ニューロフォリア きみが大事な夜だから。
2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

きみが大事な夜だから。

メリークリスマス達淳っ!!!

お正月はあきらめたぜ……。これで勘弁しておくれやす!!!

kimidai.jpg

女装エロ注意って私のサイトを女装が嫌いな人が
みるのかどうかわからないけど一応注意www

   1

「ぶぇーっくしょい!!」

雪が降ってる。そういや今日は冷え込むって言ってたっけ。
ライダーグローブは長い間使い古して、指先に穴が開いてしまった。
霜のついたハンドルが指に触れるたび、たまたまがキュってする。

「……っあー……」

星を隠した雲のヴェール。
紺色の空、チラチラと放射状に降る真っ白な雪の点。
肩にフルフェイスメットが当って痛くなっても、
真正面からその景色をとらえたくて、首を無理に後ろに曲げてでも、
雪の降る空を見上げる。

「おーい。その調子でさ、クリスマスにも雪、降らせてくれよー!!」

メットの下で小さくつぶやく。
声を出すたびに、シールドが曇る。
声が内側に響くせいか、フルフェイスメットをかぶっていると
独り言が多くなる。

「恋人はサンタクロースってか……じゅんくろーすってーかー……」

ギアを入れ、アクセルを握って走り出す。
デートコースを決めるって、こんなに楽しいものなのか。
さっきからわくわくし通しだった。
普段なら文句でも言いたくなるくらいの寒さなのに、
淳を楽しませるために街の景色を眺めていると、
何もかもがキラキラ光って見える気がする。
ここを通る時はきっと、淳はあのケーキ屋さんに
目を奪われるんだぜとか、あのおもちゃ屋さんの
ショーウィンドウのでっかいクマのぬいぐるみとか……。
クマちゃん。興味惹かれたりするのかなー、あのクールな淳が?
淳はなんだかんだで男だもんな。
さすがにクマのぬいぐるみなんてほしがらないだろう。
でも、クマちゃんほしくてショーウィンドウにしがみついてる
淳がみたいぞ。とか、いろいろ考えながら走るのが楽しい。

いつもなら、店の並びなんて気にもしないし、
街の風景になんて目を奪われたりしない。
バイト帰り、家へ向かって一直線に走る道。
俺にとってはなんでもない道なのだが……。

事件も終わって平和になって、12月。
元から一人暮らしだったし、親や兄さんは
元から俺の行動に関してはあきれ果てて、口を挟まなくなった。
前住んでたボロアパートを解約して、
独りぼっちになった淳の家に無理やり転がり込んでやった。
最初は迷惑だ、帰れ、家族のところに行けっ!と
俺を邪険にしていた淳だったが、
一週間くらいすれば、流石のいじっぱり淳も、
あきれたように笑いながら、黙って俺がそこにいることを
受け止めてくれた。

「ふふふ……淳ってさ、案外ロマンチックなのとか弱いんじゃね?」

ホワイトクリスマス、駅から降りたら雪景色の夢崎区。
冷たくなった手をこすり合わせてあたためながら淳が言うんだ。
きれいだね……とかさ。
もう雪は踏み荒らされて真っ黒になってるかもしれない。
でも、街はイルミネーションに溢れ、別世界になっている。
淳なら、星が見えにくくて、少しさみしいねなんて言うかもしれない。

スタート地点はこの駅だ。
バスターミナルにバイクを止めて、ホームを見つめる。
スモークシールドって便利だよな。顔が見えないからニヤけ放題だ。

俺たちはこっから先、今回のクリスマスのメイン、
このショッピング街の中央に設置された、
巨大クリスマスツリーに向けて歩いていくんだ。
淳はもちろん、この街の目玉のことは知ってるから、
特に何も言わずに俺の隣にいることだろう。
しかし、淳はなにぶん、家庭教師だの勉強だの、
何かと家の中に引きこもっているお仕事が多いわけだ。
だから、ただでさえあまりなじんでいない雰囲気に
わくわくしているのに、さらにクリスマスムードで
普段ここを通ってる俺以上に楽しんでくれるに違いない。

本当なら、テーマパークとかに連れていけばいいんだろうけど、
今の淳は節約家になっているため、あまりワガママを言わない。
理由はまぁ、俺と淳の大学進学のための費用集め……とか。
家賃……光熱費……食費……その他もろもろだ。

淳が家計簿を前に頭を抱えているのを見るのはしのびない。
淳の父さんと母さんの保険や、とんでもない額の黒須家の全財産は、
淳のものになったのだが、淳はそれを、自分たちの力で
本当にどうしようもなくなったときまでは使わないよ、と
しまいこんでいる。

淳は、できるかぎり努力をしたい、そう言っていた。

魔法の力もそう、ペルソナによる能力値の増加もそう。
俺たちにはいつだって使える財産が山のようにある。
でも、俺たちはなるべく、ふつうの人間として生活をしていきたい。
皆でそう誓いあった。

そして淳は、誰よりも『ふつうの生活』を知らなかった。
家庭環境、ジョーカーとしての活動……
ニャルラトホテプに植え付けられた歪んだ記憶。

誰かと一緒に食事をする、たったそれだけでも、
淳にとっては貴重な体験なのだとほほえんでくれた。

俺は、そんな淳の姿を見るのが……愛しくてこらえきれない。

哀れみ……ではない。純粋に悲しかった。
こんなにきれいで、やさしくて、かしこくて……
世界から切り離されて培養されて育ったような淳が、
少しずつこの世界に馴染んでいく姿を見ると、
俺は……愛しく思う気持ちをこらえきれない。

俺と一緒に暮らすようになってから、ふつうに怒り、
ふつうに悩み、苦しみ、ふつうに笑うようになった。
淳にとってはふつうがふつうでないんだそうだ。

怒りも悲しみも、ふつう以上に感じ、ふつう以上に苦しんだ。
もう、もうそんな思いはしなくていい。
俺が淳と一緒にそういった嫌な感情を背負ってやるんだ。
淳を襲う嫌なこと全部、俺が全身で受け止めてやるんだ。
淳はもう、昔みたいに苦しまなくていい。
これからは俺といっしょに、淳は『ふつう』に染まっていくのだ。

「……いかんな、しめっぽくなってきたな……」

ワクワク気分を取り戻さねば……。

「とりあえず、だ。プレゼントは買ったわけだし、
 この高額なプレゼントを意地っ張りな淳に
 ちゃんと受け取ってもらわなけりゃならないわけだよ……!」

ターミナル沿いの道を走りながら、たまに止まっては、
店の並びを確認する。
ショーウィンドウを覗くたび、ソワソワ値札を確認している
俺の姿が映り、淳は申し訳なさそうにほほえむんだろう。
多分、淳はそんな俺の姿を見て、こう思っているはずだ。

「達哉ってー、バイトで忙しいけど大したかせぎじゃないしぃ~
 僕にプレゼントくれる余裕があるんだったら大学の資金ためとけーみたいなー」

うん。淳はこんな口調じゃない。

でもまぁとりあえず、値札を気にする俺に気づいたら、
ここから数軒先は、のぞきたくてものぞかなくなるはずだ。
……達哉は優しいから、僕はそれに甘えちゃいけないんだ。
なんて思いながらさ……。……なんてけなげなんだ淳……。
貴金属、時計、そういった高級ショップが混じり出すからな。
お坊っちゃんだからな淳。
前までなら平気でのぞきこんでたろうけど……

……で、中央に近づいて行くこっからが、
怒涛のケーキショップ&かわいい小物の店の並びなのだっ!!

