国奪りだヨ!全員集合 第二幕 ね34R-18とよいち
新刊「チョコレートドリンクにましまろ」
A5/24P/200円 コピー誌(インク染みあり)えっちな掌編とえっちでない掌編が入っています。
チョコレートドリンクにマシュマロを
入れちゃったような激甘とよいちを目指して見ました。
※コピー誌で、インク染みがあったりして出来が悪いので、
お詫びにちょっとしたペーパーがつきます!
与一ちゃんにバニーコスさせたラクガキです><;;
「んー、ねぇ、お豊……お豊ってさぁ」
「ないじゃ」
ヴェルリナへ向かって歩く豊久の背中に揺られながら、そろそろエルフの地獄耳も届かないだろうと、辺りを見回して与一が言う。
「僕のどういうところが好きなの?」
先ほどまで大声を上げながら、たっぷり刀を打ち込んできたのだろう。訓練場からもかすかにその声が聞こえたし、森から小鳥達がブワァっと飛び立つので、どのあたりで修行しているのかも丸わかりだった。
その背中は汗だくで熱くて、ムシムシしている。でも与一にとってはこの湿気やにおい、体温だって心地よいし、歩くたびに胸や腹にぴったりくっついた豊久の背中の筋肉が動くのを感じると、そのたくましさを色っぽくさえ思うのだ。
「なしてそげんこつば尋ねる」
ぶっきらぼうに豊久は言う。与一の体全体にビリビリと地面に這うような低音の声が響く。豊久の体はまるで大きな鐘だ。打てばゴーンと鳴り響く。大きな大きな声の元だ。
「ねぇ、お豊は僕のどういうところが好き?」
あきらめずにもう一度訊ねる。豊久もなんだか思うところがあるらしく、じんわりとうなじに赤みがさした。そんな小さな豊久の変化に、与一は機嫌をよくして、うなじのにおいをかいだ。
短い髪を剃り上げた部分が特ににおう。何のにおいかと聞かれれば困ってしまうが、きっとこれがサンジェルミの教えてくれたフェロモン、というやつだと思っている。そうでなければこんなに、このにおいに惹かれたりしないはずなのだ。臭いのに臭くなくて、もっとかぎたくなる不思議なにおい、それが豊久の汗のにおいだ。
与一の鼻息がくすぐったいのか、豊久は軽く首を動かした。前ならやめろと怒っていたろうが、最近は何をしてもこの小さな与一はやめないと理解した。最近はあまりうっとうしくも感じない。好きにさせるのが一番、と与一のかぎぐせを放置するようになった。
ようは諦めたのだ。ちなみに豊久を諦めさせることができる人間はこの世にそうそう存在しない。母上、父上、叔父上達、それら堂々たる人々にならんで、ちょこんと与一がここに入る。
それに、与一に好かれることは、まんざらでもないのだ。
命の恩人だというだけではない。与一は自然が育んだままといった、少し粗削りな印象を持つ美しさを持っている。豊久はそれを眺めるのが好きだ。
折れてしまいそうな体の細さは不安に思うこともあるが、豊久には無い伸び縮みするしなやかな筋肉の流れをじかに触れて感じるのが好きだ。
それに一番印象的な、黒々とした美しい馬の尻尾のように揺れる長い髪も、指で梳いてはなぜこんなに美しいのかと飽く事無くながめてしまえそうなほど好んでいる。
もちろん美貌に似合わぬ少し幼い性格も、鈴がころころ転がるような上機嫌な笑い声も、本当にかわいらしいと思っている。
だが、表現するにはあまりにも微妙で、感情を言葉にすると途端に大切な部分が壊れてしまいそうなのがこわかった。こうして言葉をねだられると、いつも困ってしまう。
「そげなこつ知らん」
そういう面倒くさいがつもり積もると、ついつい言葉でも拳でも殴りかかるのが豊久だった。だけど、そういう頑固で融通のきかぬところも、実は照れからくるものだととわかっているから、与一はそんな豊久がかわいく思える。
「まぁたそうやって面倒くさがるんだからなぁ、お豊は。仕方がないんだ」
上機嫌に笑って、頭をグリグリなでまわす。そして、そんな与一のなんでも喜ぶように見える様が、豊久にはまた奇妙に映るのだった。
二人の関係は、ほんの少しのすれ違いと、たくさんの大好きでできている。
与一は豊久のほんの少しの変化も大好きだから、ほんの少しも見逃したくない。豊久は与一が大好きだからこそ、表現や理解であがいては、結局面倒くさがって放り投げる、しかし、豊久は与一が好きになればなるほど、あがく時間が長くなっていることに気づいていなかった。それが豊久の見逃しがちな与一への大好きだった。
