髪を掻き毟りだし、しゃがみこんだ。
「わっわっかんねぇ~!俺は真剣に淳がわからんぞ!!」
「君なら似合うと思って…」
そんな達哉の傍に淳がスッと座る。そして、達哉の手をそっと握る。淳の笑顔は優しい。なぜか心臓が飛び跳ねた…顔が熱くなっていく。
「ね、僕と仲直りしてくれるんでしょ?ナースの服…
着て欲しいな…」
淳のいい匂いが漂ってくる。脳を侵すような甘い花の匂い。きっとこのままじゃ淳に洗脳されてしまうんだ。
「…ぐぅ…わ、わかったよ!揃えりゃいいんだろ!」
「わぁ!本当!うれしい!楽しみにしてるから…」
そういって淳は達哉の体に抱きついた。達哉は黙って震えていた。俺は今、とんでもない約束をしてしまったんじゃないのかと。

淳は事細かに教えてくれた。なんでそんなことを
知っているのかということまで教えてくれた。通販サイトから、海外表記のサイズの見方まで…。
達哉はパソコンの前で頭を抱えていた。商品の見本の女装した男たちの写真を見てため息をつく。わからない世界が多すぎる。確実に関わりたくない世界に俺は足を突っ込んでいる。
しかし、それは自分にとって、大事なものの為なのだから仕方が無いと割り切ろう。そう…失くしたくない、大事な友情の為なんだから…。





ピンポーン…

「はい…あっ達哉…」
うれしそうな淳の声。今日は淳が指定した例のナースの日。届いた品物をスポーツバッグに詰め込んで、肩にかけている。眉間に皺がよっているのが自分でも良くわかる。扉が開くと、今日もパジャマ姿の淳が現れた。
「いらっしゃい」
そう言って迎える淳の頬は血色がよい、特に病気と言うこともなさそうだ。穏やかな笑みを浮かべる淳を見て、元気で良かったと喜んでいいのやら、これから起こることに呆れればいいのやら達哉は複雑そうな顔で淳を見た。
「…うれしそうな顔をするな…」
「だって逃げずに来てくれたもの」
達哉の腕を取ると、覚悟のできずに動けない足の達哉を家の中へとずりずり引っ張り込んだ。とても…うれしそうな笑顔で。
案内されたのは淳のベッドルーム。大きな窓からは、今日も暖かな陽光が差している。昼間から、何が楽しくて俺はこんな格好をしているのか…。
着替える様子をじっと見られた上に、ああだこうだと口出しされながら、ようやく着る事が出来たナース服。うれしそうな、いたずらっぽそうな淳の視線がずっと達哉を捕らえ続ける。もうそれだけで頭がヒートしそうだった。なのに…さらに容赦なく羞恥心を煽るこの格好!!
「恥ずかしいの?」
思ったより短いミニスカートに苦戦する。丈が太ももの上半分くらいしかない!なんとかグイグイ下に下げようと苦戦していると、淳がうれしそうにこちらを見ていた。
「あっ当たり前だろうが!誰がうれしくてこんな格好するかっての!」
「ふふ…そう?嫌なんだ…」
「あぁ嫌だ!お前に言われなきゃこんな格好…やらなきゃ死ぬって言われてもしねぇよ!」
淳はそんな達哉をうれしそうに笑顔で見つめている。それがとても可愛らしく見えるのが悔しい。
「そっか、僕に言われなきゃ絶対にしなかったんだね」
「っ!くっ繰り返すな!」
というか本来ガーターベルトというものは見えてはいけないものじゃないのか?スカートの下からストッキングを吊り上げるゴムベルトがはみ出して丸見え状態だ。
女じゃないから詳しいことは解らんが、この…見えている状態は恥ずかしい格好じゃないのだろうか?ガーターベルトなんてそれこそエロ本でしかみたことがないから…わからない!
「お、おい、これでいいだろ?満足だろ?脱ぐからな!」
「ダメだよ達哉…こっちにきて…」
淳がベッドの上で寝転びながら手招きをする。それはさながら…どこかの貴族を思わせる優美な動き…いちいち美しい淳に逆に腹がたってくる。
「コスチュームプレイ…わかる?これは、プレイも含んでの条件なんだからね?」
「ぐっ…!」
「いいの?言うこときいてくれないと、
僕と仲直りできないよ?」
「あぁ!わかったよ!行ってやるよ!」
達哉はしぶしぶスカートから手を離すと、淳のベッドの隣に仁王立ちになる。
「ふふ…達哉の恥ずかしいナース姿、よく見せて…ほら、僕の上に跨って…」
「お、お前何がしたいんだ本当に…」
うれしそうに頬を赤らめた淳がベッドの上から指示をする。淳の胸の上に跨れと言うことらしい。座ってしまっては淳を潰してしまいそうだから恐る恐る膝立ちの状態になる。
「いい眺め…」
うっとりした淳の声に震え上がる。こんな格好をさせておいて何を言うんだろう?パンツが…もっこりが…見えるんじゃなかろうかと気が気でない…片手でミニスカートを押さえつける。
「…俺みたいなイカツイ奴にこんな格好させて何がいい眺めなんだ…」
羞恥心で半分叫ぶように言う達哉に、淳の手が
なだめるように太ももの内側を撫でた。
「そうだね、君の太ももってすごく鍛えられてて、たくましいよね」
「ひぃっ!」
背筋にゾゾゾゾーと寒気が走る。
「なっ何するんだよっ!」
達哉の初々しい反応に淳はうれしそうに笑う。
「僕のためならこんな恥ずかしいこと…できるの?」
「あぁ、悪いか…お前が居ないとな!
皆が…困るんだよ…」
「ふぅん?まだそういうこというんだ…」
太ももを触る手が、どんどん上へと登っていく。淳の細い指の感触が敏感な内腿を滑る。なんだかその感触が、達哉の中で快楽に変更されていく。脳が痺れ、薄い布の向こう、達哉のものがピクリと反応する。
「ンッ…やっ…やめろよっ…」
「やめないよ…君がどこまで僕のことを思っているのか確かめたいから…」
達哉の顔が真っ赤になり、目が涙で潤みだす。これ以上はもう本当にだめだ。淳は何がしたいんだ!
「俺たち…友達だろうが!」
口から出た言葉にハッとする。なんだかとんでもないことを言ってしまった気がした。淳の瞳は真っ黒で、感情が読めない。俺と淳の関係は、友達…?そうだ、友達だ。それ以上でも、それ以下でもない…。
心がそれ以上の詮索を拒否した。
「そうだね、友達だ…でももし、僕がそれ以上の関係を望んでいるとしたら?」
やがて薄ピンク色のナース服のミニスカートを達哉のものが押し上げる。そんな声で、優しく感じるように撫でながら…見つめないで欲しい…。
「ねぇ…?勃起しちゃったの?」
「みっ見るな…」
ミニスカートを上から押さえつける。
「僕のことを友達だっていったのは、達哉だ、なんで勃起なんてするの?おかしいよね?」
淳の視線は冷たかった。その視線に晒されると、自然と達哉の呼吸が上がっていく。切ないような…何かを期待するような…そんな思いでいっぱいになる。
「…っ…!」
言えるわけが無い。淳がこれから自分に何をしようとしているのか想像して頭がいっぱいいっぱいだなんて…。その細い手は何処に伸び、達哉の体のどこをどうしようというのかを…。
「達哉、震えてる…」
淳が黒い瞳を細めて笑う。とても、意地悪く…そう…達哉をどこか深遠に突き落とそうとするような…。
「お、お前は…俺のこと…どう思ってるんだよ…
こんな格好させて…嘲笑って!俺を…
俺のことをどうしたいんだよぉ!!」
恥ずかしさでヒートして、脳から直接オブラートに包まない怒りが飛び出した。
「なんなんだよ!俺にはお前がわかんねぇよ!
言えよ!俺はお前のなんなんだよ!」
 淳の胸倉を掴む。
「…僕は達哉が好きだよ…好きで好きで仕方が無いんだ…この感情は恋だよ?」
淳は恐ろしいことをとても平然と言う。
「僕は達哉のことが好きだから、こんな格好させたんだよ。君に欲情してる」
良くわからないが、達哉の顔がじんわりと熱くなり、泣きそうになる。力を失った手が、淳のパジャマの胸倉から離れていった…。
淳はそっと達哉を押し倒すと、息がかかるほど、顔の距離を近づける…。男なのに…自分に恋をし、欲情するという淳…。
「ねぇ達哉…何度も何度も僕ばかり責めるけど、本当にわからないのは僕の心なの?僕は、自分の心を
しっかりと見つめられているつもりだよ」
真っ直ぐに見つめる黒い瞳。
「本当は君が一番よくわかってないのは…
君の心なんじゃないの?」
そっと意地悪く耳をかじられた。ゾワっとして、思わず果ててしまった。淳の上に跨ったままついには涙を流し出した達哉を淳は抱きしめてとても優しい声でこういった。
「いい?これは宿題だから…」
淳は力尽きた達哉をそれ以上どうこうすることなく解放した。達哉をベッドから退かせると、布団にもぐりこんで、窓の方を向いて寝た。不貞寝…だろうか?
ナース服を着たまま、達哉は呆然としていた。話しかけても淳は反応を示さない。いつものセブンスの制服を身にまといながら何もかもが…そう、達哉が守ってきた大事な感情さえも淳の手からようやく解放されたような気がした。
でもなんだかそれが少し寂しいと感じた。
「…俺が一番わかっていないのは…俺の心?」
肩にかけたスポーツバッグが重く感じる。大して中身は入っていないのに…汚れてしまったこのナース服を洗濯する自分の姿を想像して情けなくなる。