かわいい淳は、思わずそういうものに目を奪われるけれど、
俺のお財布を気にしてソワソワするのをやめるんだ。
淳は演技がうまいからな……。
ちょっとぼーっとした視線でな、寒さで頬を赤らめながら、
遠くにある巨大ツリーを見て……

「ねぇ、達哉、ツリーまではもう少し、あるかなぁ?」

あー俺の声キモいわ。ダメ。ぜんぜんダメ。
俺の声じゃ淳の声色真似てるつもりでもキモかったわ。

淳は言うんだ。こんな手の中に収まる、いつだって買える物よりも、
今日しか見れない、大きくて大切な思い出の方が、
僕には何よりうれしいんだよって。

バイクで行けなくなるから、ここから先は降りていく。
歩道沿いにバイクを止めて、チェーンをかける。
ライダーブーツに踏まれた雪は、圧縮されてギュッギュと悲鳴を上げる。

「寒いかぁ?淳」

俺はそう声をかけるんだ。

「もう帰ろっか……ほら、大きいってったって、ツリー、
 大したことないな。ピッカピカ光ってるとこ見てるだけじゃ、
 風邪引くだけでなんも楽しくないわな。
 こっから先、行ってもしょうがなくないか?」

したら淳は怒るわけだ。

「ほんっと君って、デリカシーがない……」

あーやべ、自分で言ってて涙出てきたわ。
あの辛らつな淳の目でにらまれるんだ。
俺は淳の手を引いてさ、駅へ引き返そうとすると、
きっと淳は意固地だからさ、帰ろうとしないんだぜ。

「じゃあ、ここに何をしに来たのさっ!!
 どうして僕を連れてきたの……」

淳は期待してたわけだ。ふつうにきれいだねっていいながら、
お互いにツリーに見とれあうだけの、ふつうのカップルのような……
そんな……人生の隙間みたいな時間をさ。
淳が今まで感じてこれなかった……そんなささいな時間をさ。

しかし、俺は心を鬼にしていじわるを言うわけだ。
やべー、淳泣いちゃうぜ?泣いたらどうする?
俺も泣くか?泣こうか。ダメだ。泣いたらかっこ悪い。

「だってさ、淳がガマンばっかしてたら、楽しくないだろう?
 俺はさ、淳にクリスマスプレゼント買うためにここに来たんだから」

ここでだな、カリスマスマイル発動なわけだ。
ドヤァってなもんだ。
淳は……メロメロにはならない……だろうな。
やさしい淳はさ、しょうがないなぁってつぶやきながら、
しばらく考えた後で言うんだよ……。

「じゃあ、僕……ケーキほしいな!って」

ほら、俺ら二人きりだしさ、俺って甘いもの苦手だし、
とりあえずホールケーキは買わないだろう?
きっと一切れだけのケーキを買うんだよ。
そしたらどうだ。
淳のクリスマスプレゼントはたったの
300円~600円程度で済んでしまう。
そんなんで俺の気が晴れるかっていう。

俺はサーチ済みなわけよ。
ここらへんで一番おいしいケーキ屋さんはどこかって。

フルフェイスメットを脱いで、目的のケーキ屋さんの看板を見上げる。
俺のそばを通る幼女が独り言をつぶやき続けていた俺を
無邪気に指さして、嘲笑っている。
目が金色に光っていないかチェックするが、
幼女の目をのぞきこむ俺をいぶかしんで、母親が連れ去っていった。

そんなこんなを気にせず店内に入ると、
ムっとするような甘ったるい匂いが襲ってくる。

……兄さんの邪気のない笑顔と、差し出された
……大量のケーキのトラウマが俺を襲う。

……だがしかし、淳のためならガマンしてみせる!!

こぶしを握りしめ、眉間にしわを寄せる。

俺はトラウマに打ち勝つっ!!

「あのーすみません。ケーキの予約してもいいですか?」

さっきから一人でごちゃごちゃやってる男が、
突然ふつうに声をかけてきたせいか、あきらかに戸惑っている。

まぁ……店員さんにお願いをして、一人分サイズのケーキを
オリジナルデザインで作ってもらうことにしたのだ。
オリジナルといっても、店にあるやつのちょっと豪華版だ。

「で、これをデコレーションにちょっと
 乗せれるようにして欲しいわけなんですけど……」

男の店員さんは、本当の淳へのプレゼントを見て、
俺と目が合うと、ニヤリと笑った。おぬしやるなの目である。

ケーキの上に乗せるのは、小さな雪の結晶を模したデザインの、
……小さなカギ。
このカギは、本当のプレゼント、金の万年筆の入った箱を開けるカギ。

ふふふ……淳に黙って俺、バイト増やしてがんばってたんですよ。
淳ならきっと、喜ぶより先に無駄なお金使わないって
言ったじゃない……。と俺を攻めるかもしれない。
だから、無駄なお金を使わないために俺、バイト増やしたんだ。

俺、がんばったんですよ……。
バイク屋のバイト終わった後、夢崎区までとびだして、
ティッシュくばりやらなんやら、ちまちま短期バイトやったわけです。

俺がカギを見せたとたん、気持ちが通じあった店員さんとノリノリで
デザインを決める。プレゼントボックスを模したデザインに決まった。
ホワイトチョコのリボン、真っ赤な箱は
フランボワーズジャムで覆った、ミルクムース。
よくは知らんが女の子に人気があるそうだ。

そうだ。話に夢中になっててうっかりしてた。
淳は女の子じゃなかった!!!!
だって店員さんと、彼女の話してたのに、なにも誤解なかったもの!?
困ったな……でも多分大丈夫だろう。
チョコレートが好きって言ってたし……。
……甘いもの好きなんじゃないかな……?

