そもそも、淳くんが家族間のことについて一番問題にしていたのが、
橿原明成(父)に対しては
「父さんは僕を愛してくれていた、なのにそんな父を平気で否定した僕」
について
父への懺悔という形で後悔し続け、自分の行動、
間違った記憶に従っていることがわかっていてもジョーカーとして活動し続けます。
で、本題の純子さん(母)に対しては
「僕と母を振り返りもせずに愛人のもとに行ってしまった愛のない母」
という思いで
母への断罪を誓って行動をし続けます。
「愛のない母」だと思っていた母親像は、オクの間にて、
メタル・マムという形で具現化し、淳を罵ります。
オクの間では、再び淳の記憶が呼びさまされた。アラヤ神社で遊ぶ幼い仮面党の面々。淳を迎えに来たのは、現在仮面党を率いているあの父親だった。その父親は、幼き仮面党の面々が噂していた通り、カッコイイ父親だった。「ママが待っているぞ」という思い出の中の父の言葉で、淳は母親に否定されていた自分を思い浮かべた。
淳は、母親から疎んじられて育った。若くして結婚し、夫と子供を邪魔者としか思わなかった女、黒須純子。転校につぐ転校で友もない淳を無視し、愛人と暮らす母。若さを取り戻すためにジョーカーに願いをかけ仮面党の四天王となった母。母親が自分を拒絶したことへの哀しみ、そうした淳の思考が、先の栄吉の父親と同じように、敵対する金色の母親を作り出した。(ペルソナ2罪 公式ガイドブック 完全版 P.244)
女の声 「ああ、なんて鬱陶しい子だろう!!」
メタル・マム(出現) 「淳・・・お前とパパさえいなければ、私は自由になれるの。フフフ・・・お前なんて、生まれてこなければよかったのよ!!消えてしまいなさいな。」
「アッハッハ!!淳は私の子よ!!どうしようと私の勝手だわ!!」
(セリフ引用:
Na/Na/Shi様)
母親から向けられた「消えてしまいなさいな。」という言葉にショックを受けた
淳くんは、本気で消えてしまいそうになります。
この思いの中にはもしかすると、思ったより自分が
母親を愛していたことへのショックもあるんじゃないかなぁと思ったりして…。
ロサカンディータにて、あまり母親について語ろうとしなかった淳くんとか思うと、
自分を愛していない母親に対して語りたくない感じがありますし、
ニャルの台詞を否定しきれなかったところからみて、
本当は憎んでいたのではないかと思います。
要は、淳くんがこういうジョーカーとして暴走してしまった裏には、
両親への愛があったことは絶対です。そして、父への申し訳なさ、母への憎しみはラスト、ニャルラトホテプとの対峙で、
二人から愛を告げられることによって、昇華されます。
父への懺悔が報われた瞬間…はりつけられた橿原 「ああ・・・淳・・・淳なのかい・・・?済まない・・・淳・・・ 私は・・・お前達次世代の子供が、苦しむことのない、理想的な人間になれればいいと・・・イン・ラケチを記したんだ・・・でも、それは幻想だった・・・夢を求めるのに夢に縋っては、人の心は何も生み出さない・・・私は愚かだった・・・」
偽橿原 「感動のご対面だ。さあ、早く懺悔するがいい。お前の最後の願いも、既に叶っているのだからな」
回想・時の環の間
クイーン・アクエリアス 「ああ・・・淳・・・し・・・あわ・・・せ・・・に・・・」
偽橿原 「あの女も、お前に若く美しいままでいたいと理想を告げたではないか。ジョーカーの正体が息子だと知った時の顔、見物だったぞ。」
母への断罪が本当の願いではなかったとわかった瞬間…はりつけにされた淳の母 「・・・自分の夢しか見えなかった、母さんを許して・・・」
偽橿原 「父への懺悔、母への断罪、全てお前が望んだことだ!!もっと喜べ!!矛盾しているぞ!!」
「ハハハハハッ!!淳!!お前がやらないなら、私が断罪してやろう!!」
(腕をかざすと淳の父、母が稲妻に消える)
(セリフ引用:
Na/Na/Shi様)
二人はニャルラトホテプにより葬られてしまいます。
両親とのすべてに決着がついた淳は二人の仇を取るために
武器を取り、ニャルラトホテプと対峙します。
そして、消えて行った二人の魂もまた、
懸命に両親への愛を渇望した淳の姿を見て、
淳の愛を感じて消えていったことが公式ガイドブック完全版に書いてあります。
息子を愛していた父の魂は、黒須の懺悔により、事件の最後で救われる。消し飛ぶ彼が最後に得たのは、息子の愛による幸福感だった。(ペルソナ2罪 公式ガイドブック 完全版P.258)幹部となった彼女は、ジョーカーが淳だと知り、自分の愚かさと息子の愛に気づいたのである。
(ペルソナ2罪 公式ガイドブック 完全版P.265)
だから私は、罪の時点で、黒須淳は全ての母への憎しみも父への懺悔も、
両親への愛の渇望も乗り越え、友人たちとの記憶と引き換えにすることは
とても悲しいことだけど、新たな気持ちで罰世界へと
旅立っていったのではないのかなと思います。
敗北ではなく、逃避ではなく、ジャンプの助走を得るための後退。
それは、新たな歴史の幕開けである。そして再び、彼等は出会う。新たな時の中で。
(ペルソナ2罪 公式ガイドブック 完全版P.245)