今度は達哉が落ち込む番だった。リーダー格として、漢として努力してきたのに、なんだか全てを打ち壊された気分だった。…でも淳になら…と不思議と嫌な気持ちにはならない…。
自分でも首をかしげるような感情。男としての自信を喪失するような経験をしたのに、爽やかな気持ちになっている。
あの黒い瞳で真っ直ぐ見つめられて、心を見透かされて辱められて。淳が何をしたいのか、今日の出来事でちょっとわかった気もしたが、平気で達哉を好きだと告げた淳、そんな達哉に欲情するという淳。達哉にはその淳の気持ちを受け止めることができるのかイマイチ自信が持て無い。
「俺が淳をどう思ってるか…か」
じっと見つめる黒い瞳。いつも淳のあの唇をついて出る言葉は重い。バイクを駐車場に停めて、
愛用のフルフェイスメットを脱いで、なんとなく青い空を見上げる。明日も淳は引きこもるのだろうか…?



淳と俺が出会ったのは8歳のときだった。夏祭りのアラヤ神社。お互いフェザーマンの仮面を被って…。そして、リサや栄吉、舞耶姉と出会って…楽しく遊んで。
それが皆をつなぐ、最高の思い出になった。だけど、運命はそんな俺たちに残酷な別れを用意していて…。
ボケーっと達哉は昔を振り返る。鏡の泉に見せ付けられた過去の記憶をたどる。俺はあの頃、淳をどう思っていた?
ベッドの上で天井を見上げ、目を細める。小さい頃、淳は表情豊かだったように思う。今みたいに静かな水面のような淳じゃなくて、もっとコロコロと表情を変えていた。
「淳…可愛かったよな…」
横になって部屋の方向に体を向ける。自分の独り言が、軽く部屋に響く。可愛いってなんだ?淳は男だぞ?でも、確かに淳は…可愛かったのだ。
女みたいな顔だっていうのも確かにある、華奢な体なのも確かにある。だけど、達哉が一番惹かれていたのは、それ以上に淳の心が愛らしくて、とても純粋だったからだ。
守りたくなるような、そんな子だった。普段は寂しそうな顔をしていて、でも手を引いて遊びに誘うとパッと笑顔が咲いて、からかうと頬を膨らませて怒って…。
そして、帰り際になると泣いた…。帰りたくないと言って泣く淳をギュッと抱きしめた。しばらくすると、震える体も少しずつ収まり、達哉のシャツを握る手が緩んでくる。その瞬間が愛しくて…。それはきっと、自分を慕う淳への素直な感情からくるものだったと思う。
その感情は…その…感情の名前は…?
とたんに心が詮索を拒否する。
「あの頃の俺は、淳を守りたいってずっとそう思ってた。淳は俺しか守れないって思ってたっけ…」
今はどうなんだろう。俺は皆を守るリーダー格として淳をパーティーの要員としてしか見ていない、と淳に指摘されてしまった。
意識をしていなかったが、誰よりも人の心を見つめるのがうまい淳が言うのだから、きっとそうに違いない。
それは何故だ?小さい頃はあんなに守ろうと思っていた淳なのに…。達哉は自分の心が自然と淳と距離を置きたがっていることに気づく。それよりもなぜ、あの頃の楽しかった記憶を俺は抹消するようなまねをした?なぜ、あの頃の淳への感情が思い出せない?