……でだ、淳はさすがに思わないだろう。
むくれた俺がテキトーに選んだように見えたお店で
まさか、俺が先にケーキの予約をしていたとか……

「ん?」

気のせいか、今、チラっとこう……
バーテン的な格好をした淳が通り過ぎた気がするんだけど。
なんだ。この隣はカフェスペースになっていて、
そこのウェイターが動いているのを勘違いしたみたいだ。

「とりあえず、こ、こういうのお願いします。お金、先払いでっ!!」

店員さんからさっさとケーキを受け取り、入り口でいうわけだ。

「サンタさんって本当にいるんだな。
 クリスマスプレゼントだぜ……淳……」

ケーキ箱を開く前に、そっとのっける雪の結晶のようなカギ……。
家に帰ると、テーブルのうえに置かれたベルベット張りの箱。
中には、金色に輝く万年筆。
俺は、そっとささやくんだ。

「これからも、一緒にがんばっていこうな……」

涙を流して喜ぶ淳……。

……の予定なのだが、も、もしもだ。
文句言ったら……俺がちゃんと……数ヶ月、
いつものバイトにプラスして、今日の日のために
がんばったことを言ってやろう……。
そしたら……さすがの淳も受け取ってくれるはず。

なんだか視線を感じて、もう一度ふっと
カフェスペースに目を向けたが、
淳に似た背中のウェイターの姿は消えていた。
俺もついに淳への思いが膨れ上がりすぎて、チラチラっと
淳の幻が見えちゃう危ない人になってしまったのだろうか。
それはそれでいいかもしれない。
いつだって淳の幻が見れるならずーっと幸せってことじゃないか。

……あ、いたいた……さらりと流れる黒髪も、
その細いボディーラインも淳に似ている気がする。
でもこういう場合、声をかけたら
超ザンネンな顔してたりするんだろう?

……でも、淳だったらどうするよ。
いやいや、そんなわけがない。
淳は今頃、家庭教師に行っているか、図書室にいるはずだ。

黒のカマーベストは首の後ろ部分をベルトで止め、
前がふつうのベスト状、腰あたりに布地が少しある
どこかエプロンを連想させるデザインのものだ。
真っ白なワイシャツに黒の蝶ネクタイ、
店のロゴがプリントされたこげ茶のミドルエプロン。
もう一人、接客をしている店員をじっくり観察してみる。

それにしても、背中しかみてないけど、あの細身のウェイター、
この店の制服が良く似合っている。
もし淳がこんな格好してたら、いい感じなんだろうなぁ。
……ワイシャツとって裸カマーベストとかフェチすぎるか。
淳の背中……キレイだからさぁ……後ろから見たとき……

「お客様、ご予算はこのくらいになりますが……」
「あ、あぁ、こ、これでお願いします!」

いやいやいや、俺は何を考えているんだ!


   2


「ごめん……達哉……24日、
 どーっしても遊びに行けなくなっちゃって……」

顔の前で手を合わせ、淳が泣きそうになりながら頭を下げる。

「うえぇえええええええええええええっ!?」

俺の身体にジオンガが落ちる。

「ひどい、ひどいぞ淳!!!!
 俺の"二人のラブで、サンタさんも思わず衣装どころか
 耳までまっかっか作戦~わし、もしかして来るおうち
 間違えちゃった!?~"が……!!!!」
「……なにそれ……」
「でぇーっくしょい!!!」

あわてて向きを変えてでっかいくしゃみをする俺に、
淳が苦笑いをしながらティッシュを差し出してくれる。
かっこわるいところ見せたなー……
あんまり見るなよと思いながら鼻をかむ。

「第一さ、その作戦が何なのかしらないけど、
 実行しなきゃいけない人が、こうして風邪引いて寝込んでたら
 意味がないよね?」
「大丈夫だって。俺のペルソナは太陽だぜ?
 いつだってぽかぽかの……へくしょい!!」

起き上がろうとすると、少し怒った顔で俺の体を押さえつけ、
布団をやさしくかけてくれた。

「もう!体がぽかぽかになってるのは熱があるせいでしょう!
 熱のせいでテンション上がっちゃうのわかるけど……でもね」

俺の額を優しく濡れタオルでふいてくれる。

「丁度いいじゃない?達哉はがんばりすぎなんだよ。
 今日は僕もおでかけだし、ゆっくり休んでさ、風邪を治して、
 イブじゃなくてクリスマス本番を楽しめばいいんだよ……」
「いやだぁー淳とすごすはじめてのイブー!!」
「……鼻声でいうな!!」

たんたんとボタンを外してパジャマを脱ぎ、
シャツを着込む様子をじっと見つめる。
見えたっ淳のちくび見えたっ!!と思った瞬間にらまれる。
俺の手が思わずワキワキしていたようだ。

「……ったく風邪ひきはおとなしく寝てなさい!!
 それと……今日、こんな時で申し訳ないんだけど、
 帰るの遅くなるかも。家庭教師先のお宅で、
 ごちそういただくことになっちゃてさ……」

困ったような笑顔。
というか、いつもよりフォーマルな印象の服を
選んでいたのはそのせいか。

「はぁああ!?淳がいないクリスマスイブ!?
 のりのないのりしおチップスじゃねーか!!
 そんなら最初っからふつうのポテトチップス食べるってーの!!」

ベッドの上で暴れて抗議をしてみる。
俺より家庭教師先の子どもが大事か!!なら俺も子どもになってやるっ!!世話を焼いてくれ淳っ!!

「……歯にのりがつかなくていいんじゃない?」

あー淳のクールな視線が俺をホットにするぜ……

「わかってない……淳……あのなぁ……
 のりの風味の大事さをなめるな!!のりがあるのとないとじゃな……」
「……そんなに元気なら……バイトいけば?」

布団を抱きしめて転がる姿をにらみつけられる。
あぁ、そんな淡々と俺を責める淳も最高です。
もう、バイト先には風邪がひどくて休むと電話したのだが、
こんなバカやらかしてるけど、体がだるくて仕方がないのは本当だ。

「うぅ……淳……」

なんとなく甘えてみる。
これでちょっとでも早く帰ってきたらなとかいう……作戦。

「んもー……コロコロとよくも態度変えてくれちゃって……
 仕方ないだろう?
 ……僕、家庭教師先の子に気に入られちゃってさ……」
「やだー死ぬー!!しんどくて死ぬっ!!
 こんな時に淳を奪われたら俺はー!!」
「こらっ!だだっ子か!!」

淳のほほがほんの少し赤くなっている。
見たか……これが淳をもほだす、カリスマだだっ子だ!!