しかし豊久の変化を見抜くのは目ざとい与一で、そんな変化を面白がるのも与一だ。さて、照れが行き過ぎて、好きなところ言い合いっこを無しにされてはつまらない。与一は豊久を焦らすようにうなった。
「ふーむ」
それならば、こうすればいい。与一は豊久の扱いは得意な方だと思っている。
「今日はどっちがいっぱい好きなところを言えるか勝負しようよ」
勝負、戦、そういった言葉でほんの少し豊久の本能をくすぐってやればいいのだ。
「む、おまぁに敵う気はせんが……勝負なら負けれんの」
◇ ◆ ◇
与一の表情に少し生意気が戻ってきた。袴の向こうで与一を求めて脈打つマラの形を確かめるように、与一は両足で挟んで、上下に動かした。
「ね、好き?まずは教えて……こうされるの、好き?僕の足とか……ねぇ?」
豊久はうなりながら与一をにらんでいる。与一は冷や汗をかきながら、足を上下に動かし、足袋の親指と人差し指の間で先端を挟んでこりこり動かした。
「足クセが悪るか」
「……だねぇ?」
「……じゃっど、悪い眺めでは無いな」
豊久のマラをしごくために大きく開かれた脚、動かすたびに与一のマラが震えて滴をこぼす。
「んも、もう……」
そんなことを言われると、妙に恥ずかしい。内股になりかけた与一の脚を、豊久の手が押さえつけた。
「足で扱いていてもよか、脚をあげてろ」
そういって、豊久は真顔で手を与一の尻にあてがい、そっと中指を入れた。
「ふあ!」
異物感が背筋を昇ってぞくりと震えた。
「こら、脚を下げるな。上手に尻穴がくじれん」
「……うぅ……」
与一は顔を真っ赤にして一生懸命足裏で豊久のマラを扱いた。
――好きの言い合いっこ勝負を始めるとよいちのえっちな掌編と
ある日、毛並みがきれいなことが自慢の小狐が猟師に追われておりました。
銃口を向けられ、追いたてられているうちに足をくじきましたので、自慢の小さくて軽い体で飛んだり跳ねたりできなくなってしまいました。
逃げているうちに見つけたのは、熊の巣穴でした。くじいた足がズキンズキンと痛んでもう走れません。小狐はこのままでは死んでしまうと思いました。猟師に銃で撃たれて死ぬか、それとも熊に食われて死んでしまうか、どうせ死ぬならどっちでも同じだと、思いきって熊の巣穴に飛び込みました。
中にはたっぷりと枯れ草が敷き詰められていて、恐ろしい熊の匂いがたっぷりと染み付いていました。怖いなと思いましたが、引き返せば鉄の弾が体に食い込んで心臓を破るのです。
どうせ死ぬのだと言うのなら、どこかの熊の命に変わってしまう方が何倍も素敵な気持ちがしました。その時、鼻先がなにか毛むくじゃらのものに触れました。これはきっと熊です。
ところがこの熊はおそろしく体が大きいのですが、体中が血に濡れて真っ赤に見えました。どうりでこの巣穴は熊の匂いでいっぱいのはずです。灯りでもあればきっと、この巣穴が真っ赤だったことがわかるでしょう。
小狐は熊を見て、とてもあわれに思いました。元気であれば森の王にもなれたでしょうに、彼はきっとこのままこの巣穴で一匹死んでいき、腐って骨になるのでしょう。ところがまだ小狐はほんのちょっと足をくじいただけです。
洞窟の奥へと、熊がいることをわかっていながらも勇敢な猟師巣穴に入ってくる音が聞こえました。
熊は寝そべったまま、気だるそうにこう言います。
「巣穴の奥に隠れてろ。俺が代わりに飛び出してやる。俺はもう生きられないから。まだまだ元気なおまえを守らなければいけない」
そして、大きな体をのそりと動かして立ち上がろうとします。小狐は後ろを振り返りました。まだまだ狩人は諦めずに巣穴をはいつくばって進んでいます。
「駄目だよ、君は生きなきゃ」
小狐は言いました。
「食べるならまだしも、食べれない命を犠牲にしちゃいけないんだよ」
至極全うな森のおきてでした。
狐は元気でしたから、熊が先に進むよりも先に飛び出しました。狩人はまさか逃げる狐が飛びかかってくるなんて思いもよりませんでした。腕を噛まれてびっくりぎょうてん、低い巣穴に頭をぶつけて悲鳴をあげながら後ずさりしましたが、狐は腕に食らいついたまま狩人に引きずられていきました。
小狐の執念深さに狩人はすっかりまいって、腕から血を滴らせながら逃げていきました。
小狐は口中を血まみれにしながら泣いていました。
「よかった、よかった……誰も犠牲にはならなかった」
だけど、小狐の心臓はバクバクうなって、目の前はぐるぐる回り、そのまま気絶してしまいました。
――なぜかとよいち童話風味一本が入っています。