時計の音がやけに響いて聞こえる。淳は今日も一人なんだろうか?今の俺みたいに…。
最後に見た寂しそうに眠る淳の背中を思い出し、胸が締め付けられるように痛くなった。俺にナースの格好なんかさせて、恥ずかしい姿を眺めて辱めて、それは恋だ欲情だという。そんなの…男が女にするようなことじゃないか。
わからないのはやっぱり…自分の心だったんだなと思う。淳はしっかりと言葉で伝えてくれた。なのに俺は、なんでそんなシチュエーションに興奮したのかもわからない。淳の目線に、淳の手に…。もっとほしいと、なぜ欲情…したのだろう。


静寂を破って携帯が鳴った。淳じゃないだろうか、心臓がはちきれんばかりに鼓動した。画面も確かめず、受話器ボタンを押すと、舞耶姉の陽気なチャーオ!が聞こえた。
「はい…あ、舞耶姉…いや、暇だ…淳には会ったよ…
うん…うん…」

達哉はジョリーロジャーで舞耶姉を待っていた。落ち着いた雰囲気の店がいいと舞耶姉が指定してきた
のだ。クレール・ド・リュンヌでは落ち着かない達哉に気を利かせてくれたらしい。船をイメージした、落ち着いた木造の内装…どことなく大人っぽい雰囲気が心をほっとさせる。
舞耶姉は仕事が忙しくて少し遅れると言う。髑髏みたいな顔をしたマスターにブレンドティーを頼む。いつもならコーヒーを頼むところだが、なんとなく紅茶が飲みたかった。
…なんだか紅茶が答えを教えてくれる気がして…甘い匂いがするくせに、意外と渋みのある、そんな紅茶が飲みたいと思った。運ばれてきた湯気を立てるそれを啜りながら舞耶姉を待つ。
「あっ!達哉クン!遅れてごめんごめん!仕事が急に忙しくなっちゃって!で、どうだった?淳クンと!」
「…いや…まぁ…」
そういう風に訊かれると、どう答えていいやら困る。戸惑う達哉の表情を見て、舞耶姉が微笑む。
「うぅ~ん…そっか…だよね。達哉クン、それで悩んでるんだもんね?急に電話してごめんなさい」
「いや、別にかまわない…」
いつも通りの明るい舞耶姉を見ると、ほっとする。
「あ!マスター!私スペシャルココア!」
舞耶姉はいつものようにニコニコ笑顔だった。
「達哉クンどうしたの?もう3日も廃工場に誘わないから皆、結構暇しちゃってるぞ?」
「俺と淳を置いていけばいいじゃないか」
机に肘を乗せ、顎に手を当てて舞耶姉がじっと見つめてくる。淳みたいな静かに探る目線じゃなくて、温かい見守るような目線。
そうやって見つめられると、カチコチだった心もやわらかくなって、なんでも本心で話したい気持ちになる。
「それじゃあダメよ、皆レベルがそろってる方が何かと
都合だっていいじゃない?」
そんなことにメリットはあまりなかったはずだが…。達哉としては皆のレベルがあがって、あの怖ろしい敵との戦いに備えてもらった方がありがたい。
少しでも皆の死亡率を減らしたいと思う。回復魔法や、怪我を全回復できる宝玉があっても、仲間が血を流すのを見たくない。背水の陣や反魂香があるからといって、仲間に瀕死の重傷なんて絶対に負わせたくないから。
「淳クンの落ち込み、うつっちゃったの?」
舞耶姉の瞳がじっと達哉を見つめる。
「っていうか…淳が落ち込んでるの、俺のせいっていうか…でも俺…どうしようもできなくて…」
達哉の意思とは反して、本当の気持ちがべらべらと口を滑って出てくる。舞耶姉の存在は達哉の中で、本当に偉大だと思う。どんな泣き言も、悩みも受け止めてくれるこの安心感…。
「そっか…つらかったのね…」
髑髏顔のマスターは、甘い匂いを立てるココアを
「ごゆっくり…」とテーブルに置くと、黙ってカウンターまで戻っていく。スペシャルココアをうれしそうに飲む
舞耶姉。
「疲れてるときは甘いものがいいのよ!
って達哉クンはこういうの苦手か」
ほこほこと立つ湯気に乗って、ココアの甘いチョコレートみたいな匂いが漂ってくる。
チョコレートケーキを頬張る淳を思い出す。俺があの時選んでいれば、少しは事態は好転していたのか?いや、それだけの問題じゃない気がする。たとえケーキを選んでいたとしても、根本の俺の心という問題が解決していないんじゃ結局淳に責められただけだろう。
「私もね、リサも栄吉クンも、淳クンだけを心配してるわけじゃないのよ。達哉クンのことも心配なのよ」
ニコっと笑って言う舞耶姉の意外な発言に達哉は顔を上げる。皆に心配されるようなことを一度もした覚えが無いのだ。
「本当に二人って光と影っていうか…面白いわね。
落ち込むときまで一緒。だからきっと笑うときも一緒なんでしょうね!」
「俺は!俺は…心配される覚えなんて無い!」
少なくともそうやってリーダーとして戦ってきたはずだ。皆に不安を与えないように、常に気を張ってきたはずだ…。
「達哉クンってさ、自分のことあんまり見えてないと思うんだ。皆のことばっかり見すぎてて…
リーダーってそういうことも大事だし、嫌な顔一つせず引き受けてくれるのってすごいと思うけど、でも、リーダーって倒れないこともお仕事だと思うのよ。
ね、たまには甘えよう!」
そういってココアの入ったカップをぐいっと達哉の目の前に持ってくる。
「ね!疲れたなら休もう!」
達哉はキョトンとする。
「きっと皆と戦うことを拒否してる淳クンを許せないのは、淳クンが自分みたいな存在だからって思ってるからじゃない?」
「…そういうところあるかもしれんな…淳の責任は俺にもあるかも…みたいな…」
そういうことだけじゃないんだけど…と、なんだかちょっと気まずくなって、カップの中の紅茶を揺らした。
「ソレが間違いだと思う。私が言ってる光と闇ってのはあくまでも比喩なんだから!そこを混同しちゃだめよ…例えそう見えたとしても、やっぱり淳クンは淳クンだし…達哉クンは達哉クンなんだから!」
グビグビっとココアを飲む舞耶姉。つまり、俺は普通より余分に責任を負いすぎてるってことか…。
でも、舞耶姉の休めと言う言葉。なんだかそれだけでちょっと心が落ち着いた気がした。
「舞耶姉、悪いけど俺しばらく休むわ。今度こそちゃんと淳と腹割って話してみたいと思う…」
「そうよ、達哉クンと淳クンは別々の心を持ってるんだから、本当に仲良くしたいと思ったら、お互いにしっかり話し合うのが一番なんだから!昔と違う新しい
お互いを知って、また仲良くなれるといいわね!」
舞耶姉が笑顔になった。
「…だよな…」
口につけたティーカップ、流し込まれる紅茶はちょっと冷めていて、渋みを増していた。
寂しそうに眠る淳の背中を思い出す。きっとそれは、心を侵してる病気で苦しんでいるからで、その淳を苦しませる原因は俺なんだ。
「じゃあ、二人とも揃って戻ってくるまで、三人で頑張ってみようかな!リーダーはお姉さんに任せなさい!」
「はは、心配だな」
舞耶姉は腕を上げてガッツポーズをしてみせる。
「そんなことないわよ!レベルあっという間に二人とも追い越しちゃうんだから!」
「そんなに差をつけられんうちに戻るよきっと」
「ふふふ…待ってるからね!」