淳の細い腰に抱きついて、ベッドに引きずり込もうとしたが、
突然意識がもうろうとして、へにょへにょと崩れ落ちる。
だめだ。本気で……視界かすんでる……。
無理にテンション……上げてきたけど……限界か……。

そのとき、冷たい手が俺の額に当る。

「……しんどくなったら電話かけてもいいけど、
 ちゃんと常識の範囲内でね?
 1時間に1回とか、かけてきたらさすがの僕も怒っちゃうから……」

鼻の頭をピンっとはじかれてベッドに倒れ込む。

「僕に心配かけないように演技するの、もうおしまいね……?」

ちゅっとほほに軽い口づけ。

「……あい」

しっかりとした作りの、紺色のトレンチコート。
ワインカラーのストールを襟の中にいれ込む。
いいところのお坊っちゃん感がにじみ出ている。

去っていく時、それでもどこかしらコートで隠しきれない、
腰からお尻にかけての色気のあるラインを見て、もう一つ冗談。

「今日、電車だろ?痴漢に気をつけてなぁ~」

淳がふぅっとため息をついて顔をこちらに向ける。

「……そうそう達哉みたいな人には会いませんから!
 黙って寝て、とっとと風邪を治しなさいっ!」
「……あいあい……」

ズビズビとティッシュで鼻をかむ。
上手にできない呼吸、酸素不足で、ぬぼーっとした頭。
口をあんぐりとあけて天井を見上げる。

「……はーっ……」

ガチャンっと重厚な鉄のドアが閉まる音を聞くと、
俺はベッドを飛び出した。

「淳が行けないんじゃしゃーないわな」

……とりあえずケーキ、もらってこよ。

ゴソゴソといつもより厚着をして、冷蔵庫から
牛乳を出してグビっと飲む。
痛む喉にまろやかさ、熱のこもる体にはこの冷たさがうれしい。
暖房のスイッチを消したのを確認して、
メットを小脇に抱え、昨日、雪の中を歩いたせいで
若干湿ったライダーブーツをはいて外に出る。

ほぉっと息を吐いてみると真っ白な息が立ち上った。

「……うー。さむっ……」

ぎゅっとグローブをはめるが、指の先っちょの
ほつれがひどくなってきている。

「……こいつも潮時だなぁ」

新品の皮革製グローブはどうもゴワゴワするし、
使い古した感覚になるまでだいぶかかってしまう。
一度、吟味に吟味を重ね、これが最高だと思って買った一品だから、
よっぽどのことがなければ大事に使いたいと思っていた。
でも、この冬を越えたらさすがにアウトだな、と思うと少し悲しい。

エレベーターで下に降り、愛車、ソエジマにまたがる。
フルフェイスメットをかぶると、冷たい風が遮断され、そっとため息。

「とっとと帰るぞー」

今日も元気だ独り言が多い。

   .*.;☆;.*.

例のケーキ屋さんに向かって歩いていると、
クリスマスケーキを店の外で売っていた。
あたたかそうだけど、タイツだけの脚が寒そうでもある
モコモコのサンタワンピースを着た女の子たちと、
この店のウェイターの男性が笑顔で応対している。
こんな寒いのにごくろーさんっと思いながら
店内に向かおうとした時、足が止まった。

「あれ、淳じゃね?」

どう見たって淳だ。お客さんにお礼を言う聞き慣れた低い声。
頭を下げるたびにさらりと流れる黒髪、
やさしげに細められた目、あの華奢な体。間違うわけがない。
それにあのコート、今朝着てったやつじゃないか。
コートの下からは黒のミドルエプロンとスラックスが覗いている。
多分間違いない。昨日予約に行ったとき、
カフェスペースで給仕していたのも、淳だったのだろう。
淳はなぜだかわからないが……接客業をしていた。
少しムっとする。

「……しっかし、なんだって嘘までついて……」

俺は街頭に身を寄せながら淳を見守ることにした。
寒い中、ふわふわのサンタ帽をかぶって声を張り上げて呼び込み、
ケーキを受け取るご老人や子どもたちに笑顔で応対していた。
その隣には二人ほど、同い年だろうサンタワンピースの女の子が
同じようにがんばっていた。

さむいねー!!なんて言ってるんだろうか、
女の子達がそわそわ飛び跳ね始めると
笑顔で淳がストーブに向けて手を差し出す。
ここまで聞こえる黄色い声をあげながら、
女の子達はとびつくようにストーブで暖をとり始めた。

……なんだ。うまくやってんじゃん。

やはりここのケーキ屋は人気があるのか、夕暮れにもなると、
箱がほとんどなくなって、店の中から淳と同じウェイター姿の男が
追加の箱をカートに乗せてやってきた。
すごく和やかな雰囲気で、見ているだけで
いい店なのだなというのが伝わってくる。
暗くなってくると客層が変わってきて、帰宅途中の学生や、OL、
いかにもお父さんといった感じのサラリーマンが買っていく。

星が辺り一面に輝いた頃、店じまいとなった。

「エックシュ!!」

あー頭がぼぉっとしてきた。
ついつい淳がバイトがんばってる姿を見るのが
なんだか楽しくて、長居してしまった。

そろそろ帰るかーって……そうだ。
淳がいるからケーキとりに行けなくて困ってたんだっけ……。

その時、淳がこちらを見ている気がした。
もう視界がぼやけてきてよくわからない。
目をこすり、さすがにヤバイなこれは、
いい加減あきらめて帰ろう……とモールの道を
半分ほど引き返してきたときだった。
突然背中をつかまれて、倒れそうになる。

「も、もう!なんで風邪引きのくせにそんな……足……早いかなぁ!」

胸を押さえて荒い呼吸をおさえつけようとしている、
ウェイターがそこにいた。

「んあ?」

鼻水ぶらさげながら振り返ると、
小さな箱を大事そうに抱えながら、ようやく面を上げる。
……淳だった。

「お、お客さん!ご注文のケーキ!
 ちゃんと……受け取って帰ってくれないと……困ります……!!」
「あ、あぁ……す、すまなかったな……」

淳は少し怒ったような顔をしながら、
ティッシュを取り出して、俺の鼻を押さえ込む。

「ほら、チーン!」
「んあっ……」

不恰好だろうな。もっこもこに着込んだ俺が、
走ってきて息もゼーゼーなウェイターさんに鼻をかんでもらっている。
俺がセブンスのカリスマ周防達哉だなんて誰も思うまい。

「……ちゃんと寝てろって言っただろ……」

……めずらしく淳が……怒っている。

「……んっ……」

ケーキの小箱を受け取る。
ぜんっぜんロマンチックじゃなくて申し訳ないな。
……淳をよろこばすどころか、怒らせてしまった。

「もしかして……そのケーキ……サンタさんもびっくり
 ラブラブ作戦とかなんとか言ってたやつ……?」
「そっ」

突然、淳に腕を引っ張られる。

「バカっ!!バカバカバカ!!!こんな……フラッフラになって!!
 僕のことなんて気にせずにとっととケーキ
 取りに来てくれたらよかったのに……!!」

淳の顔が真っ赤だった。
バシバシバシっと淳の連続攻撃を受けながらふらつく。

「ちゃんと二人とも元気じゃなくちゃ……
 なにしたって楽しくないでしょう……」

淳の目が潤んでいる。

「……風邪……治してねっていったのに……逆にこじらせるなんて……」
「……いや、淳、バイトしてる姿、楽しそうだなぁと思ってさ……
 俺や、舞耶姉たち以外と一緒にいても……淳……笑うんだってさ……」

表情がくずれていく。それを見られたくないというように、うつむく淳。
涙をこらえるように拳を握りしめ、次に顔を上げたときはまた、
怒り顔になっていた。

「……と、とりあえず、早く帰って!で、布団でおとなしく寝てること!
 ぼ、僕が帰るまで少しでも元気になってて!!も、もしまた無茶してたら……」

ぷんぷん怒りだした淳のそでをくいっとひっぱり、空を見上げた。
淳は、俺の真剣な表情に、何を見ているのかと、同じように空を見上げる。
暗くなった空に、色鮮やかなイルミネーションで飾り付けられた、
大きなツリーがそびえ立っていた。

「あ」

俺の作戦通りの風景。

「……きれいだね……」

淳が、今気づいたよ……と小さくつぶやく。
そうか、バイトしてる間はツリー見てる場合じゃないもんなぁ。
七色に光るイルミネーション。
それぞれの電球はそれぞれの大きさの光をきらめかせる。
巨木の姿は暗くてもう見えないけど、紺色の空にくっきり浮かぶ、ツリーの形。

ぼぉっとする頭で眺めていたとき、ぐいっと腕を引っぱられ、バランスを崩す。

「んなっ!!」

おどろきながらかたむくと、そっとほほにあたる、あたたかい唇。

「……だ、誰も見てませんように……」

淳が行動を起こしてからとたんに気弱になったのがかわいい。

「スキだらけ……だったよ……」

無言の帰れコール。いつもの俺なら、あれほどまでに体勢を崩さない。
そのくらい達哉は弱ってるんだから、とっとと家へ帰れ……。
そう言いたいんだろうな。

「あっはっは!よし、満足した。帰る!」

腕をぶんぶん振って笑う。

「……う、うん……ちゃんとおうちに帰って待っててよ……
 ほっぺた、だいぶ熱かったよ……熱、あるんだろ?」
「……まぁな、淳にお熱だからな……」

べしっと背中をたたかれる。

ほぉっと真っ白な息を吐いて、天然のイルミネーションで輝く、
紺色の空を眺める。ぽつりぽつりと、真っ白な雪がちらつきだした。

「……正直、頭ぼぉーっとしてる」

俺の本音に、淳は困ったように笑う。

「……気をつけてね?事故ったら許さないから」
「……っへへ……あーい……」


   3


家に帰ると、すぐにベッドに横になる。
昔、淳のお父さんとお母さんが使っていたセミダブル。

「……はー……ぜー……」

ぼやける視界。相当やばいみたいだ。
アイスノンだってもうぶよぶよで、役に立たないけど、
新しいのを取りに行く気がおこりやしない。

淳のいない真っ暗な部屋。
静かに眠りに落ちていった。



「うっ……冷たっ!!」

急に体中がひんやりしてびくっと縮こまる。

「達哉……かえってきたよ……」

小さく耳元につぶやかれる。

「おまえ……冷えてるなぁ……」
「ふふふっ……達哉の体……あったかい……」

淳の腕が、俺の腕に絡みついてくる。
そっか、淳はさっき帰ってきたのか……ぜんぜん気づかなかった。
ずっと寒い中でがんばってたからか、体はすっかり冷えきっている……。
布団の中、寝返りをうって淳の体を抱きしめる。
冷えた淳の体が、熱で火照る俺には心地よかった……。

やたら薄い布地、淳の細いボディーラインをなぞっていると、
たぎってくるものがある。
これは風邪で弱った俺をはげまそうと、
淳という名のエロサンタが俺の横に寝ているという
展開ではないのか。そうなのだろう!?
エロ同人みたいな展開なんだろう!?

ガバッと起き上がり、楽しみはとっておくタイプなので、
きちんと淳に布団をかぶせなおし、あわててサイドテーブルのランプをつける。
淳がわたわた行動する俺を、クスクスとイタズラっぽく笑いながら見てる。

「こぉら……風邪ひきのくせに。眠ってろ……」

しかし、思ったよりふつうでがっかりしてしまう。
真っ白なふわふわがふちどったフード付きの真っ赤な
サンタパーカーだ。ミニスカート丈のパーカーの下には、
黒のリボンで飾られた、真っ赤なガーターベルトが見えている。
寝返りを打ってこちらに体を向けると、スカートが少しめくれあがり、
太ももとスカートの間、真っ赤な下着の三角ゾーンがのぞいていた。
俺の視線の先を知っていて、少しだけ足を組み替える淳。

「ふぉあっ!?」

変な声を上げてしりもちをつく。
覚悟をしていたけど……やっぱり淳はかわいい。
倒れた俺を見て、クスクス笑ってる。

「メリークリスマス。でもね、風邪をこじらせた悪い子には、
 サンタさんはプレゼントをあげません」

俺の真正面に淳が立つ。真っ赤な網タイツ、ガーターベルト、
真っ白なふわふわの下からのぞきそうでのぞかないパンツっ!!
いろんな角度に目を向けて、パンツを見ようとしながら頭を下げる。

「ごめんなさい」

淳はゆっくりと床の上に倒れた俺の上に体をおろしていく。
サンタパーカーのファスナーを少し開けると、そこからのぞくのは……

なんだ、ふっつーのワイシャツか……

いや、サンタパーカーの下、ワイシャツにガーター+網タイツだと!?
なんというフェチズム……しかし……完璧主義の淳がそんな……
中途半端な格好をしちゃうものか?

いや、いいんだ。ワイシャツガーターか……フフッ……
ニュージャンル!!!!

「あぁ……く、クラクラしてきた」

これは淳の魅力にか、無駄に妄想力を働かせて
脳が疲労してしまったせいだろうか……。
そうだ。このエロサンタ淳がいじわるせずにすべてを見せてくれれば、
こんなことにはならなかったはずなんだ!!

「ほんっと君っておバカなんだから……!
 せ、せっかくプレゼントあげようと思ったのに……」

ジッと思いっきりファスナーを閉める。
そして鍛えられたSTRで、呼吸も荒く、熱でフラッフラな俺を
軽々とお姫様だっこした。

「すまん……俺が悪かった……悪かったから……」

うなされたように淳を求める俺を
ベッドに寝かされ、じっと淳が、さみしそうに
俺の顔をのぞき込んでいる。

「僕に悪いと思うなら……体……あたためてもらおっかな?
 今日、寒かったでしょ?……外……」

布団に潜り込み、俺の体にぴったりと淳がひっついてくる。

「俺のアポロがノヴァサイザーなのです」
「目を開いて寝言いわないの」

欲望でか病でか、熱を持った俺の体で、淳の冷えた体を抱きしめる。
きっと芯まで冷えてるんだろうな。
小さくふるえていた。それなのにわざわざこんな格好して……。
はやく温まれ……。

淳はいつだって誰かのために動く。
……誰かのために。

そう、今だって、滅亡しゆく世界で、どうしていいか戸惑う淳に
希望の道を教えてくれた子どもたちがいた。
淳は、その恩を、この街全ての子どもたちに返すつもりでいる。
丸く切り取られて、空を飛んだこの世界で、教師という道を選んだ。
大学さえもないのに、この先、どうしていいかわからない世界なのに。

俺……俺はなぁ。何も考えてないけど。
……と、とりあえず、大学……はこの珠閒瑠にはないけど、
淳と一緒に大学に行こうと思っている。
なんとかなる……なんとか……。