淳と腹を割りあう前に、最も淳を怒らせてしまった原因の自分の腹を探る時間を持ってみた。
ぼーっと部屋で淳のことを考えていると、やっぱりなという結論が出た。俺は、淳に恋をしている。淳の表情に惹かれ、心に惹かれている。手を握られて見つめられると、途端にスピードを上げる鼓動。それは達哉が知る様々なメディアが言うには恋愛と言う。

ナース服を突っ込んだスポーツバッグを肩にかけて、バイクに乗り込むと、フルフェイスメットをかぶる。確かにとんでもない話だ。10年ぶりに会ったら、男同士なのに友情なんかすっとばして、お互いの関係が恋愛に変わっているなんて!思わず頬が熱くなる。
きっと淳を守りたいと言う一心から生まれた漢というこだわりが、ずっとこの恋心を封印していたのだろうと思う。
それは淳を守るのには必要の無い感情だと、男同士がくっつきあうなんて、常識的にはありえなくて、漢らしくあるには邪魔な感情として処理されたわけだ。
「バカだなぁ俺…」
エンジンをかけると、振動が体を揺らす。エンジン音に負けないほど、心臓が大きく鼓動を鳴らす。男同士の恋心を認めないというとは、淳の達哉への思いをも否定するということだ。それが知らぬ間に淳を傷つけていたのか?そんな自分が情けなくなる。
だからこそ、淳が望む通りにしてやろう。愛する人を守るどころか傷つける、こんな漢の風上にも置けないような俺はナースの格好だって平気で出来るだろう。抱きたいなら抱けばいい。親友なんかスッとばそう。

あの静かな水面のような淳に会えば、見えない未来も映し出してくれるんじゃないかってそう思うから。そのままさっそくバイクを飛ばす。とにかく、一人でウジウジ考えるのは苦手だった。
もうリーダーだからとか漢だからと考えるのはやめだ。好きになったら一直線でいいじゃないか!

ピンポーン…
…ピンポーン…

「…おーい…淳?」
なんでこうタイミングが悪いのだろう。やる気満々でやってきた達哉は、思わぬ事態に戸惑った。別にナースの格好がしたいとか、そういうのじゃなくて、淳に会いたくて来たというのにこの運命の仕打ちだ。
なんとなくドアノブに手をかけてみると、マンションの重い鉄の扉はスッと開く。
「…おーい…淳…?入る…ぞー?」
あの用心深くてどこか完璧主義者の淳がドアに鍵を閉め忘れるなんてあるのだろうか。
もし万が一淳が倒れたりしていてはいけないので、確認だけして部屋を出ようと決める。
もし、本当に病気だったとしたら?淳は一人暮らしだ、俺たち以外に他に頼れる人間も居ない。
リビングに誰も倒れていないのを確認すると、ベッドルームのドアを開ける。モコモコ盛り上がったベッドの布団から覗くのは、淳の艶やかな黒髪だった、太陽光をはじいて美しく輝く。布団が柔らかく上下をしていた、心地よく眠っているのだろうか?
「…ふぅ…」
達哉はそんな様子の淳に、思わず安心しきって眉を上げ、ため息をついた。
「淳?」
顔をそっと覗く。黒髪から覗く左まぶたは、長いまつげに縁取られ、あの水面のような瞳を隠していた。
可愛らしくすぼめられた薄紅の唇は細く小さく息をしていた。この唇からあの人の心をえぐる言葉を吐くとは思えない。…まぁ達哉が悪いのだが…。
なんとなくじっと眺めてみる。本当に淳は綺麗な顔をしていた。眺めるほどに心臓が早鐘を打つ。ああ、本当に俺は淳が好きなんだ…。いつまでたっても淳の寝顔に見飽きない自分に呆れる。なるほど、これが好きって気持ちなのか。
淳が起きないように、そっとセブンスのブレザーを脱ぐと達哉の傍にある勉強机の椅子にかけた。
ネクタイを外してシャツも無造作に脱ぐと、それらもブレザーの上に放るように掛けた。
これから俺は男から女になる。自分の中のこだわりを全て捨てる、それは物凄い背徳感だった…。
でも、淳が望むなら、それで淳の心が救えるというのなら、俺はなんだって出来る。だって俺は、運命に責められ、苦しむ淳を胸に抱きしめてやりたいと願うから。そう、小さい頃みたいに襲ってくる寂しさにようやく打ち勝つまで。その細い体から震えが収まって、そっと達哉のシャツから手を離すまで抱きしめてやりたいのだ。悲しみから、苦しみから解放してやりたい。俺にならできる、きっと。
ワンピース状のナース服を羽織ると、下からボタンを留めていく。黒地に白のラインが特徴的な制服のズボンも脱ぎ捨て、椅子に座って靴下を脱ぐ。そして、素足に履きなれない白のストッキングを履く。
「…ナース…なぁ…」
ボクサーパンツをスポーツバッグに捩じ込んで。レースでフリフリのガーターベルトを腰に装着すると、白いパンツを履いた。2回目ともなると戸惑う心はどこかへいった。しめはナース帽。ちゃんとヘアピンで留めて、これでカンペキなるナースコス!…のはずだ。
肝心の監督が寝ているのだから仕方が無い。達哉なりに満足すると、腰に手を当ててフンと鼻息を鳴らしてみるものの…。
「…似合う…かぁ?」
似合うわけが無いと思っていても、淳に見せるとなると、なんだか妙に不安になってきて、部屋に置かれていた全身鏡の前に立つと、達哉の思う女性らしいポーズを思い描いてみる。左手で髪の毛にそっと触れ、腰を撫でるように右手を滑らせた。どうやれば淳が言うような可愛い風に見えるというのだろう?
いろいろポーズを決めてみるが、どう見ても男の顔だし、、胸は断崖絶壁、ふくらみがあるとすれば固い胸筋。達哉の男で盛り上がったミニスカートから覗く脚は筋肉質。尻だって肉が薄くて固そうだ。女物に身を固めてみても、どうみても181センチの健康な男子。
「…うーん、わからん。断じてわからん!」
鏡の前でポーズをとっている自分の滑稽さに真っ赤になりながら、達哉はブツクサ言うと、全身鏡からとっとと離れていく。そして、また穏やかに眠る淳の元へやってきた。
「淳?ちょっとおでこ触るぞ…」
あんまりに熟睡しているから、本当に病気だったらどうしよう…そう思いながら、そっとおでことおでこをあわせてみる。淳の肌は少し冷たい。淳の綺麗な顔が間近にある…いつも感じていた淳の花のようないい匂いがとても濃密に感じる…寝息がふっと顔にかかる…。
心臓がトクントクンと…音を立てる。
思わず乙女チックな気分になる自分に、何をやっているんだろう…なんて、一人で盛り上がる自分が恥ずかしい。男というバリアーをぶち破ればこんなに変わってしまうものなのか。
「と、とりあえず熱はなし!」
あったとすればそれはきっと達哉自身の熱だ。
「ん…」
淳が寝返りを打つと、白い瞼がゆっくりと開き、昇る太陽のように黒い瞳が現れる。
「…っは…」
なんだか淳がいちいち美しく見えて、思わず息を呑み、じっと見てしまう。意識をする前からこうだったはずなのに…。より深刻な症状になってしまったようだ。
「うぅ…んっ…おはよう達哉…」
ナース姿に一切疑問を抱かずににっこりと笑う淳。
「お、おはよう…ってもう昼だぞ…」
「んーっ…そっか…」
気持ちよさそうに伸びをすると、持ち上がったパジャマから、淳のヘソが一瞬覗いた。ストンっと体を落とすと、無防備にニコリと笑う。
「いいね、起きてすぐ眼に入ったのが、一番大好きな人で、しかもそれがナースコスプレしてるだなんて、僕はまだ夢を見てるの?」
淳はいたずらっぽくフフッと笑った。
「…でも、そのナースコスプレが俺だぞ?
…こんないかついやつじゃ悪夢だろ…」
「そうだなー…君も体験したらわかるよ」
「…なっ!!」
頭の中で淳にナース服を着せてみる。細くて綺麗な淳ならば…きっと…それは…うん…ぜひともこちらからお願いしたい…。ちょっとした妄想に思わず反応する愚息を押さえつける。
「でも、急にどうしたの?達哉、とっても清々しい顔してる…まさかコスプレに目覚めちゃったの?」
意地悪く淳がくすくす笑うと、首に手を回してきた。ぐっと首に淳の体重が乗る。
「…んっ…なんていうか俺、淳が好きだって気づいた…」
「そう?僕も達哉が好きだよ?」
淳が首をかしげて、じっと見つめてくる。
この心臓のドキドキ…淳を好きな自分を素直に受け入れること、それがなんだかうれしく感じて、自然と口元がほころんだ。
「…淳の気持ちなら知ってるよ…淳は俺にこんな格好させるくらい好きなんだよな?」
「…うん、よくわかってるじゃない?」
達哉の唇を、そっと淳が奪う。柔らかくて温かい唇がそっと当たる。達哉はどうしていいかわからず、体が硬直してしまった。
「ふふ…いいの?抵抗しないと…知らないよ?」
「いいんだ…お前の言うことは何でもきくって決めたんだから…」