「なぁ、なんであんなとこでバイトしてたんだよ……」
「ケーキ屋さん?」
「しかもさ、大勢の人前にでるような、ケーキ売るバイトなんてさ、
 淳が自分から選ぶようなものに思えなくてさ」

淳は黙って、俺の首に腕を回して、俺の胸の中に顔を埋める。
風邪ひきの俺にこんなにぴったりくっつくのは、
よくないんだろうけど……。
しかも淳は疲れきってる。風邪、うつるだろうな。

……でも、淳は今、何より俺の体温を欲してる。

「僕さ、ふつうのバイトってしてみたかったんだよね。
 僕の夢に関係ないこと、たまには……ね?」
「……もしかして、根にもってる?俺がコンビニのバイト止めたの」
「……かもしれない」

だって、淳が突然コンビニの深夜バイトってお給料もいいし、
時間的にも家庭教師の後からでもできるし……とか言い出すから。
そんな危ないバイトやめろって言ったら、淳もムキになって、
珍しくケンカしたんだ。

淳は、きっと『ふつう』にバイトがしたかったんだろう。
もっと、世界が見たかったんだろう。

でも、あの時の俺には淳の心、そこまでよくわかんなくって……。

「達哉って僕のしようとすること、あんまり止めないじゃない?」
「そ、そりゃあおまえ……深夜のコンビニって一人だけでレジついたりするんだぞ!?」

レジだったり、ウエイターみたいな仕事だったり、
そんな大勢に接することの多い仕事をするなんて、
もし淳が、ジョーカーだったことを知る人物がいたらどうするんだ。
淳はきっと、この世界の中、大勢に憎まれていることはあっても……

せめて、せめて常に周りに誰か味方がいて……
いや、できればせめて、俺の目の届く範囲でさ……

そう思ったら、淳を誰の目にも触れさせたくなかった。

「心配しすぎだよ達哉は。僕、君と戦っても負ける気しないけど」

いたずらっぽく、小刻みにふるえながら淳が笑う。
んー、まぁ、そうかもしれない。

そして、一緒に生活していくうちに、少しずつ
『ふつう』になる淳を見て、俺は安心したんだ。

ようやく握りっぱなしだった淳の手を、
少しずつ放すことができるようになったんだ。

「でもね、達哉のそういう心配性……うれしいなぁ……
 だってそれ、僕のことが大切だからなんでしょう?」

当たり前を知らない淳は、当たり前の愛も知らない。
そっと手を絡めあう。

「男に心配されてうれしいか?」
「違うよ、達哉だからうれしいんだよ……」

初めてセックスしたの……いつだったろう。
お互いが、お互いを恋しく思い、すべての障害を取り除くために
服を脱いで、こうやって……。

でも、終わった後、俺の腕の中でぐったりする淳を見て思ったんだ。

俺はまた一つ淳を『ふつう』でなくしてしまったんだって。
当たり前に恋愛をする権利を奪ったんじゃないかって……。

「でも、僕だって達哉のこと心配なんだよ……
 君が風邪を引いた理由だって、だいたい予想がつくよ……」

淳の細い足がからみつく。

「僕だって、君に無茶なんかしてほしくないんだから……
 君だって、僕に秘密にしてること……あるくせに……」

淳の唇にそっと指をふれる。

「達哉の手……最近……冷えてる……」

俺は、謝った。
淳は、ほほえんだ。

僕はね、達哉だから体、許したんだよ。

「冬だからだ……」
「……それだけじゃない……
 君、しんどくなってもガマンして、
 がんばってることあるんでしょ……」

淳にはかなわない。

「僕ね、達哉に抱きしめてもらうでしょ?
 君は、僕のすべてを手に入れた気持ちになるって言ってたね。
 ……僕にだって、君のすべて……伝わってるんだから……」

まゆを潜め、切なげな表情を浮かべる淳。
からまる脚、股間に触れる手。

「……お、おい……誘ってんのか?」

いいのか?いいのか?俺、風っぴきだぞ……?

「風邪引いてなきゃ……最高にエッチな気分になれそうなのにね?」

パジャマのボタンが少しずつはずされていく。

「や、やめろよ……風邪、うつるって……」
「雪山で遭難したときってさ、素肌と素肌をあわせて暖めあう方が
 効率がいいって聞いた……ねぇ?あんがい、
 セックスしちゃったら、治っちゃったりして……」

淳がイタズラっぽく笑う。
胸をやさしくなでられ、胸板に口づけられる。
形を確かめるようになでられる。
心臓が破裂しそうに鼓動する。
乱暴な欲求……淳の気持ちをも考えない……乱暴な……

「おいおい……」
「大丈夫。僕、イブまでのピンチヒッターだったから」

俺を見ながらそう、ペロリと唇をなめないでくれよ……。

「ほ、ほんとうだな?明日、どうなっても大丈夫なんだな?」
「……うん……どうなっても……いいよ……」
「ぐっ……据え膳食わずばなんとやら……」

覚悟を決めてそっと真っ赤なサンタパーカーの帽子を脱がせると、
ピョコンっと真っ赤なウサミミが飛び出した。

「ふぁっ……!?ウ、ウサミミっ!?」

淳がクスクス笑いながら、袖をきゅっと握って腕を開き、
ファスナーを開いてとおねだりする。
淳のおねだりのままに、俺はそっと手をかけて、ふるえながら下げていく。
ワイシャツの襟が見えた、黒の小さな蝶ネクタイ。
そして黒のベスト……。

「もしかしなくても!!」

ボディーラインにぴったりの赤のハイレグのレオタード……!
そしてそこからのぞく伸びやかな
華奢なその足を包むのは、赤の網タイツ!

「クリスマスにウサちゃん出て来ちゃったっだとぉー!!」

こ、これは風邪も吹っ飛ぶ。布団を邪魔だあァ!!とふっとばし、
サンタパーカーでラッピングされたクリスマスウサちゃんを堪能する。

思った以上の勢いで押し倒されるようにして血眼でじぃっと
自分が見られているのが気まずいのか、かわいい淳は、
本物の小動物のようにキョロキョロと辺りを見回しながら、
恥ずかしそうにパーカーの袖で口元で隠している。

そんな反応なのにっ!!
今にもこぼれ出そうな淳のものでパンパンになっている
ハイレグなレオタード!!

「ぷぷぷぷっプップレゼント……いただきます……」
「ど、どうぞ……?」

潤んだ瞳で見上げる淳がかわいくって、額に口づけ一つ。頬に一つ。
そして……唇に、一つ。
淳の期待いっぱいでふくれあがったさらさらな素材の
レオタードの股間をまさぐっていると、ふと違和感を感じる。
少し布が分厚くなっている部分がある。
ピクンとふるえるものをさすりながら布を押し広げると、
小さなファスナーが隠されていた。

「うわぁコレ……」

ジィっと音を立てて開くと、網タイツに押さえつけられた淳のものが、
先端から汁をしたたらせて、ひくひくふるえていた。

「な、なんという親切設計なんだ……!!」
「た、達哉……こういうの好きかなって……」
「だっ大好きだっ!!」

と、特に淳のように普段も見た目も清楚な子が、
こんなエッチなことするためだけに作られたようなエロ衣装着るとかもう……!!

ご褒美でしかなかろう!!!

網タイツごしにぱくっとくらいつく。

「ひゃっ……」

淳がピクンっと反応する。網を開いて先端を出し、くりくりいじる。
抵抗するように持ち上げられた太ももをなでさすると、
網タイツがずれてもつれ、規則正しかった形を乱す。

「あぁっ……ねぇ……うれしい……?
 ……はぁ……んっ……ちゃんと、喜んでもらってる?
 こ、こんな格好してる僕……嫌いにならない……?」
「あぁ、あぁ!俺は喜びで打ちふるえているよ淳!!」

パジャマのズボンをずらし、風邪にも関わらず、
淳のエッチな姿にけなげに奮い立つその勇姿を表した。

「ふふっ……達哉ってホント……
 僕のこと……好きなんだね……?」

淳の冷たい手が俺の奮い立つアポロを握りしめる。

「っく……!!」

するすると形をなで、裏筋を刺激しながらしごき上げる。

「すごい……熱くて……ビクンビクンってしてる……
 風邪のせい……?ぼ、僕のせい?」

だんだんと淳の表情もとろとろになってきた。
淳の手を離させると、名残惜しそうに口元に持っていき、
手についたカウパーをなめとる。

「じゅ、淳のせいに決まってるだろ……」

網タイツ越しの淳のものと俺のものをあわせ、いっしょにこすりあわせる。
敏感になった肌に、網タイツがからみつく。

「好きじゃなかったら……一人でバイクで走り回って
 ……風邪引いたりしないよ……」
「えっ……か、風邪まで僕のせいなの……こっ困るよぉっ……」

二つ合わさって熱を持った陰茎。
くちゅくちゅと音を立てて、俺の手を濡らす。
はぁ……はぁ……と荒い呼吸が聞こえる。

「もしかして……エッチできなくなるから?」
「……!!ほんと……バカなんだから……」

真っ赤になって目を伏せる淳……あながち嘘ではないようだ。
淳は俺としたくてたまらないんだっ!!!
ウサギって年中発情期って本当だねっ!?

手首についたまっしろなカフス。細い腕を俺にさしのべ、首に腕を回す。
キスをしようとしたそのとき、そっと唇に人差し指。
ベッドサイドからティッシュを取り出して、俺の鼻にあてがわれる。

「はい、チーン」

興奮のあまり、鼻水が出てしまったようだ。
このエロい雰囲気に鼻水を差す風邪がにくい……。
かわいいこの薄く色づいた淳の唇にキスなんてしたらきっと、
風邪のやつめ、うつってしまうにちがいない。
俺が戸惑っているのを見ると、淳が悲しそうな表情をする。
そうだな。淳だってさみしいよな?

「淳はキス大好きだもんな……だけど、ここも……好きだろ?」

ベストの裏側に手を回し、小さな突起を探り当てると、
人差し指でやさしくこねる。

「やだ……そこ……あぁっ!!」

俺のアポロと合わさる淳のものが素直にぴくぴくと反応をする。
もうそろそろ限界な時に、ここを攻められると淳は弱い。

「そんなにちくび、いいのか?」
「っ毎日……いじわるばっかり……するから……」

風呂から上がった淳が、無防備にシャツの姿でいたりするからいけないんだ……
ほんのり赤に染まった肌を透けさせて、俺を誘うから……
ゆだんしている淳の体を抱きしめて、
シャツの上からつまんだりしているうちに、
すっかりここも淳の性感体の一つになっている。

淳のものからあふれでた白濁を塗り付け、
ベストを中心に向かって引っ張ってあらわにする。

「あっひどい……せっかくかわいいベスト……着てるのに……」
「さわってごらん、淳……ほら……こんなに、ぷっくりしてる」

淳の指が触れると、ひあっとかわいらしい声を上げて
ぶるっと震え、ふにふにと自分でさわるうちに
ガマンができなくなってきたみたいだ。
涙目になりながら、俺を見つめ、自分でさわり始める。

「はぁ……たつや……んっ……ぁっ……」
「エッチな淳……大好きだ……」

淳の顔がぽぉっと熱を持って、とろんとした表情に変わるころ、
乳首をピンっと指ではじく。

「あぁぁああっだめっ出ちゃうっ!!」

網タイツからはみでた先端から、勢いよく白濁が飛びだして、
赤いレオタードにおち、濃い色合いのシミを残す。
淳の体がぐったりとして荒い呼吸に胸を上下させ、
ゆるりとほほえみながら、自分で自分のものをいじりはじめた
淳を見てがまんができなくなってくる。
そのうっとりとした顔にむけてしごき、射精する。

「やだ……顔にっ……ひどいよぉ……あっ……」

淳の美しい黒髪が淫らに濡れる。

「ふぅっ……ぁっ……」

恍惚とした表情を浮かべて、自分の顔についた精液を、
指ですくってペロリとなめる。

「……ん……ひどいよぉ……」

うっとりして抵抗もできなくなったバニー淳をひっくりかえし、
お尻を突き上げさせる。かわいいしっぽがぷりぷり動く。
淳はまだ興奮さめやらぬ様子で自分のものをしごいている。
燕尾服状になったベストは、背中の部分がなくて、
白い肌がむき出しになっていた。

「なぁ、これ……このカマーベスト……」
「……あまいにおい……残ってるでしょ……」

赤く染まった肌、はずかしげに上下する背中。
汗が伝う肩胛骨に舌をはわせる。
……確かにちょっと……あまいにおい……

「おいおい、まさか……このカマーベスト目当てで……」
「うわぁっ……あっ……そ、それもあるって言ったら……
 僕のこと……き、嫌いになっちゃう……?」
「……な、なるわけがない……」

お尻が揺れるたびにつられて揺れるかわいらしいウサギのしっぽ、
その下から伸びるスリットを開き、ファスナーが開かれて
露わになった、ひくつくアナルに、今にもノヴァサイザーを
撃ち込みたいと臨戦態勢のアポロをおしつけ、こすりあげる。
網タイツがちょっとイタ気持ちいい。

「ちょうだい……達哉の……プレゼント……ぼくのなかに……」
「もーう……くそぉ……このエロウサギめ……」

網タイツを破り、燕尾状になった裾を握りしめ、激しくつき込む。

「あはぁああっ!!……たつやぁっ!!!んあっ……たつやぁあっ!!」

腰を激しくつきこむと、淳の頭に着けた真っ赤なウサミミが揺れる。

「んっ……んっ……」

枕をつかんで口を覆って声を押し殺す淳。
押し込まれるたびに耐えようとする腕のせいで、
肩胛骨がもちあがり、陰影を濃くする。
背中が伝うその白い背中……。

「淳……」

でる寸前で引っこ抜き、むき出しの背中に出す。

「あぁあっ背中……あつぅ……」
「へっ……へへ……き、菌がうつったら……たい……へ……」

そして俺は、かわいいかわいいバニーちゃんの体に
倒れ込むようにして、気を失った。


   .*.;☆;.*.