「ふーん…?」
淳の低い声が、体に響く。痺れて…熱くなる…
なんだかそれだけで心地が良い…。
「お前を知らず知らずの間に傷つけてしまったことを詫びて…責任をもって心の傷を癒したいと思うんだ…その…だめか?」
達哉の目は真っ直ぐに淳を見つめる。淳の黒い瞳にそっと涙が浮かぶ。達哉の正直な心が、淳には今一番必要だから、達哉が心を偽ると淳は泣く…。だけどこの涙は、達哉の正直な心に応える涙だって、
どんなに鈍い達哉でもわかる。
「そんなこと、君にできるのかな?」
「お前が俺を好きなら、きっとできる。」
達哉はそっと淳の上に跨った。
「いいよ…そういうの…かわいい格好した達哉が…
かっこいいこと言ってる…ギャップっていうんだろうね?最高だよ…」
「ふんっ…」
皮肉を言う淳の手がそっとナース服のボタンにかけられる。一つずつボタンが外されていく。露にされた胸元がスースーした。外したってその先にあるのはたんなる平坦な胸板なのに…。淳のうれしそうなこと…。
淳の手は達哉の胸に触れると、そっと乳首を転がすようにさわり、摘む。淳が俺を好きで、俺をそういう対象としてみてて…そう考えるだけで、より気持ちよく感じたりするものなのだろうか…。
「んっ…」
思わず声を上げてしまい、はっとする。
「なに?気持ちいいの?」
淳はうれしそうにくすくす笑うと、首筋にキスを浴びせてくる。手は執拗に乳首を責める。
首にかかる淳の体重と、当たる柔らかい唇の気持ちよさで力を失っていく。達哉の体がゆっくりと淳の上に落ちた。
「あっ!」
「んふふ…かわいいよ達哉…」
耳元で囁かれる。柔らかい淳の息が耳にかかるたび、背筋がゾクゾクした。倒れ掛かってきた達哉の体を、淳の膝がグイっと持ち上げる。
ミニスカート越しに興奮して屹立した達哉のものが刺激される。グリグリと押されるたび、達哉の口からため息が漏れた。
「あぁっ…淳…」
「なぁに?」
「お、俺…なんか…気持ちよくしてもらってばっかで…何にもできてないけど…これでいいのか?」
「気にすることは無いよ、僕は君を可愛がるだけで幸せなんだから…」
淳の細い指が達哉の茶色い髪をすくう。頭皮を撫でる指の感触まで快楽に変わる。
(あぁ…だめだ…俺…こんなに…淳が好きなんだ…)
ぼーっとする頭で感じる、淳の表情、仕種、肌の感触…体のラインを確かめるように服の上から淳が撫でてくるだけで、ミニスカートの中で暴発しそうになる。
ガマンしようとするが、もうもちそうに無い…。
「ごめん…淳…出るっ」
泣きそうな声が思わず漏れた。自分からこんな声が出るなんて…恥ずかしくて仕方が無い。
「いいよ…出してごらん…」
イタズラにいじってくる淳の膝がほどよく感じやすい部分を刺激してくる。淳もドキドキしているのか、呼吸が荒い…。目は潤み、口元には優しげな笑みを浮かべている。
「んっ…ごめん淳っ…!」
ミニスカートも女物のパンツも、淳のパジャマも…達哉の温かい精液で濡らしてしまった。口が半開きになり、荒い息を漏らす。
「達哉はこれで、女装して興奮しちゃった上に、男が大好きな変態さんになったね…気分はどう?」
「はぁっ…はぁっ…かまわん…俺は…それでも…
淳が好きだって気持ちを…もう偽りたくない…」
「もう…どうして君はそんなに可愛いの…」
淳が口付けてくる。今度は強引に緊張で震える唇を割って、舌が侵入してくる。淳の温かい舌は、甘い唾液をつれてくる。力ない達哉の舌に絡みつき、上から垂れる達哉の唾液を啜る。
「ん…」
達哉は身震いをした。淳の膝が下ろされ、されるがままになっている達哉の腰が下がっていき、淳の足にぴったりとつく頃、下腹辺りに、淳の固いものが当たった。
「ふぅ…んっ…」
淳の甘い吐息…温かい体温…パジャマの柔らかい感触…。達哉の腰を撫でる淳の手がスカートを手繰り寄せていく…外気に晒されて、濡れたパンツがスースーする…。
「んはっ…!達哉ぁわかる?僕…達哉で興奮してるんだよ…ねぇ…いい?僕、セックスしたい…」
淳が顔を真っ赤にしながら黒い瞳を潤ませて言う。
「いいよ…し、しろよ…でも…どうするんだ?」
達哉は男同士のやり方を知らない。顔を赤らめるだけで何も出来ないうぶな達哉に淳は笑いかける。
「そういう萎えること言っちゃだめだよ…ふふっ
じゃあ…そうだなぁ…オナニーして…もらおっか」
「えっ!?」
「なぁに?…言うこと聞かないと君が痛い思いするだけなんだけど」
淳が拗ねたように言う。
「うぅ…」
淳の指示通り、よく見えるように上に跨った姿勢になると、精液で濡れたミニスカートを上げ白いパンツをずり下げる、戸惑いながら淳の目の前で自分の手でしごいてみせた。淳がそれを可愛らしい笑顔で見つめてくる…。
「はぁ…うっ…こ…こうか?」
すっかり美しい淳のいいなりになる倒錯したシチュエーションに興奮して固くなっている。淳に見られながら自分のものをしごくのは、すごく情けなくて悲しい。
でも淳を思ってあふれ出す温かくてぬるぬるした精液が達哉の手を濡らしていく。頭が下半身から登ってくる熱と快楽でぼーっとした。まだイききらないころ、淳が口を開く。
「じゃあ、次は…お尻の穴に指…入れてみて…」
「…っおい!」
さりげなくとんでもないことを言う淳。
お、お尻の穴…だって?
「僕の言うことをきいてくれるんだよね?」
「…くそっ…」
こんなところ、一度もいじったことがない、だけど、淳が言うんだ…。それに…するのに…必要だっていうし…。じゅっ淳がしたいんであって…その…俺は…別に…。
なんて言い訳を考えながら後ろから手を回し、そっと指を入れる。指の第一関節もいかないくらいなのに、体が今まで感じたことの無い違和感に恐怖を覚えた。それでも奥へ奥へと指を進みいれる。痛みと快感の入り混じった、下腹に響く奇妙な感じ。いじるだけで快感だけを感じる肉棒とは、まったく違う種類…言いようの無い痛みを伴った快楽だった…。
「…くっ…」
「怖い?」
淳がちょっと寂しげに言う。きっとこう言いたいんだ。僕の為にできるのはそれだけかと。達哉はそんなことないと微笑んだ。
「いや、大丈夫だ…んっ…」
目の端に涙が浮かぶ。指をグッと押入れると、何度か出し入れしてみる。
「いつっ…」
淳の手が達哉の白いストッキングを履いた足の上を滑った。さっきまで布団の中にいたからか、温かくて気持ちの良い小さな手…黒い瞳は不安げに揺れている。
苦痛でゆがむ達哉の顔をじっと見ている。それは達哉を気遣う目線。これからどうなるか、淳もきっとよくわかっていないのだろう。強がっているのかと思うと、  愛しく感じた。
「あ、ありがと…っ…淳も…不安か?」