目を覚ましたのは、淳の胸の中でだった。
黒のベストがずれて、かわいいピンク色の乳首がみえている。
思わず手が伸びると、パシンっとはたかれる。

「……やっと起きた?」
「……おはよう淳……」
「メリークリスマス」
「……メリークリスマス」

淳のおでこが俺のおでことあわせられる。

「……熱、下がってるね」

少し楽しそうにクスクス笑う。

「素肌と素肌が一番ぬくもるってホントだったのかな?」

淳の首筋に口づけて、そっと耳元にささやく。

「お店でさ、着てたときも、カマーベスト……似合ってたぞ……」
「い、言わないでよ……こ、こんな格好の時に……」

そうして、俺の頬にあたる淳の手に
冷たい感触を感じてブルっとふるえる。

「あのね、達哉、サンタさんって本当にいるのかな?」
「な、なんだよ……急に……」
「朝起きたらね?枕元に、かわいいフランボワーズケーキの上に……」

そう言って無い乳の……谷間だったらいいなぁの部分から
あの、チェーンがついた雪の結晶をかたどったカギをとりだす。

「このカギが乗ったケーキ、置いてあったんだけど……」

実は俺、淳が熟睡中に、尿意を覚えて一度目をさましたのだ。
トイレにいって、ふと冷静になったとき、
まだ俺の"二人のラブで、サンタさんも思わず衣装どころか
耳までまっかっか作戦~わし、もしかして来るおうち
間違えちゃった!?~"……は終わってないんじゃないか?

まだイブだ!!まだ、まだ間に合うっ!!!と思った俺は、
そっとフランボワーズケーキにレースプリントをした
ビニールにくるんだカギをトッピングし、
金の万年筆の入った箱を、そっとそのそばにおいてみたのだ。

「開けてみた……?」
「え?この箱……?達哉が起きてから……と思って……」
「そ、そっか……サ、サンタさん何をくれたのかな……?」

ベルベットの箱に手をふれて、そっとカギで開けると、
淳が涙をポロポロ流した。

「たっ達哉……こ、これ……」
「夢、いっしょに叶えるためにがんばろうな?」

バニーちゃんが俺の胸に飛び込んでくる。
その体をぎゅっと強く抱きしめる。
ここからの眺めは絶景だ。
むきだしになった白くてなだらかな背中、
つきだされた小さなお尻にはふわふわのしっぽ……。
俺のアポロが再びノヴァサイザーを叫びそうになったとき、
淳がそっと俺の体から離れると、
かわいらしくラッピングされたシフォン素材の袋を
サイドテーブルから持ち出した。

「でね、これは、君に、だと思うんだけど……」

かわいく上目づかいでこちらをうかがい、視線が合うと恥ずかしそうに逸らされた。

「ふふっ……俺は悪い子だからサンタさんがくるわけ……」

中から出てきたのは、ライダーグローブだった。
しかも皮革素材の……かなり……丈夫なやつ。

「……サンタさんがね、最近の達哉くんは自分の手が冷たくなるのも
 気にしないでバイクに乗って走り回っているからご褒美だよって」

そっと手にはめる。デザインは、なるべく
前に使っていたものに似せようと選んだのかもしれない。
付け心地は、やはり新品のものだ。

「僕、達哉ってきっと、こういう毎日使うものに関しては……
 その……すごくこだわりがあると思うし……」

グローブをはめてニギニギしている俺を不安そうに淳がみている。

「その時自分にとって一番いいものを選んで、
 少しずつ自分だけのものに染めていく課程が
 スキなんじゃないかなって思ったんだ」

かわいいウサちゃんがほほえみながら、グローブ越しに手を握る。

「だ、だから、前のグローブを実際に手にはめてみたりして、
 君がどんなもの好きなのか……
 ぼ、僕なりに考えて探してみたんだけど……」

少し泣き出しそうな顔をする。

「あ、あの……こ、こういうのってやっぱり、
 君自身が選んだもののほうがよかったよね?
 ぼ、僕が選んだものだけど……気に入ってもらえたかな?」

あぁ、淳は本当にかわいいなぁ。
きっと、何かをプレゼントしたいと思ったとき、最近俺の手が冷たいことを思い出して、
そっとグローブをはめてみていたに違いない。
そしたら、丈夫なはずのグローブの指先が、劣化で破れているのに気づいたんだ……。
できればその後、「こ、これが達哉がいつもはめてるグローブなの?」
とかってどきどきしながらこう下半身に……っていう展開が
おまけについてきたら俺、大興奮しちゃうけど、
たぶんそんなこと言ったら首絞められるよね?

しょうがないなぁ……っとため息をつく。

「あのな、俺が淳からプレゼントされて喜ばないと思ってんのかよ」

目を潤ませながら、だんだんと淳の表情がぱぁっと明るくなる。

「じゃ、じゃあはめてくれる?ちゃんと、そのグローブ!」
「う、うん……淳が……その……しっかり選んでくれたんだろ?」

何回も俺のグローブはめて、感触を覚えようとしたんだろう。
なれない雰囲気のバイク屋に、胸をドキドキさせながら、
顔を出したりもしたんだろう。
ケーキ屋さんでのバイトだって、カマーベストほしさにって
ごまかしてたけど……きっと、本当は……。

「ち、違う。サンタさんだから!サンタさんが選んでくれたんだから」

淳はあわてて手を振った。

「ははっ!そっか。サンタさんか……」

淳の目を見つめて、お礼を言う。

「ありがとう、サンタさん。これで俺の手、冷えずにすむな」
「う、うん……いつまでも……じゅ、淳をあたためてあげられる
 ポカポカの体でいなきゃだめだぞって……サンタさんが……」
「うん。サンタさんがな?」

メリークリスマス。

 ア ン ド  第 二 ラ ウ ン ド 。

「ちょっと達哉……どこ……さわって……」
「いやぁ……このケーキのトッピングのイチゴを……」

「あっ……やぁあっ……!!」

END

コメントの投稿

非公開コメント

sidetitleプロフィールsidetitle

大幸妄太郎

Author:大幸妄太郎
ペル2(達淳)・ドリフターズ(とよいち)に
メロメロ多幸症の妄太郎です。女装・SMが好き。
ハッピーエンド主義者。
サークル名:ニューロフォリア
通販ページ:http://www.chalema.com/book/newrophoria/
メール:mohtaro_2ew6phoria★hotmail.co.jp
(★を@にかえてください!)

sidetitle最新記事sidetitle
sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleリンクsidetitle
sidetitleQRコードsidetitle
QR