達哉の不安を消すように愛撫してくれる淳にお礼を言う。すると、何かが淳には気にくわなかったらしく、震える太もものガーターベルトがパチンとはじかれる。むずがゆい感触に思わず声が漏れた。達哉の体中が敏感になっている。レースのささるかゆいような感触まで、達哉の脳が快楽に変換していく。
「んっ…やめろよ…」
淳は自分の唇にそっと指を当てるとくすくす笑いながら言った。
「こら…生意気なこと考えてるでしょ?君の今のご主人様はこの僕なんだからね?」
なんということを言うんだろうか…。いつもなら感じる怒りも、もっと攻め言葉が欲しいという気持ちでかき消された。
「こんな恥ずかしい姿をして感じている君が、僕と同等だなんてありえないんだから…ふふふっ」
「はぁっんっ」
低い淳の声が放つ意地悪い言葉は達哉の脳みそをとろかしていく。淳のおしおきはまだ続く。ストッキングがぐいっと引っ張られると、ガーターベルトの金具が  はずれ、ゴムのベルトがパチンとはじけた。ストッキングが太ももの半ばまでズリ下げられると、そっと息を吹きかけられた。素肌に当たる淳の息がくすぐったい。
「わ、わかったよ…もうっ…生意気…言わないからっ!」
「おかしいなー…いつもの達哉ならもっと抵抗してくれるよね?…でも…わかってくれたならいいよ…」
その間も達哉は淳に見られながら、指を何度か奥へ、外へと探っていく。そうしているうちに、気持ちの良い ポイントを見つけてしまう。
「うあっ…!」
達哉のものがビンと立ち上がる。淳の手がそれをしごいた。淳の細い指が締め付けてくる感触は自分の手とはまったく違って気持ちがいい。指が細い分もっとピンポイントで攻めてくる。
「痛くないように…しっかり広げてね…」
「淳っ…まさか…ここに…?」
「ふふ…そうだよ?男同士だと…
そこにするんだって…」
行き来する指、達哉のものを可愛がる淳の手、感じたことも無いほどの快感に、だらしなく顎が下がり、口からよだれがあふれ出す。
「あぁ…っ…」
快感でとろけた達哉の頭の中は混乱でいっぱいだった。淳がかわいいやら、なんで淳に見せつけながら一人でやってんだとか…これから何が行われるのかとか…。
「じゃぁ…僕のズボンから僕の…出してごらん?」
「こ、こうか?」
達哉がパンツごとズボンをずらすと、ビンビンに立ったものが目の前に現れる。
「お、おお…」
始めて見る淳のものは、想像よりも立派で思わず声を漏らす。当たり前のはずだけど、こんなに綺麗で女と見まごうような淳でも…やっぱり男なんだという現実を見せられる。
先端からはもう先走りがあふれ出している…。達哉はゴクリと喉を鳴らした。指だけでこんなになるのに…淳のものが自分の中を抉りこむと、いったいどうなってしまうというのだろう?
「達哉のご奉仕してくれるナース姿みて、興奮したんだよ?」
その隠しもしない素直な淳の言葉に思わず頭が幸せでぼーっとした。
「さぁ、跨ってごらん…」
達哉は淳のものの上に跨る。とても非現実的だ。
こんなのAVでしかみたことがないのに。しかも、見たことがあるのは男と女の場合だけ…それを今、達哉自身が経験しようとしている…。
「おまえ…なんでこんなこと知ってんだよっ!」
ずりずりと下がる腰に合わせて、すぼみを押し広げ、ゆっくりと淳のものが入ってくる。
「本をたくさん読んでるとね…そういうのにもっ…あたるんだよっ…知ってる?…昔は…男色なんてあたりっ…まえ…なんだからっ…さぁ…腰を下げて…」
下腹に猛烈な違和感が襲ってくる。鈍い鈍い痛みだった。だんだんと眉間に皺がよってきて、脂汗が滲む。
達哉の体重で下がっていく腰が、少しずつ淳のものを咥え込んでいく、痛みと快感で手が震えて、汗で手がすべり、一気にストンと腰が降りる。
「あぁ!!」
達哉は痛みに震え上がった。その下で淳が色っぽくうめく。しばらく苦痛で達哉は動けそうに無かった。涙を溜めたその達哉の目がまた淳を欲情させるようだった。優しげな微笑には淫靡なものがまじっている。
「はっあはっ…んっ!だっ大丈夫…!?」
こういう大人になりきれない淳が好きだった。ふとした瞬間見せる優しさとか…幼さ…。
「んっ!」
だから淳を気持ちよくしてあげたくて、震える太ももに力を込め、腰を持ち上げ、またゆっくりと腰を下げていく。
「大丈夫だッ…俺を誰だと思ってる…!」
達哉がニヤリと笑うと、淳の顔に余裕が戻ってくる。荒い呼吸だけが部屋に響く。
淳の遠慮の無い快楽の表情。あのいつも冷静な黒い瞳が、我を忘れて興奮で揺れている。口から荒い息を吐き、頬を赤らめて…自分の体を求めている。
「っく…そ、そんなに…いいか…?」
痛くて仕方が無いのに、自分まで気持ちよくなりそうな表情だった。淳が…俺で感じてる…。
「んっ…達哉の中、ぎゅってして…気持ちいい…」
「…っ…う、うれしいよ…」
淳の手がそっと、達哉の頬に触れると、繋がったままの体をそのままベッドに仰向けに倒す。淳の体が達哉の上に覆いかぶされる。
「達哉…ねぇっさっきみたいに…笑ってよっ!ねぇっ!」
淳のものにねじられた痛みに達哉の顔は引きつっているのだろう。すっかり興奮した淳が子どもみたいに、うれしそうに笑いながら、押し倒した達哉の体に   何度も何度も腰を打ち付ける。
「あははっ…んっ…あぁっ!」
だんだんと苦痛の中に埋もれていた快楽が勢いを増してくる。淳の望みに応えたくて、少しずつ口角を上げる。細められた目の端からは、涙がスッと布団へと落ちていく。
「達哉っ…かわいいっ…かわいいよっ」
淳の荒々しい動きに上下する体を、シーツを掴んで必死に抑えようとする。剥き出しになった胸に淳がそっと口付けをする。
だんだんと淳のものが、達哉の一番気持ちいいポイントを抑えてくるものだから、思わず声を上げ、乱れる達哉を淳はうれしそうに観察している。優しい淳は…どうすれば達哉が一番気持ちいいか、探っているのだろうか?
何度も奥深く突かれ、薄れていく意識の中、達哉は幸せでいっぱいだった。淳のパジャマを達哉のほとばしる思いが濡らした。
「ねっ…僕…達哉のこと…好きでいていいの?」
淳の目にも涙が滲む。
「なんで…そんなこと…」
「だって僕…きっとこれからも…
君にひどいことしちゃうんだよ…」
「はぁっ…うっ…もっもうこれ以上…ひどいことなんてねぇ…よっ!それにっ…俺ならきっと…どんなことでも
耐えてみせるから…だから…
そばに…置いて、守らせてくれよっ!」
「んっ…達哉ぁっ…達哉…っあっ…」
達哉の体の中に、淳の濃厚で熱い精液が注ぎ込まれた。腸内をどんどん満たしていく。
「うっ…淳…淳っ…」
溢れる涙。甘えるようにすがる淳の体を、ぎゅっと抱きしめる。達哉も淳に甘えたいから…離さない。


あんなに気持ちよかったのに、時間がたってみれば腰が痛くて、起き上がれない。その上淳が抱きついたまま離してくれない。まるで子どもみたいにぐりぐりと淳の頭が胸に押し付けられる。
「達哉ってずっと僕のこと好きだったんでしょ?」
裸の達哉の胸に頬をあずけたまま、淳が言う。
「…そうみたいだな…」
「わかってたよ…達哉が僕を見る目線…いっつも優しいもの…僕は達哉のそんな優しい目が好きなんだよ…」
薄ピンクのナース服がぎゅっと握られる。
「…そっか…俺、そんな風に淳を見てたか…」
きっとそれは8年前のころからの話なんだろう。無意識的に淳に恋愛をしていたのはその頃からに違いないから…。
「僕…ずっと達哉が好きだったのに…僕のこと単なるパーティーの戦闘要員としてしかみてくれないから…
寂しかったんだよ…だからイジワルしたんだ…本当はね…つらかったんだよ…皆と一緒に…戦いたかった…けどね?達哉のこと考えると、胸が苦しくて、まともに動けなくなるんだ…こんなんじゃ…戦いの足手まといになるって…思ったから…」
達哉の手が淳の髪の毛を撫でる。淳がかわいいことをいうものだから、達哉の表情がゆるんだ。淳の手をそっと握る。ちょっと冷えた、細くて小さな手…。
「10年ぶりにまた一緒になれたのに…
達哉が冷たいからいけないんだ…」
「ごめんな…俺、鈍感だったな…」
「うん、超鈍感…」
淳が顔を上げると、弱々しくにこっと笑う。
「でも、驚いた。達哉がまさかここまでしてくれる
なんて…」
「…本当は…こうなるってわかってて俺をけしかけたんだろ?お前はいじわるだからな…」
達哉はちょっと上半身を起こす。
「…ふふっバレてた?」
淳の表情にちょっと余裕が戻る。
「俺もお前がわかってきたってことだ…」
「でも、僕が好きなんでしょ?」
自信満々に淳が可愛らしくきいてくる。
悔しいがその通りだ…。
「あぁ、好きだよ…」
白いストッキングを履いた達哉の足の間で、腰に抱きついた淳がうれしそうに笑う。そんな淳は本当に小悪魔だと思う。しかし、改めてみるとよくわからないこのシチュエーションに疑問が湧く。
「ところでなんで…ナースなんだよ…」
「だって達哉に良く似合ってるよ…達哉は小さい頃からいつも僕を癒してくれるんだから…」
「…フン…そうかよ…」
達哉は自分を心の拠り所にする淳が可愛くて頭をグリグリ撫でまわす。
「でも、これだけは言っとくぞ、俺は絶対にお前を守るし、離さないから。これからずっと支えてやる。
だから、絶対に負けんなよ…いろいろ…つらいこと、
あるだろうけど…俺が味方だからな」
「…うん…」
そういって淳は微笑む。

(あぁ、俺はずっとこれが見たかったんだ…)

「したら、ちょっと休憩したらどっか食いにいこうぜ!
腹減った!」
「おごってくれるの?じゃあ、クレール・ド・リュンヌじゃないとやだからね…」
「…ぐっ…もうちょっとランク下げれんか…」
「ふふっ!うそ…達哉がつれてってくれるなら、どこだっていい…」

淳は笑う。8歳のときみたいなとても素直な笑顔だった。その笑顔は心に優しく染み渡る。

きっとそれは、おまえだけが俺に使える
癒しの魔法、ディアラマ!

END

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大幸妄太郎

Author:大幸妄太郎
ペル2(達淳)・ドリフターズ(とよいち)に
メロメロ多幸症の妄太郎です。女装・SMが好き。
ハッピーエンド主義者。
サークル名:ニューロフォリア
通販ページ:http://www.chalema.com/book/newrophoria/
メール:mohtaro_2ew6phoria★hotmail.co.jp
(★を@にかえてください!)

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